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  • 2020/05/13 掲載

オンライン飲み会のビールに「輸入」で「PB」の「第3のビール」が注目される理由

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初夏。ビールがおいしくなる季節だが、今年は経済、社会を混乱させる感染症大流行で迎える「コロナの夏」になりそうだ。そんな中、1缶80円台の生活防衛価格で販売実績を伸ばしそうなのが、流通業のPB(プライベートブランド)商品でベトナム、韓国、タイ、ベルギーなどで生産される「輸入×PB×第3のビール」だ。なぜ注目を集めるのか、その見通しを読み解いてみよう。
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コロナ不況の夏に選ばれるビールは?
(Photo/Getty Images)

不況と増税に振り回された「平成のビール系飲料戦国史」

 5月、気温が上がってビールがおいしくなる季節。というのは昭和のあいさつで、平成の時代に登場した「発泡酒」も「第3のビール」も初夏、ビール同様においしくなる。

 発泡酒が本格的に登場したのは、平成バブル景気がはじけた後の1995年度(平成7年度)だった。その前年度、国税局が調査するビールの課税出荷数量は、史上最高の708.6万キロリットルを記録した。だがその後は長期低落傾向をたどり、2018年度(平成30年度)は244.8万キロリットルでおよそ3分の1に縮小した。

 しかし、バブル崩壊、金融危機と続いた不況の時代にビールのシェアを侵食した発泡酒も、2002年度(平成14年度)の260.0万キロリットルをピークに、その後はじり貧の一途だった。2018年度(平成30年度)は64.0万キロリットルで、ピークのおよそ4分の1になってしまった。

 発泡酒にとって代わったのが「第3のビール(新ジャンル)」だった。平成デフレ不況、就職氷河期真っただ中の2004年度(平成16年度)に登場すると出荷数量を急拡大させた。それ単独では国税局の統計区分になく、「リキュール(発泡性)」と「その他の醸造酒等(発泡性)」に分かれている。

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平成のビール系飲料戦国史
 これが弱肉強食の「平成のビール系飲料戦国史」の概略だが、時代の針を進めたのは不景気だけでなく、政府の酒税法改正もあった。

 1994年(平成6年)5月のビールへの増税が発泡酒の登場を促し、2003年(平成15年)5月の発泡酒への増税が第3のビールの登場を促した。その第3のビールも2006年(平成18年)5月には増税のターゲットになり、時間差を伴って勢いが衰えていった。

 長引くデフレ不況と、逃げ場をふさぐような相次ぐ増税。その結果としてビール系飲料(ビール、発泡酒、第3のビール合計)は1994年度(平成6年度)から2017年度(平成29年度)までの23年間で、その市場規模が約3割減少した。平成のビール系飲料戦国史の実態は、景気動向と増税に振り回される過酷な消耗戦だった。

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第3が第1を抜く? ビール大手5社の出荷量

 直近のデータも低落傾向に変わりはない。比較的景気が良かったアベノミクスの時代でも高齢化や消費増税の影響を受けた。キリン、アサヒ、サッポロ、サントリーに沖縄のオリオンを加えたビール大手5社のビール類飲料出荷量(ケース単位)のデータを見ても、ビールは2015年に少し持ち直しただけで2010~2018年の間で15.8%減。発泡酒はさらに悪く、35.7%減だった。

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ビール大手5社のビール類飲料出荷量

 その中にあって2013年に出荷のピークだった第3のビールは0.5%減で、比較的安定している。2018年の出荷量はビールに対し77.2%とその差を縮め、第3が第1を逆転するシナリオも視野に入ってきた。

 日本列島が新型コロナウイルス上陸に揺れた2020年3月、ビール大手4社が発表した全国のビール系飲料の販売量は全体で前年同月比13%減だった。

 歓送迎会シーズンの営業自粛で飲食店向け業務用需要が大打撃を受けたビールは27%減、発泡酒は3%減だったが、缶チューハイなどとともに消費者のまとめ買いが起きた第3のビールはほぼ横ばいにとどまった。その傾向は緊急事態宣言が出た4月も5月も続きそうだ。

ビール系飲料「第4勢力」は「輸入×PB×第3のビール」

 平成でビール系飲料の戦国乱世の針を進めたのは「不況と増税」だったが、令和もそれは続く。

 酒類は、酒税込みの価格に消費税がかかり、たばこやガソリンと同様に「二重課税」される。2019年(令和元年)10月の消費増税では軽減税率の対象から外れ、消費税率は2014年3月以前の5%の2倍の「10%」となった。そして2020年(令和2年)の年が明けると、新型コロナウイルスの流行で日本経済は大きな打撃を受け、リーマンショック以来の不況がやってきた。

 今後、消費者の節約志向の高まりを受け、平成生まれの第3のビールの出荷量が、明治生まれで昭和の高度成長期に酒類のチャンピオンの座についたビールの出荷量を追い越しても、まったくおかしくはない。それはまさに令和のニューパラダイムだ。

 時代を変えるイノベーション(変革)は多くの場合、中心や主流ではなくマージナル(周縁)やアウトサイダー(部外者)から始まる。ビール系飲料におけるそのようなイノベーションの好例が「黄金(こがね)」という第3のビール(リキュール)だろう。

 これはビール大手の商品ではなく流通業のPB(プライベートブランド)で、しかも流通業でも主流とは言いがたい“周縁”のホームセンター、カインズが発売している。生産国は、世界のビール生産地図でマイナー扱いされてきたベトナムだ。

 「ホームセンターのPBでベトナム産の第3のビール」など、ビール大手の首脳から見れば完全にアウトサイダーだろう。それが店頭でもオンライン販売でも消費者に支持され、販売開始からの累計販売数は1億8000万本を突破。「黄金」シリーズはカインズの中でトップクラスのヒット商品になっている。

【次ページ】1本90円以下の「輸入×PB×第3のビール」どんなものがある?
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