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  • 2020/06/15 掲載

【調味料2.0】輸出好調「しょうゆ・みそ」、本当の世界進出はこれからだ

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メイド・イン・ジャパンの農産物、加工品の輸出といえば「和牛」や「日本酒」が取り上げられることが多い。しかし今、しょうゆ、みそに代表される日本の調味料も、世界の食の市場で堅調な伸びを見せている。輸出先も、アジア系の市民が多い米国、食文化が日本と近い中国、韓国、そしてヨーロッパと世界中に広がっている。だが今、新型コロナウイルスが輸出にマイナスの影響を及ぼしているのも事実だ。「日本の調味料」の枠から出ようとしている「しょうゆ・みそ」の新たな時代を、最新のデータをもとに解説しよう。
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ニッポンの調味料は新たなフェーズに入った
(Photo/Getty Images)

輸出好調な「しょうゆ」「みそ」「ソース混合調味料」

 「農林水産物・食品輸出1兆円突破」を目指す農林水産省は、毎年4月、財務省の「貿易統計」をもとに前年(暦年)の「農林水産物・食品の輸出実績」を公表している。国内ではあまり知られていないが、農産物の中で加工食品に分類される調味料は、近年、数量ベースでも金額ベースでも海外への輸出を順調に伸ばしている。輸出額は6年前と比べると1.6~1.8倍で、ほぼ右肩上がりだ。

 その代表選手はしょうゆ(ソイソース)で、財務省の「貿易統計」によると71カ国に輸出されている。2019年の輸出は、金額ベースが76.8億円で前年の77.3億円からわずかに減少したが、数量ベースでは4.5%伸びている。2013年の42.7億円と比べれば、輸出額は6年で約1.8倍になった。生産量1位は、産地の野田市、銚子市がある千葉県。2011年は東日本大震災で生産ストップが相次ぎ、輸出数量は2万トンを切ったが、7年後の2018年には4万トンを超え、倍増を遂げている。

 しょうゆの輸出先は、13.5億円(17.6%)の米国がトップで、中国、オーストラリア、英国、韓国と続く。6位はフランス、8位はドイツ、9位はオランダで、輸出に占める欧州連合28カ国(英国含む)のシェアは28.4%と、けっこうな割合を占める。

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しょうゆの輸出実績の推移

 みその2019年の輸出額は38.2億円で、前年比8.5%増。2013年の24.3億円と比べると輸出額は6年で約1.6倍になっている。数量ベースでは18434トンで、2172トンだった1988年と比べると約8.5倍になった。

 輸出先は米国が9.5億円(24.9%)でトップ。次いで中国、台湾、韓国、タイと、豊かな発酵食文化があるアジア諸国が上位に並ぶ。特に中国、タイの伸びが18%台と大きい。みその欧州連合向けのシェアは22.6%で、しょうゆと比べると小さくなる。みその生産量第1位は長野県、第2位は愛知県なので、名古屋港での輸出取扱量が約3割を占める。

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みその輸出実績の推移

 農林水産省の分類の「ソース混合調味料」は、金額ベースではカレールーなど「カレー調製品」が最も多く、マヨネーズ、ドレッシング、ウスターソースなども輸出額が多い。今や「コーベビーフ」が国際語になり、「テリヤキ」が「スキヤキ」並みの世界の人気食になったのを反映して、焼肉のたれやテリヤキソースも伸びている。2019年の輸出額は336.6億円で、輸出額も数量も前年比プラス。2013年の213.8億円と比べると、輸出額は6年で約1.6倍になった。

 輸出先は米国が69.6億円(20.7%)でトップを占め、台湾、韓国、香港、オーストラリアと続く。アジア、オセアニアが中心で欧州連合向けは10.6%とシェア的には小さいが、前年比伸び率は13.2%と2ケタ増を記録している。

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ソース混合調味料の輸出実績の推移

 2019年のしょうゆ、みそ、ソース混合調味料を合わせた輸出額は451億円で、農林水産物・食品の輸出総額9,121億円の4.9%にすぎないが、安定的に輸出を伸ばす「優等生」として農林水産省も期待をかけている。


政府の調味料「輸出強化」戦略

 2016年5月、政府の「農林水産業・地域の活力創造本部・農林水産業の輸出力強化ワーキンググループ」は、「農林水産業の輸出力強化戦略」をとりまとめた。「輸出額1兆円」という政府目標がこのとき戦略に盛り込まれ、後に達成目標年度が2020年から2019年に前倒しされたが、未達だった。

 農林水産物・食品の各品目別に「輸出力強化に向けた対応方向」が詳しく述べられているが、「加工食品」については「日本らしさを徹底利用した需要の深掘り、拡大の支援」を基本に、今後の戦略の取り組みが提示されている。そして、みそ・しょうゆとソース混合調味料は、重点的に輸出拡大を図る「重点品目」とされた。

 みそ・しょうゆは「日本食レストラン等の業務用需要の強みを発揮するため、原料や味などが地域によって異なる多彩な商品特性を生かし、日本食・食文化の普及と一体となったプロモーションを強化」、ソース混合調味料は「日本食の調味料としての需要に加えて、現地のニーズを踏まえた新規需要の開拓を支援。日本らしい調味料のレストラン・スーパー等での利用が、他の日本食材の活用につながるポテンシャルも重視」というのが、輸出拡大戦略のポイントである。

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ハローキティ卵かけごはんしょうゆ
©1976, 2017 SANRIO CO., LTD. APPROVAL NO. S582165
(出典:ヤマモリ報道発表資料)
 レポートでは、ミツカン(本社:愛知県半田市)の「金のごまだれ」のごま味フレーバーや、ヤマモリ(本社:三重県桑名市)のしょうゆ、だしじょうゆの「ハローキティ」「ふなっしー」のキャラクターボトルが、海外で人気を得て輸出拡大につながった好例と紹介されている。

 日本貿易振興機構(ジェトロ)が英国ロンドンで実施した日本産農林水産物・食品の試験販売・アンケート調査では、「わさびごま味ドレッシング」が「サラダに合う」と「唐辛子みそ」や「ぽん酢」を差し置いて一番人気になったというから、海外でどんな味が受けるのか、やってみないと分からない一面もある。

 それだけに、全国的知名度が低い地方のメーカーでも、資本力で大手に見劣りするメーカーでも、海外ではアイデアと創意工夫次第で成功を収めるチャンスが平等にある、といえそうだ。

【次ページ】海外進出成功する老舗の工夫
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