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- 2019/01/08 掲載
40年ぶりに起きた“おにぎり”イノベーションにみる逆説 「コト」から「モノ」へ?
SNSにおける“おにぎり”のバリュー観測
“ヒットの舞台裏”を支える、企業におけるイベントマーケティング担当者を主な来場者ターゲットとしたビジネスカンファレンス「BACKSTAGE」は、デジタルチケッティングサービスを展開するイベントレジストが主催し、今年が3回目の開催となる。東京 虎ノ門ヒルズフォーラムで行われた同イベントでは、NECが提供する“顔認証”サービスを用いた「KAOPAS(カオパス)」による入場チェックカウンターの設置など、イベントというアナログな現場×テクノロジーの最新事例をはじめ、今回は特にイベント開催のキモでもある「コンテンツ」に関するトピックスも数多く紹介された。
興味深いカンファレンスタイトルの並ぶ中、どんな内容になるのか異色の存在感を放っていた「価値0%からはじまる おにぎりの逆襲」というテーマで登壇したのは、TAMARIBA代表取締役の牧野 晃典氏とTokyo Onigiri Labo代表の関 克紀氏だ。
TAMARIBAは、2014年10月にMTV JAPANの広告営業本部がスピンアウトする形で立ち上がったエンタテインメントと企業やサービスを結びつけ、新たなユーザーとの接点をプロデュースする集団だ。
関氏は、食品メーカーを経て食雑誌の広告営業、事業構築、アライアンスを手がける中、東日本大震災を機に日本の米を盛り上げたいと一念発起し、2014年一般社団法人おにぎり協会を立ち上げ、2015年ミラノ万博日本館ステージに出演。2017年Tokyo Onigiri Laboの代表となり、日本米の消費拡大と価値向上につとめている。
実は2018年は「コンビニおにぎり」の登場から40年を数える。しかし、そこから大きなイノベーションが起きていないと関氏は指摘。進化の止まっていた「おにぎり」に新たな革命が起きる。それをこのBACKSTAGE 2018で発表するという予告も事前に行われた。
「“おにぎり”を知らない方はいらっしゃいますか? 嫌いな方は?」と不意に場内の聴衆者へ問いかけた関氏。不意の質問に対し反応に困っているわけでもなく、およそ挙手は見当たらない。
「たとえば今日、ここにいらっしゃる方々の“おにぎり”認知度は100%です。そして、嫌いな人もいない。好感度がものすごく高いモノだ、ということが言えますよね」(関氏)
関氏は、この認知度と好感度の異様な高さにチャンスがあると着目。今まであまり考えたことがなかった「“おにぎり”に価値を見出すこと」の面白さに気が付いたという。そこで、おにぎりの価値って何なのかを考えるにあたり、SNSにおける“おにぎり”のワードバリューを計測してみた結果が紹介された。
「おにぎりというワードは価値があるのか。どれくらい、どんなときに、どんな人に、つぶやかれているのか。というシンプルな検索をかけてみました」(牧野氏)
その中でツイート数ではラーメンが断トツの1位で3200万ツイートを誇る。おにぎりは4位でラーメンの1/3ほどしかつぶやかれていない。ただ、リーチ数で比較するとおにぎりが堂々の1位で3600億となる。2位のラーメンとは1桁も違うほどの圧勝だ。これをどう見るか。
「このリーチ数の差を見て、“おにぎり”というワードはどれほどソーシャル上で行き交っているのかと思いきや、ハッシュタグで比較してみるとラーメンの勝ちなんですね。
皆さんおいしいラーメンを食べるとSNSに画像とか感想をあげたくなる。でも、おいしいおにぎりを食べてもハッシュタグを付けようという動機にはならないのが現状。ワードクラウドを見ても、同時にツイートされている単語は地味でネガティブで暗いイメージ。ラーメンは味に関する感想、明るい楽しい、おいしそうなイメージ。その差がハッキリしている」(牧野氏)
ツイッターユーザの属性や気質に偏りのあるところは大きいが、ひとまず1つの定点観察として、認知度100%で好感度もかなり高いはずの“おにぎり”が背負うSNSにおけるキャラクターイメージが、仮説として立てられたことになる。
おにぎりは約40年もイノベーションが起こっていない
改めておにぎりの歴史も紹介された。1987年、能登半島で「世界初のおにぎり」ではないかと推測される化石が見つかった。遡ると紀元前1世紀の弥生時代、日本で稲作が始まったと同時におにぎりは自然発生的に誕生していたことになる。まずこれが「おにぎり1.0」だとする。時を経て鎌倉時代や江戸時代に入ると、おにぎりは具材と海苔が組み合わされたものへと進化している。これが「おにぎり2.0」である。ただ、そこから次のイノベーションが起きるまでは長い時間がかかった。
1978年(昭和53年)、セブン-イレブンが、海苔とおにぎり本体をセパレートに保存できるパッケージを開発。食べるときにも手を汚さず、フィルムをはがすだけでパリッとした海苔の状態が保持できる「コンビニおにぎり」が誕生した。いまや年間70億食を売り上げる「おにぎり3.0」として今では当たり前のものになっている。
しかし、その後は手を変え品を変えさまざまな種類のおにぎりが登場し、インスタグラムでは「おにぎらず」という“もうそれは、おにぎりじゃない”となるほどのアレンジも爆発的にヒットした。属性ごとにトレンド細分化が進むのも、日本人らしいガラパゴスなこじらせ方だが、明らかに「おにぎり4.0」だ、というべきイノベーションは、実は起きていないのだ。
「あれから40年。おにぎりはその成長を止めてしまったかに見えたんですけれど、実は今日、僕はここで世界初となる“ある発明”を発表したいと思っています。今日ここにいらっしゃるみなさんも、同じくらいの世代の方が多いと思いますが、我々は“コンビニおにぎり第一世代”として、再びおにぎりを盛り上げていきたいと考えているんです」(関氏)
【次ページ】「モノからコト」ではなく、「コトからモノ」へ誘導
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