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- 2018/05/10 掲載
外国人観光客から「取り残された」神戸、空港民営化でどう変わるのか
年間300万人利用も規制で発着に制限
神戸市の中心部三宮から神戸新交通のポートライナーで20分足らず、ポートアイランド沖を埋め立てた空港島に神戸空港がある。広さは約270ヘクタール。2,500メートルの滑走路1本とターミナルビルを備え、2006年に開港した。スカイマークが拠点空港としているほか、全日空(ANA)などが乗り入れ、東京羽田、千歳、福岡、鹿児島、那覇など国内7路線を運航している。年間の乗降客は2016年度で272万人、2017年度で307万人。兵庫県内の利用者が多いが、空港の駐車場には大阪、岡山、徳島など兵庫県以外のナンバーも並ぶ。
2016年度の乗降客数は全国15位、地方管理空港としてはトップ。約2,200億円の土地造成費のうち、借金で賄った約1,980億円を返済するため、赤字空港とされてきたが、借金返済を除けば経営に大きな問題はない。関西エアポート神戸も2018年度313万人、2022年度327万人の年間旅客目標を掲げ、2022年度までに39億円の投資を計画している。
だが、24時間運用が可能な海上空港としての潜在能力を十分に発揮しているとはいえない。運航便は国内線だけで、運行時間は午前7時から午後10時までに制限され、1日当たりの発着回数も上限60回と決められている。2005年の関西3空港懇談会で決まった3空港の役割分担で神戸空港に制約がかけられたからだ。
3空港懇談会は地元経済界と自治体で構成する会議で、関西経済連合会会長と大阪府、兵庫県の両知事、大阪、神戸の両市長がメンバーとなる。役割分担では、関西空港が西日本の国際拠点空港と位置づけられ、関西発着の国際線が集約されることになった。伊丹空港は関西の国内線拠点空港、神戸空港は神戸市と周辺の需要に対応する地方空港とされている。
関西3空港の役割分担(2005年11月関西3空港懇談会合意) | |||
関西空港 | 伊丹空港 | 神戸空港 | |
基本的な役割分担 | 西日本を中心とする国際拠点空港で、関西圏の国内線の基幹空港。国際線が就航する空港については、今後とも関空に限定することが適当。 | 関西圏の国内線の基幹空港。環境と調和した都市型空港とする。 | 神戸市およびその周辺の国内航空需要に対応した地方空港。 |
運用時間 | 24時間 | 14時間 (7:00~21:00) | 15時間 (7:00~22:00) |
発着回数の制限 | なし | 1日上限370回 (うちジェット枠200) | 1日上限60回 (年2万回を上限) |
(出典:関西経済連合会資料から筆者作成
) |
関西3空港で「役割分担」が生まれた背景
伊丹空港を廃止して新空港を整備する最有力候補に浮上したのは神戸沖だったが、神戸市の反対もあり、現在の泉州沖で整備された。しかし、整備費の高騰から1兆円を超す負債を抱え、関西空港の財政は火の車に陥る。
そんな中、廃止されるはずの伊丹空港が存続することになる一方、神戸市は阪神大震災からの復興事業の目玉として神戸空港建設に踏み切った。その結果、神戸空港を中心とした半径25キロ圏内に3空港が共存する格好となる。
会議は関西空港の経営を圧迫しないことが優先して役割分担が決められた。神戸沖の新空港をいったん拒否しながら、方針を転換して神戸空港整備に踏み切った神戸市に対する大阪側の複雑な感情も影響したとみられる。
【次ページ】大阪や京都は空前の観光客ラッシュも、神戸はそれほど盛り上がらず
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