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  • 2018/03/06 掲載

離職率3割の「ブラックなラッピング屋さん」が新卒エントリー2000人を実現した方法

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大阪でケーキ店やフラワーショップなどに向け包装資材を販売するヘッズ 社長 暮松邦一氏は、「5年くらい前までは洋菓子業界も右肩上がりでしたが、最近は閉店・廃業が目につくようになってきました。業界全体でも人手不足は否めず、採用しても一年以内に辞めてしまうと嘆く声が多数寄せられています」と話す。洋菓子におしゃれなイメージを抱いて業界に入る若者も多く、15キロもする小麦袋を担ぐような重労働や早朝からの長時間労働とのギャップで辞めていく若者もいるという。洋菓子業界の人材不足に効果的な対策はあるのだろうか。
執筆:中森 勇人

「売り上げ至上主義」をやめると売上が上がる?

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ヘッズ 社長
暮松邦一氏
 洋菓子業界の人材不足に効果的な対策はあるのだろうか。結論からいうと、ある。

 暮松氏は、小規模のケーキ店やフラワーショップ向けにコンサルティングサービスを提供している。このやりとりの中で、対策は見えてきた。

 暮松氏は経営コンサルタントの佐藤元相(もとし)氏と顧問契約を結び、小売店向けにセミナーなどを開催。さらに「小さなお店 繁盛店の法則」と題した無料レポートを会員向けに配信している。

 あるとき、そのレポートで、「お客さまの幸せを創造する」といった経営理念を作り、朝礼などで従業員とともに唱和すると良い、というアドバイスを掲載した。

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小さなお店 繁盛店の法則
 すると、ケーキ店を営む会員から、アドバイスを元にスタッフの意識改革を行って成果が出た、と報告を受けたという。

 その店では、売り上げ至上主義を経営理念としていたところを、「顧客満足主義」という経営理念に変更した。この結果、スタッフが自分でアクションを起こすようになり、モチベーションがアップしたという。

 実は経営理念の共有は従業員に対してだけでなく、経営者自身にも及ぶ。

 そのケーキ店では、売り上げに結びつかないから顧客との会話は時間の無駄、と考え、会話は最低限に留めるよう通達していた。顧客から「お勧めは」と聞かれても店主が決めたケーキを判で押したように勧めていたのだという。

 売り上げ至上主義から顧客満足主義とへの方針転換が行われた職場では、スタッフが率先して顧客と会話をし、自分の勧めたいケーキを紹介する。パティシエも顧客が喜ぶケーキを作ろうと試行錯誤繰り返す。これが売り上げにつながり、従業員のモチベーションアップにもつながった。

 結果として従業員に働くことの目的が芽生え、定着率も上がり、繁盛店になったのだという。

 小規模の店舗で経営理念や社是、社訓を作り、これを共有しているところはまだまだ少ない。ここは経営者自身が一念発起し、チャレンジしてみる。それだけの価値はあると暮松氏は強調する。

離職率ほぼゼロ、新卒採用のエントリー2,000人を達成した方法

連載一覧
 経営理念や社是による経営者と従業員の意識改革が定着率を上げ、ひいては売り上げをのばす原動力になる。このことはヘッズ自身も体験をしてきたことだという。

 今から8年ほど前まではヘッズの離職率は3割を超え、毎月のように歓迎会をしていた。暮松社長は「当時のヘッズはブラック企業だった」と振り返る。

 それが今では従業員70名、離職率はほぼゼロ。新卒採用のエントリーは2,000人に上るのだという。

 ヘッズを変貌させたのはユニークな社是「幸せ制作会社」と経営理念「多くの幸せを創りだすことにより社員がしあわせになり、支持され、成長する会社になる」の2つだ。

 そして、顧客の幸せはもちろんのこと、社員が幸せに働ける環境づくりにも余念がない。暮松氏は「食が人の心をつなぎとめる」を理念として掲げ、それを実践すべく、無印カフェをモデルにして社員食堂の充実を図った。

 管理栄養士の監修のもと、30種類の食材を使ったメニューを中心にしたブッフェ。オリジナルドレッシングのサラダやカレーのレシピは100種類が用意されている。これにフレッシュジュースとスープが付いて400円と格安。市場なら1,000円を超える内容だが、社員の健康のためにと3年前から採用をしている。

 他にも30坪のシエスタルーム(昼寝ができるスペース)を完備。女性社員向けにパウダールームも設けた。

 社員への誕生日プレゼントも欠かさない。メッセージ入りの誕生日カードとプレゼントを8年前から実施している。これはプレゼントラッピングを手掛ける会社の社員として、「もらったときの喜び」を理解してもらうツールの役割も担っている。

 「社員自身が幸せじゃないと、お客さまにも幸せになっていただけませんから」と語る暮松社長。

 朝礼の際には社是と経営理念の唱和はもとより、社員3人によるスピーチを取り入れている。

 たとえば、「通勤途中に風で倒れている自転車を一生懸命に起こしている人を見かけました。それは同僚でした」とちょっとほっこりするストーリーを披露する。これにより一体感を高めるというのだ。

【次ページ】「幸せ制作会社」の企画術
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