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- 2018/02/06 掲載
横浜市に聞くオープンイノベーション施策とその成果、見えてきた成功の条件とは?
新連載:「オープンイノベーション」の実際
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もともとあった「オープンイノベーション」
推進本部では「データマネジメントプロジェクト」と「先進的公民連携プロジェクト」の2つに取り組んでいる。
前者で行うのは、法の理念を実現するための、条例に基づいた横浜市官民データ活用推進計画の策定であり、今後、データを重視した政策の推進に向けた人材育成、さらなるオープンデータ化などを進める。
後者では、先進的な公民連携案件を推進しており、AIやIoTなどの最新技術を活用した案件も含まれる。大型の案件は、部署間の調整が必要なため、推進本部が入ることでスピードアップを狙う。
こうした取り組みをCIOである副市長をトップとした横断的な推進体制により行っている点も横浜市の特徴だ。オープンイノベーション推進本部長でもある渡辺 巧教 副市長は、オープンイノベーションの取り組みについてこう語る。
渡辺副市長は経済や総務、財政分野を経験し、地域経済活性化や企業誘致にも明るい。CIO補佐監も民間のシンクタンク出身者だ。
政策局政策課 データ活用推進等担当課長の宮崎氏は、現在の体制について次のように説明する。「もともと横浜市では市民や企業と連携しながら課題解決を進めていくオープンイノベーションの取り組みが盛んです。データ活用も、民間主体で進めていただいた部分が多い。官民データ活用推進基本法では、公民連携の要素はあまりないのですが、横浜市のデータ活用では、AI、IoTなど先端技術を活用した公民連携を重要な要素として加え、両方の顔を持つ、横浜市独自の体制にしました」(宮崎氏)
データ活用、特にオープンデータを活用したこれまでの取り組みには民間主体のものもある。「横浜オープンデータソリューション発展委員会」が中心となり、アイデアソンやハッカソンでオープンデータの活用などを議論する動きや、オープンデータの活用により地域課題を可視化し、市民参加型で解決していくプラットフォーム、「LOCAL GOOD YOKOHAMA」などである。
「横浜市では、2014年にオープンデータの指針を作りました。市が保有するデータは、市民の皆さんと共有し活用できる重要な資産であることを、早い段階から積極的に宣言したわけです。行政側の動きに合わせ、民間の皆さんに上手く連携していただきました」(宮崎氏)
民間企業と連携しやすかった背景に、横浜市には1980年代以前から都市問題や地域課題の解決を目指す市民主体の動きがあり、地域コミュニティや中間支援組織が育っていたことがある。地域課題の解決に向けた市民主体の動きの一つとして、データを活用する案件が近年登場してきたということだ。
なぜ公民連携の取り組みに10年前から着手できたのか
オープンイノベーション推進本部では大型案件や先端技術に関わる案件を中心に扱うが、横浜市にはそれ以外にも「共創フロント」と「I・TOP」など企業と連携する仕組みがある。共創フロントは、民間と横浜市の橋渡し役として、企業やNPO、大学、自治会町内会、市民活動団体などの民間との連携に取り組んでおり、I・TOPは横浜市の「ものづくり・IT産業の集積」を生かし、IoTなどを活用したビジネス創出に向けた取り組みをしている。今回は、幅広い分野での公民連携の流れを伺うため、共創フロントにも話を聞いた。
「当時の中田宏市長の政策は、『非成長・拡大の時代』をテーマとしたものでした。税収が上がらないなか、行政だけで広い意味での公共を支えるのは無理だろうということで、民間とwin-winの関係を作り、民間の利益につながってもいいから、その結果が社会のためになることに取り組もうと、民間と連携するための組織として作ったのです。民間との共創は、現在の林文子市長も重要視しており、市のマスタープランである『中期4か年計画2014~2017』でも基本の考え方となっています」(梅澤氏)
共創推進室では、ワンストップ化した民間への窓口である共創フロント以外にも、発信の場としての「共創オープンフォーラム」やソリューション志向で少人数での対話を行う「共創ラボ・リビングラボ」なども手がけている。
「『民間の人と一緒にやっていきましょう』という素地は、この10年で醸成されたと思います。役所のマインドが醸成されていないと、民間の方のご提案を受け止められませんし、民間の方にも触手を伸ばそうという気持ちがないと、手を握れません」(梅澤氏)
【次ページ】オープンイノベーションを成功に導く条件
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