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- 2017/09/01 掲載
総務省 谷脇康彦氏が語る、情報銀行やブロックチェーンへの取り組み
総務省が発表した「IoT総合戦略」のポイントは「System of Systems」
一口にデータと言っても、さまざまなものが存在している。一般社団法人 日本インターネットプロバイダー協会 クラウド部会主催の「JAIPA Cloud Conference2017」に登壇した谷脇氏は「オープンデータ」「知のデジタル化」「M2M」「パーソナルデータ」という枠組みでデータを分類した。「最近はオープンデータの流れも加速している。知のデジタル化には、高齢農家の暗黙知を形式知に変える取り組み事例が出てきた。社会インフラ管理にも知恵がいる。橋の老朽化をトンカチで叩いた音で判断しているが、これも知のデジタル化で解決できる。機械から機械へのM2Mも必要だ。個人情報保護法法改正法も本格的に始まり、匿名情報の個人データ活用も検討されている。多様なデータセットの関係性を知るためにAIも重要になってきた」(谷脇氏)
これらのデータを活用する際は、専門領域のみならず、多くの領域を横断した相互のコラボレーションが求められる。オープンイノベーションやデザイン思考のアプローチが社会課題を解決するカギになっている。
デジタル化が進む中で、「モノのサービス化」も著しい。デジタルテレビなどのハードウェアの寿命が短くなり、製品価値がすぐに陳腐化しやすくなった。いまやモノづくりだけでは投資資金の回収は難しく、このギャップを埋める新しい施策が求められている。
「たとえば機器を販売したあとで得られるデータを使い、パーソナライズ化されたサービスを提供するといったことだ。顧客とサプライヤーとのリレーションを取り、新しい価値を継続的に生み出さねばならない。その際はデータを利活用したモノづくりとサービスの一体化がポイントとなる。デザイン思考で多くの知恵を集めたビジネスモデルが必要になる」(谷脇氏)
総務省では今年1月に「IoT総合戦略」を発表し、この戦略をデバイス、ネットワーク、プラットフォーム、サービスというレイヤーに分けて進めていく方針を固めた。
「最近、IT化とIoT化を混同する例が散見される。個別領域の情報化がIT化で、領域を超えてデータを各レイヤーで連携させ、付加価値をつくるのがIoT化だ。つまり個別システムを横につなぐ“System of Systems(SoS)”として捉えることが重要。IoT総合戦略で各レイヤーの課題を整理している」(谷脇氏)
今年度からスタートしたデータ活用型スマートシティとは何か?
次に谷脇氏はIT投資のモチベーションについて解説した。日米のIT投資には明確な違いがある。一言でいえば米国はITを使って自社製品を強化する“攻めの投資”だが、日本はコスト削減の“守りの投資”になっている。「こういったマインドを、これからのIoT社会に向けて変える必要があるだろう。経済成長とICTの関係を分析すると、現構造のまま2020年を迎えるとGDPは557兆円。しかし投資をICTに寄せると590兆円となり、実質GDPは約33億円の押し上げになる」(谷脇氏)
政府は、6月に「未来投資戦略2017」も発表している。これは「Society5.0」を踏まえつつ、地域経済の好循環システムや、海外の成長市場を取り込もうというものだ。
「未来投資戦略2017は、あくまで日本経済の一般的な成長戦略だが、内容的にIT戦略と思われるほどICTが含まれ、データ活用の重要性も強調されている。米国ではデータは“21世紀の石油”とも呼ばれている。デジタルエコノミーの血液もデータだ。データをいかに蓄積・収集し、解析することで利活用するか、それが成長戦略の大きなテーマになっている」(谷脇氏)
同氏は、前出の総務省のIoT総合戦略に戻り、各レイヤーにおけるデータ利活用の具体的な施策を説明した。まず最初に触れたのが「データ利活用型スマートシティ」だ。欧州ではデンマーク・コペンハーゲン市が人や自動車の流れを分析し、信号機の切り替えを変更したり、ゴミ回収を最適化したりと、都市経営の効率化に取り組んでいる。
「特に我々が注目している点は、彼らが“City Data Exchange”と呼ばれる都市ビッグデータ取引市場を創出しようとしていること。単にスマートシティから上がるデータを公共機関で使うだけでなく、取引市場をつくり、スマートシティのサステナビリティを上げようとしている」(谷脇氏)
一方、イギリス・ブリストル市の事例もある。ここではデータ活用のために、SDNやIoT、ビッグデータなどの技術を用いたスマートシティプラットフォームを構築したという。各種の都市データを一般中小企業のパートナーに開放し、彼らが都市ソリューションを開発・実証する試みを開始している。さらに、これらパートナーからの課金収入フレームワークも計画中だ。
「各国を参考に、総務省も今年度からデータ活用型スマートシティを4都市(札幌・横浜・加古川・高松)で始めた。これまで地域の情報化は、個別システムをスクラッチで開発していた。扱うデータは異なるが、蓄積・解析・利活用のプロセスに違いはない。そこで共通データを集め、クラウドでモジュール化した連携基盤をつくり、オープンソースで公開し、ベンチャーに活用してもらうモデルを検討中だ」(谷脇氏)
【次ページ】情報銀行への取り組みとブロックチェーンの活用にも注目
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