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  • 2017/09/28 掲載

サラヤと北九州市上下水道局に学ぶ「水と衛生」「インフラ」の「SDGs事例」

誰でもわかるSDGs解説

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2015年9月、国連で採択された『持続可能な開発のための2030アジェンダ(以下、2030アジェンダ)』の中核をなす行動目標であるSDGs。それを解説する本連載ですが、今回は日本の貢献度が高い「ゴール6(水と衛生)」「ゴール9(インフラ)」を取り上げます。水資源が豊富に存在し、かつ自然災害の多い日本では、この分野で世界をリードする技術や知見、人材を有しています。まず、2つの目標が持つ意味と日本の状況を俯瞰したあと、各目標に関連する日本の企業と自治体の具体的な取り組み事例をご紹介していきます。
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SDGsのゴール6「安全な水とトイレを世界中に」とゴール9「産業と技術革新の基盤をつくろう」


世界で3人に1人がトイレを利用できない現実

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 人の身体の約70%が水であるように、水はすべての生命の源です。

 それでも、人間が利用できる水は地球上の水の総量のわずか0.01%に過ぎません。

 水は地球という生命維持装置の根幹であるばかりでなく、食料や工業製品の生産への利用など、人間の経済社会活動を支えるうえでも不可欠なものです。

 17あるSDGsのゴールのうち、6番目(ゴール6)の目標は、「すべての人々の水と衛生の利用可能な管理を確保する」です。

 水と衛生は、SDGsの前身であるMDGs(Millennium Development Goals/2015年までの達成を目指して国際社会が掲げてきた目標)にも掲げられていました。

 開発途上国では、水の確保が子どもや女性の役務となり、教育機会や女性の社会進出機会の損失にもつながるなど、貧困、健康、不平等の解消など多岐にわたる問題に関連することから、各国と国際社会が必死に取り組んできた問題です。

 ゴール6のターゲットは、2030年を期限として、以下の3つに整理されています。

①人間の基本的ニーズを満たすもの:
安全で安価な飲料水のアクセス確保、下水・衛生施設の整備とアクセスの確保など

②水の利用に関するもの:
再生利用と水質改善、再生利用向上と水不足解消など

③資源の管理に関するもの:
森林・河川・湖沼などの生態系保全、途上国分野での水と衛生管理に関する国際協力など

 2015年のユニセフ(国連児童基金)とWHO(世界保健機関)の共同調査によれば、1990年代以降、26億人が安全な水にアクセスでき、いまや世界人口の91%が安全な飲料水を利用できるようになりました。

 しかし、いまだ世界で3人に1人(約24億人)がトイレを利用できず、そのうち約9億人は習慣的に屋外排泄をしていると報告しています。

 日本は水資源が大変豊かな国です。また、戦後の公害の克服や環境基準の設定、上下水道などの社会資本整備によって優れた水・衛生環境を保っています。同分野での国際貢献実績は、世界トップレベルです。

 加えて、過酷な水災害の経験から、防災・減災の技術やノウハウは、気候変動が原因と考えられる局所的な自然災害への適応など、災害リスクを減らすものとして積極的な貢献が見込まれています。

 一方では、食料生産の観点では、輸入に頼る農畜産物は生産過程で大量の水を消費しており、食料輸入を介して間接的に大量の水を世界から輸入していることになります(バーチャルウォーター)。

 このように、人間活動が続くかぎり、水と衛生は永遠に取り組むべき終わりのない問題です。

SDGs事例:東アフリカの公衆衛生の改善に貢献するサラヤ

 では、ゴール6における企業の取り組みを見てみましょう。

 業務用消毒剤で国内トップシェアを誇るサラヤは、1952年に創業し、家庭用・業務用の洗浄剤、消毒剤などの衛生製品の製造・販売を本業としています。サラヤの更家社長自らが取り組むのが、アフリカ・ウガンダ共和国での『SARAYA100万人の手洗いプロジェクト』です。

 ウガンダでは、乳幼児や妊産婦の死亡率が高く、その原因として院内感染や手洗い習慣不足が疑われていました。

 そこで、命を守るもっとも初歩的な方法である手洗いを促進する活動を支援することを目的に、対象とする自社衛生商品の売上1%(メーカー出荷額/年間1,000万円以上)をユニセフに寄付する活動を2010年に開始。商品と社会貢献活動を結びつけるコーズ・リレーテッド・マーケティング手法を取り入れ、消費者のエシカルマインドを上手に取り入れたものとして、現在も継続中です

 そして、社会貢献活動から本業へ、サラヤの取り組みは第2のフェーズに入りました。

 手洗いプロジェクトを契機に、医療従事者向けアルコール手指消毒剤の本格的な現地製造販売の可能性を模索。2011年には現地法人サラヤ・イーストアフリカを設立して、JICAとの市場調査の後に、2014年から現地での消毒剤の製造販売を開始しました。

 この『病院で手の消毒100%プロジェクト』は、現地生産された商品をもとに衛生環境の改善と乳幼児の死亡率を低減し、将来的には、ウガンダを起点に東アフリカ全体へのBOP市場拡大を目指すものです。



 10年にわたる成果は、毎年、進捗レポートや持続可能性レポートを発行してステークホルダーに説明開示され、消費者からの支持を得て、商品の売上増にも結び付いています。日経ソーシャルイニシアチブ大賞企業部門賞をはじめとする数々の社会的評価を受け、非上場企業の取り組みながら企業価値向上にも大きく貢献しています。

 ユニセフやJICAなど国際機関や現地関係機関とパートナーシップを組み、一歩一歩前へ進みながら現地の雇用創出や経済発展への貢献を図り、かつ社会課題の解決と利益を生み出すビジネスを両立させる取り組みとして、本業におけるSDGsの主流化を考えるうえで大変参考になる事例です。

【次ページ】北九州市上下水道局による「プノンペンの奇跡」
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