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賃貸住宅を強制退去させる家賃保証会社の契約条項について、最高裁判所が違法とする判断を下した。民法の趣旨からすると妥当な判断だが、この判決によって、貸し主は高齢者などリスクが高い借り主に対しては、ますます家を貸さなくなる可能性が高い。借り主にも貸し主にメリットをもたらさない現状を放置してきた行政の責任は重い。
日本の法律は圧倒的に入居者が強い
賃貸住宅を借りる際、一部の住宅については、家賃保証会社が間に入るケースがある。家賃保証会社は、入居者から毎月一定額の保証料を徴収する代わりに、入居者が家賃を払えなくなった際には、入居者に代わって貸し主に家賃を支払う。賃借契約を結ぶ際、保証人を立てることが一般的だが、保証人がいない場合や十分な要件を満たさない場合に使われることが多い。最近では当初から保証会社を入れることが条件となっているケースもある。
今回、問題となったのは保証会社が入居者と結ぶ契約である。
保証会社と入居者の契約には、入居者が一定期間家賃を滞納したり、連絡がつかなくなった場合、物件を明け渡したと見なし、家財道具などを搬出できるという条項が入ることがある。今回の裁判で原告側は、一連の条項は一方的に借り主に退去を迫るいわゆる「追い出し条項」であり、居住権を侵害していると主張していた。最高裁はこれを認め、条項の使用禁止と契約書の破棄を命じた。
日本の借地借家法は、入居者の権利が圧倒的に強く、貸し主が一方的に入居者を追い出すことができないようになっている。これは、戦争で出征した兵士の家族が路頭に迷わないよう、借り主の権利を著しく強くした国家総動員法の影響と言われる。このため、借り主が家賃を滞納したり、連絡がつかなくなると、貸し主は大きな損失を抱えることが多い。
このため貸し主は、入居者を厳しく吟味するようになり、保証人を付けないと家を貸さない、高齢者には家を貸さない、シングルマザーには家を貸さないという、異様な商慣習が出来上がってしまった。入居者を保護するために存在していた法律が逆に経済的弱者を苦しめることになったとも言える。
本来であれば、政府は時代に合わせて法律を改正し、正当な理由があれば退去を求めることができるようにするとともに、入居者の属性によって貸し主が賃貸を拒むことがないよう環境を整備する必要があった。2000年には定期借家契約の制度も導入されたが、新築の高額物件などへの適用が中心で、業界全体に広がっているわけではない。
近年、社会の高齢化や貧困化が進み、貸し主のリスクはますます大きくなっている。これをカバーする目的で急速に台頭してきたのが家賃保証会社である。
いかなる理由があっても脱法行為は許されない
冒頭でも述べたように、家賃保証会社は、入居者から保証料を徴収し、入居者が家賃を払えなくなった際、入居者に代わって貸し主に家賃を払うのが役割である。だが一部の家賃保証会社は、今回の裁判で争点となったいわゆる追い出し条項を活用し、家賃を滞納している入居者を追い出す業務を事実上、請け負っている。中には勝手に鍵を変えるといった乱暴な手法を使うところもある。
過去の経緯はともかく、法律で入居者保護を厳格に規定している以上、一連の追い出し条項を違法とした最高裁の判断は妥当といわざるを得ない。一方、今回の判決によって、借り主は家賃滞納リスクをより強く意識するようになり、社会的弱者が家を借りにくくなるという主張もまったくその通りである。
一連の問題は、時代に合わなくなった法律や商習慣を放置してきた政府に大きな責任がある。さらに言えば、商習慣の正常化を積極的に進めてこなかった賃貸業界にもやはり責任の一端があるだろう。
特に問題なのは、法律が存在しているにもかかわらず、一部の家賃保証会社が半ば脱法的な行為で法律を有名無実化した点だろう。いかなる理由があれ、このような行為を認めてしまえば、法というものが担保されなくなり、社会は無秩序化してしまう。
たとえば米国は、日本と比較すると圧倒的に貸し主の権利が強い国であり、家賃の滞納があった場合には、すぐに遅延損害金を請求したり、強制退去を通告できる(州によって内容に違いはあるが概ね同じと考えて良い)。裁判になっても、すぐに判決が下され、貸し主に非がない場合にはすぐに強制退去が決まる。
強制退去は行政の執行官が実施するので、粛々と行われ、大騒ぎになるケースはほとんどない。貸し主は非常識な入居者がいた場合でも、すぐに退去させることができるので、安心して家を貸せる。
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