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- 2022/10/07 掲載
8割は「賃貸」を選ぶ? 新築住宅購入者の激減で厳しい「住宅メーカー」の打開策とは
前編はこちら(この記事は後編です)
薄れる“新築信仰”、3人に1人は中古住宅を選ぶ日が来る理由
住宅市場を取り巻く環境は、極めて厳しいと言えるだろう。人口減少や「夫婦と子世帯」の減少などの需要面の課題に加えて、人手不足・ウッドショック・原材料高騰など、供給面でもいくつかの課題が顕在化してきたからだ。住宅市場の数少ない明るい材料の1つと言えるのが、リフォーム市場である。「リフォーム市場は追い風の中にある」と、野村総合研究所アーバンイノベーションコンサルティング部、シニアコンサルタントの大西直彌氏は語っている。
リフォーム市場が好調である要因の中でも特に大きいと考えられるのは、消費者の価値観の変化である。
上のグラフは住宅を買った消費者の中での既存住宅、つまり中古住宅を買った消費者の割合の推移だ。
「日本はもともと新築信仰が強いと言われている国でした。1994年の時点では13%、つまり8人に1人しか中古住宅を購入しない状況がありました。政府の施策の後押しもあり、直近20年間ではかなり上昇し、2018年には22%、5人に1人が中古住宅を購入する状況に変化しています。このトレンドが変わる要因は特に見当たらないため、この傾向が続き、2040年時点で33%、3人に1人が中古住宅を購入すると予測しています」(大西氏)
「33%」というとかなり大きな数字と感じるかもしれない。しかし、2018年の米国が81.0%、英国が85.9%であることから考えると、かなり低い数字と言える。
「米国や英国とのマーケットとしての特性の違いはありますが、それらを考慮しても日本で中古住宅を購入する消費者の割合が33%まで上がるのは、十分にありえる数字だと判断しています」(大西氏)
好調でも既存住宅市場は「魅力的ではない」理由
リフォーム市場を新規住宅購入者との割合でなく、既存住宅流通量で見ていくと、どうなるだろうか。下のグラフは、1990年から2018年までの既存住宅流通量の実際値と、2019年以降の予測値を表したものである。このグラフの示す数値について、大西氏はこう解説する。
「近年の既存住宅の流通量は15万~16万戸ぐらいで推移してきましたが、2040年には20万戸前後に増加すると予測しています。既存住宅を選択する人の割合が33%まで上がっていくことが予想されながら、比例して流通戸数がさほど増えないのは、そもそもの世帯数が減っている状況があるからです。中古住宅を選ぶ人の割合が増えても、マーケット全体としては縮小しているため、既存住宅市場はそれほど魅力的ではないと考えています」(大西氏)
つまり既存住宅市場が好調であったとしても、住宅市場のマイナス要因を打ち消すほどの大きな動きではないというのが大西氏の見立てだ。もう1つ、既存住宅と新設住宅と賃貸住宅の比率に関するデータを紹介しよう。
上のグラフは、移動世帯、つまり引っ越しをする人がどのような住宅を選んでいるかの割合の推移を表したものだ。実績値は国勢調査、総務省「人口推計」「住宅・土地統計調査」、野村総合研究所のアンケート調査によるもの、予測値は国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数将来推計」、野村総合研究所の推計によるものである。1995年から2018年までが実績値、2018年以降2030年までが予測値だ。
一番下の薄いブルーは新設住宅への移動、真ん中の濃いブルーは既存住宅への移動、上のグレー部分のその他はおおよそ賃貸住宅への移動である。賃貸住宅への移動は、1995年が76%であるのに対して、2020年は84%という数字が出ている。
「ここ25年ほどで、賃貸住宅の選択率が上がってきています。2020年以降は既存住宅への移動が増えていき、賃貸住宅の増加率を足止めする程度には作用していくと考えています」(大西氏)
【次ページ】縮小する住宅市場、住宅メーカーは転落していくだけか?
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