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- 2024/01/18 掲載
オフィス回帰でも空室だらけ……米国が4,500億円投じる“批判多数”の新トレンドとは
連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤
オフィス回帰でも空室率は高止まり
企業はコロナ禍が明けた2022年からオフィス勤務に戻し始め、商業不動産の空室率も減少するかに思われた。だが、2023年の年末になっても全米主要都市の空室率は軒並み高いままだった。
大統領に助言する経済学者の集まり、大統領経済諮問委員会(CEA)のまとめによると、サンフランシスコにおけるオフィスビルの空室率が2023年4~6月期に25%を超えたのをはじめ、エーオンセンターが位置するロサンゼルスが20%超、ニューヨークのマンハッタンも15%を上回っている(冒頭の図1)。
こうした商業不動産の低迷は米国経済の足を引っ張る。ビル所有者のテナント収入が減少すれば、ローンを返済できなくなり、債務不履行になるケースが増える。そうなれば、金融危機にもつながりかねない。
こうした中でも住宅については、供給不足が続いており、住宅価格や家賃が高騰(図2)。オフィスビルのスペースが余っているのに対して住宅不足であることは、資源の効率的な活用という観点から見ても好ましくない状況だ。
こうした状況を打開すべく、ニューヨーク市のエリック・アダムズ市長は8月、オフィスビルのアパート改造の加速を提言した。「ニューヨーク市民が住宅を探すのに苦労しているのに、オフィススペースが空室のまま放置されるのは合理的ではない。住宅転用を可能とすることで、ビジネス地区を再度活性化し、職場や交通の便の良い場所に住宅を供給する」のが主眼である。
オフィスビル地域におけるゾーニング(都市計画)変更や用途変更に関する規制緩和を柱としたニューヨーク市の試みは、住宅供給を増やす有望な手段として米国内で話題となった。
オフィスビルを改造して住宅転用することは、解体・建て替えよりも20%ほどコストが安く、工期も大幅に短縮できるとする研究者もおり、期待が集まっている。そして、これに目を付けたのが、バイデン政権だった。 【次ページ】4,500億円投じる「バイデン政権の思惑」
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