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  • 2023/09/22 掲載

不動産不況で迫る「金融危機」…債務不履行リスク“174兆円”…回避のカギがAIのワケ

連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤

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リモートワークの増加や相次ぐレイオフによってオフィススペースが削減され、米国での不動産需要が低迷している。空室率が高騰するとともに、FRB(米連邦準備制度理事会)による大幅な利上げにより、約1.2兆ドル(約174兆円)相当の債務不履行が発生する可能性があると指摘されている。こうした中で懸念されるのが不動産不況による金融危機だ。そして、その悪夢のような危機を回避できるかどうかのカギの1つをAIが握っている、との論調が高まっている。一体どういうことなのか。揺れ動くオフィスビル市場の真相に迫る。
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図1:コロナ禍以降、オフィスの空室率は上昇傾向を続けている
(Statistaのデータより編集部作成)

不動産業界が食らった「ダブルパンチ」

 米国の不動産業界はパンデミック以前、テック業界の高度成長などの恩恵を受けて、オフィススペースは不足し、賃貸価格もどんどん値上がりするという、物件オーナーにとって望ましい環境にあった。

 しかし、新型コロナウイルスの流行をきっかけに多くの企業がリモートワークを導入し、それが定着。多くのテナントが契約を更新せずに、解約、移転、あるいは賃貸面積の縮小を行った。それにより、空室率は急上昇した。

 市況の悪化に拍車をかけるのが、FRB(米連邦準備制度理事会)が2022年3月から実施してきた5ポイント以上の大幅な利上げだ。米商業不動産分析のグリーン・ストリートによると、一連の利上げで貸し手の利払いが膨れ上がり、不動産需要が減少。オフィス物件の全国平均の価値は2022年3月から2023年7月の間に31%も目減りした。

 さらに、今年から3年間で多くのオフィス物件が借り換え(条件の良い新しいローンに変えること)を迎える(図2)。

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図2:オフィス向け融資の返済期限が赤線枠の2023年~2025年に集中する。これにより何が起きるのか
(Newmark Groupのレポートより編集部作成)

 コロナ禍以前の好況期に、米中小銀行や地方銀行は不動産向けに数兆ドルに上る5~10年物のローンを組成。現在、借り換え期に差しかかっている物件の多くが、こうしたオフィスビルなのである

 中小あるいは地方銀行が組成した約1.2兆ドル(約174兆円)相当のCRE(企業不動産)ローンは、需要減と高金利のダブルパンチにより、潜在的にデフォルト(債務不履行)のリスクがあると、米商業不動産サービスのニューマーク・グループが指摘している。

 実際に、2023年に入って米投資ファンド運用大手のブラックストーン・グループやブルックフィールド・アセット・マネジメント、さらにはゴールドマンサックス・グループまでが、貸し手によるオフィス物件の差し押さえやローンの支払い義務不履行に追い込まれている。

 ここで懸念されるのが、相次ぐデフォルトによる金融危機の到来だ。 【次ページ】金融危機は到来するのか?
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