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  • 2022/05/18 掲載

なぜ「悪い円安」論が広がっても「現状維持」なのか?日銀の本音とは

【連載】エコノミスト藤代宏一の「金融政策徹底解剖」

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20年ぶりの水準となる円安進行、物価上昇を受け、市場には「日銀は金融緩和策を修正するのではないか」との空気が広がっていた。しかし、4月27~28日に開催された金融政策決定会合で、日銀は「金融緩和の継続」の姿勢を強く示した。このような政策決定の背景には、日銀関係者のどのような本音があったのだろうか。また今後、金融緩和策を修正する可能性はあるのだろうか。
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金融緩和を継続を決定した日銀の本音は?
(Photo/Getty Images)


日銀は金融政策の現状維持を決定

 日銀は4月27~28日に開催された金融政策決定会合でイールドカーブ・コントロール (以下、YCC)を主軸とする金融政策の現状維持を決定した。

 YCCとは短期金利(翌日物金利)をマイナス0.1%、長期金利(10年金利)を0%程度に据え置く政策で、10年金利の変動幅はプラスマイナス0.25%である。ごく一部の市場参加者は(1)引き締め方向の政策修正を見込み、また一部の市場関係者は(2)政策金利にかかるフォワードガイダンス(将来の政策指針)の修正を予想していたが、日銀はそうした修正観測を徹底的に封じ込めるかのように、現行の金融緩和を継続していく姿勢をより強く示した。

 こうした「封じ込め政策」を推進するために導入されたのが通称「常設指値オペ」である。政策変更という位置付けではなかったが「連続指値オペの運用の明確化」と銘を打ち、指値オペを毎営業日実施する方針が示された。

 従来の指値オペは長期金利が0.25%に接近した段階で国債の無制限買い入れオペ実施を通知し、国債金利の上昇を都度抑え込む方式をとっていた。都度方式から常設への変更は、「日銀がオペを通知しないかもしれない」という市場参加者の疑心暗鬼を取り払う狙いがあった。

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「指値オペの常設化」へ
(Photo/Getty Images)


 事前にくすぶっていた予想は以下の通り。(1)(2)ともに日米金利差の拡大観測に歯止めをかけることを通じて日銀が円安抑制に動くとの見方であった。

(1)「長期金利誘導目標の引き上げ」
「0%程度」の解釈拡大。具体的には現在、「程度」の上限とされている0.25%を、例えば0.3%に広げるよう国債買い入れオペの運営を変更する。あるいは「0.5%程度」といった具合に誘導目標そのものを引き上げる。事実上の利上げ。

(2)「フォワードガイダンスの修正」
「政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している」という現在のフォワードガイダンスから「または、それを下回る水準」を削除し、日銀自らが利下げの選択肢を取り下げる。利下げ観測が生じていない現状では心理的効果にとどまるが、市場参加者の目線は利上げ方向に向かう。

日銀が「指値オペの常設化」に込めたメッセージ

 常設指値オペへの変更には日銀の「怒り」が込められていたように思える。というのも、4月金融政策決定会合の直前、ドル円相場が節目の130円を突破したことで、マスコミ報道では身近なモノの価格上昇に円安があるとの解説が多くみられ、その原因が日銀の金融緩和にあるとの解説も散見されていた。

 それに先立つ4月15日(当時のドル円は126円近辺)には、鈴木俊一財務大臣も「ウクライナ情勢も加わって輸入品等が高騰をしている。原材料を価格に十分転嫁できないとか、賃金がその伸びを補うように伸びていない環境については、『悪い円安』といえるのではと思っている」とG20財務省・中央銀行総裁会合で発言していた経緯がある。


 このように悪い円安論と共に日銀批判が盛り上がっていた時期であったから、日銀が「聞く力」を発揮し、政策修正をする(すべき)との空気があった。日銀はそうした声を一蹴したように思える。

 ゴールデンウイーク明けの10日も「封じ込め政策」は続いた。日銀の内田真一理事は、参議院財政金融委員会で、「長期金利誘導目標の変動幅拡大は『事実上の利上げ』である」として明確に否定。また「日本経済にとって好ましいことではない」と言及した。同氏は金融政策決定会合のメンバーではないものの、2016年9月のYCC導入に企画局長として携わっていたキーパーソンであり、その発言の意味は重い。

【次ページ】日銀が「金融緩和の修正は不適切」と考える理由とは
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