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  • 2022/10/06 掲載

【住宅市場の最新動向】 格差広がる東京23区……数少ない「地価上昇エリア」とは?

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日本国内の新築住宅の着工戸数はコロナの影響もあり、2020年に大きく落ち込んだ。その後、やや回復基調にあるものの、長期的には厳しい状況が予想される。住宅ローンを扱っている金融機関に与える影響が大きくなるのは間違いないだろう。住宅市場の現状と見通しについて、野村総合研究所アーバンイノベーションコンサルティング部、シニアコンサルタントの大西直彌氏に話を聞いた。
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新設住宅着工戸数の実績と予測
(後ほど詳しく解説します)

新築住宅市場がより厳しさを増す理由

 新型コロナウィルス流行の影響で落ち込んだ住宅市場は、2021年からやや回復基調にあると言えるだろう。しかし長期的に見ると、住宅市場はかなり厳しい状況になっていくと予測されている。その根拠について、野村総合研究所アーバンイノベーションコンサルティング部シニアコンサルタントの大西直彌氏は、以下のように解説する。

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野村総合研究所
アーバンイノベーションコンサルティング部
シニアコンサルタント
大西直彌氏
「中長期的な住宅市場の需要が減少していくと予測されるのは、今後日本国内の人口が減少することが明白だからです。現在、世帯数は増えている状況ではありますが、その内訳を見ると『単身世帯』が増えているのに対して、『夫婦と子世帯』は減ってきています。持家を所有しているボリュームゾーンは『夫婦と子世帯』です。その『夫婦と子世帯』が徐々に減っており、2005年以降、『夫婦と子世帯』と『単身世帯』の割合が逆転しています」(大西氏)

 単独世帯も2020年までは増加傾向にあったが、今後、横ばいから緩やかな減少へと移行することが予想されている。

「これまでは単独世帯向け賃貸住宅における一定程度の継続需要が見込まれていましたが、その需要も減っていくと予測されます」(大西氏)

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図表1:ファミリー層が減少して単身層が増加
(出典:野村総合研究所)

 住宅市場の需要に関して、明るい材料は見当たらないというのが現状だ。供給面でも厳しい状況があるという。

「日本国内のほとんどの分野で人手不足は大きな課題として認識されていますが、建設業界は特に厳しい状況があります。それは、65歳以上の高齢の大工が多く働いているからです。今後10年以内に大量に離職してしまう可能性の高さが、大きな問題であると考えています。2015年には35万人だった大工の人数は、2030年には21万人に減少すると予測しています」(大西氏)

 下のグラフは、大工の人数の推移と今後の予測を表したものである。

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図表2:大工の人数の実績と予測
(出典:野村総合研究所)

 このグラフが示していることについて、大西氏は次のように補足した。

「21万人という数値は、『年齢別による離職者の割合』の過去の傾向から予測値を出すコーホート分析によって導き出したものです。2000年に40代から50代前半だったボリュームゾーンの山が、2020年頃からなくなってきています。しかも、熟練工と呼ばれる技術を持った大工の数も減少しており、量が確保できなくなるだけでなく、施行の品質の確保も難しくなります」(大西氏)

 さらには、ウッドショックや国際社会全体での物不足による原材料の値段の高騰など、さまざまな問題が起こっている。つまり住宅市場は需要と供給の両面で、さまざまな課題を抱えている状況にあるのだ。


工務店も苦しい? 住宅価格が上昇してしまう理由

 需要の減少や人手不足、ウッドショック、原材料の高騰などのほかにも、住宅業界の抱えている課題がある。政府が掲げた「2050年カーボンニュートラル」という成長戦略に対する対応策だ。政府から住宅業界に対しても、長期優良住宅やZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の拡充、LCCM(ライフサイクルカーボンマイナス)住宅の普及推進が求められている。

「カーボンニュートラルへの対応では、ZEHやLCCM住宅への取り組みが、重要になってきました。住宅業界は産業の構造上、多くのCO2を排出していますし、木材を大量に消費しています。いかにCO2の排出量を抑えていくかが、大きな課題です」(大西氏)

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図表3:ZEHの着工状況
(出典:野村総合研究所)

 住宅の省エネ化の向上や新築住宅の長寿命化の推進、CO2削減に寄与する材料の積極的な使用など、さまざまな取り組みが住宅業界に求められている。この状況が新築住宅の需要をさらに圧迫する可能性があるという。

「東京都でも大手住宅メーカーに対して、太陽光発電パネルの設置を、新築一戸建てに義務化する条例導入の基本方針が打ち出されました。工務店や消費者の費用面での負担が大きくなり、住宅購入を足踏みさせる要因になるとの懸念も出てきました。国土交通省には建設産業を守るというミッションがあるため、政府や内閣府との間でどのような決定がなされるのか、注視する必要があります」(大西氏)

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