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中国の不動産大手、中国恒大集団が破綻の危機に瀕している。一部からは中国発のリーマンショックを危惧する声も聞かれるが、仮に同社が破綻した場合、市場にはどの程度の影響が及ぶだろうか。
日本企業とは規模がまるで異なる
恒大は中国の不動産最大手の1社で、住宅やマンションの開発を手がける典型的なデベロッパーである。積極経営で知られており、近年はサッカークラブ経営など不動産開発以外のビジネスも手かげている。恒大は1996年創業の比較的新しい企業ではあるが、日本で言えば三菱地所、三井不動産、住友不動産のような位置付けと考えて良い。
ただ中国の場合、日本と比較するとGDP(国内総生産)の規模が大きいため、同じ大手と言っても企業規模は日本よりもはるかに大きい。同社の2020年12月時点における総資産額は約39兆円、売上高は8.6兆円となっている。日本における売上高トップの三井不動産は総資産が7兆円、売上高は約2兆円なので、4~5倍の規模がある。
同社に限らず、中国の不動産会社は近年の高成長に歩調を合わせて急成長していることから、借入れへ依存度が高い。恒大の総負債額は33兆円を超えており、自己資本比率は15%である。三井不動産の自己資本比率は33%なので、両社を比較すれば恒大のリスクが大きいことは明らかである。
ほかの大手不動産企業も日本や欧米と比較すると自己資本が薄く、全般として脆弱な体質であることは間違いない。もっとも三井不動産も、経済成長率が高かった1960年代は借入れ依存度が高く、自己資本比率は20%を切っていたので、中国企業の現状がそのまま危険ということにはならない。
ただ恒大の場合、各社の中でも財務体質が特に弱いと指摘されており、中国政府が昨年示した財務改善の指標(資産に対する負債の比率、資本と負債の比率、有利子負債と現預金の比率など)を満たすことができなかった。加えて中国政府は不動産バブルを抑制するため、銀行に対して不動産企業への融資上限を設定するよう求めており、不動産企業の資金調達環境が悪化している。このため特に同社に対する破綻懸念が高まっている状況だ。
不動産に対する融資制限や取引規制の実施は下手をするとバブル崩壊の引き金を引く可能性がある。1980年代に発生した日本の不動産バブルでは、政府による土地の総量規制がバブル崩壊のきっかけとなった。中国政府は日本のバブル経済を詳しく研究しており、日本のような形にならずにバブルを処理しようと懸命になっている。
数年前から当局は有形無形で不動産市場の引き締めを行っているが、市場の過熱が著しくあまり効果を上げることができなかった。今回は強めの引き締め策を実施しており、これによって何とかソフトランディングしたいというのが中国政府の本音だろう。
基本的には中国国内の問題だが…
今回の経営破綻懸念が中国経済に及ぼす影響については、同社がどのような形で資金繰りの目処を付けるのか(あるいは付けられずに破綻するのか)によって変わってくる。
同社の株価は、1年前には20香港ドル近い水準だったが、今年に入ってから下落が続いており、現時点では約2ドルとなっている。1年で10分の1の水準だが、現時点では100%破綻を織り込んだ金額にはなっていない。
先ほども説明したように負債額は33兆円と極めて大きいが、低金利で資金を調達できているので年間の利払い額は1,000億円以下にとどまっている。今月には相次いで社債の利払い期限を迎えるが、これについて同社は、利払いを実施すると表明している。目下最大のリスクは社債の償還である。同社が抱える有利子負債は約10兆円(6月時点)だが、このうち約40%が1年以内に償還期限を迎えるとされる。
社債の償還は金額が大きいので、償還資金の目処が付かなくなると破綻に向けて一直線となってしまう。この場合には不動産市場全般への影響は避けられない。
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