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- 2023/01/30 掲載
岸田政権「異次元の少子化対策」も期待薄? 出生率アップに避けては通れない大問題
岸田政権「子育て支援」を拡充
岸田文雄首相は年頭の記者会見において、「異次元の少子化対策」という言葉を使い、子育て支援策を大幅に拡充する方針を明らかにした。通常国会(1月23日召集)冒頭に行われた施政方針演説においても、子育て支援を最重要政策と位置付け、あらためて予算を倍増する方針を示した。「異次元」という言葉の評判が悪かったせいか、施政方針演説では「従来とは次元の異なる少子化対策」と言い方をあらためたものの、目玉政策であるとの位置付けは変わっていない。現在、子育て支援関連予算は5兆から6兆円程度とされるが、倍増された場合、予算規模は10兆円規模を超える。岸田政権は防衛費の倍増も決定しており、両者を合計すると総額で10兆円以上の追加支出が必要となる。
支援策の内容については、3月をめどに大枠を固め、6月にも策定される経済財政運営と改革の基本方針(いわゆる骨太の方針)に盛り込みたい意向だ。この支援策が本当に効果を発揮するのかは、今後、議論が進められる具体的な施策の中身に依存する。特に重要なのは子育て世帯に対する経済的支援である。
少子化の背景となっているのは「経済的事情」
よく知られているように、先進諸外国と比較して、日本の子育て環境は著しく劣悪となっている。保育施設の拡充などハード面での改革が必要なのは言うまでもないことだが、一連のインフラを整備すれば多くの人が積極的に子供を産むのかというとそうはならないだろう。現在、日本における出生率が著しく低下している最大の原因は、経済的事情である可能性が高いからである。
65歳以上の高齢者人口は3600万人を超えており、2025年には高齢者1人を1.9人で支える計算となる。状況は今後、さらに悪化することが確実視されており、2065年には高齢者1人を1.3人で支えなければならない。ここに出産と育児が加わると、現役世代は高齢者に加えて、子供の生活費も負担することになる。ただでさえ、高齢者を支えるための負担が増しているところに、単純に出生率だけを上げてしまうと、現役世代には想像を超える経済的負担が生じてしまうのだ。
高校までの学費負担は、私立の場合、1,800万円を超えるとの調査結果もあり、大学に進学するとなると、さらに支出は増える。世帯の経済的状況はさまざまだろうが、平均的な所得の世帯では、年老いた親の面倒と子供の大学進学の両方に対処するのは極めて困難である。
多くの国民はこの現実について実感として理解しており、出産を躊躇している。過去20年で、国民の未婚率が急上昇しているのは、一連の状況を反映した結果であり、経済的不安が払拭されない限り、多くの国民が今後も出産をためらう可能性が高い。
【次ページ】検討されている財源は? 誰が負担することになる?
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