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ITベンチャーの台頭やスマートシティ構想など、新時代に向けて変貌を遂げているインド。今回紹介するのは、現政府が推進する道路網構築「バーラトマーラ(Bharatmala)」だ。総額10兆ルピー(約17兆円)を費やし、北部インドを総延長51,000kmの道路で結ぶ巨大プロジェクト。なぜ日本はインド北東部に注目しているのか。プロジェクトの全容、資金調達の様子、予想される影響について、アジアビジネスを支援するコンサルティング連合「エクシール・エフ・エー・コンサルティング」が多角的に検証する。
執筆:エクシール・エフ・エー・コンサルティング ガガン・パラシャー、大塚賢二
総延長51,000kmの道路で北部インドを結べ
インド政府が推進する道路網構築プロジェクト「バーラトマーラ」は、総額10兆ルピー(約17兆円)、北部インドを総延長51,000kmにおよぶ国道で結ぶ壮大なプロジェクトである。
「バーラトマーラ=インド環」と名付けられた同プロジェクトは、インド財務省傘下の公共投資委員会の承認のもとに、経済回廊道路、沿岸道路、およびそれらを結ぶ幹線道路から構成される。
今後、いくつかのフェーズを経て、開通を目指す。なお経済回廊とは、一定地域の経済発展のため開発された、当該地域内のインフラの統合的ネットワークを指す。
では、ルートを紹介しよう。まずは下図を参照してほしい。
道路は西部(図の左側)のグジャラート州、ラジャスターン州から北上し、パンジャーブ州へと続く。さらにヒマラヤ地帯を横切ってジャンムー・カシミール州、ヒマーチャル・プラデーシュ州、ウッタラーカンド州、ウッタル・プラデーシュ州の一部、ビハール州、西ベンガル州、シッキム州、アッサム州、アルナーチャル・プラデーシュ州を経て、ミャンマー国境のマニプル州、ミゾラム州に至る。
フェーズ1の中核をなすのが、9,000kmの経済回廊道路だ。ほかには、回廊間およびフィーダー(幹線と接続する支線、6,000km)、国営回廊効率性プログラム(5,000km)、国境道路および国際結節道路(2,000km)、沿岸道路および港湾結節道路(2,000km)、高速道路(800 km)、さらにバーラトマーラの前身である「国道整備計画プロジェクト(NHDP)」の積み残し区間(10,000 km)で構成されている。フェーズ1の総延長は、約34,800 kmに達する。
インド北東部が日本にとって重要な理由
バーラトマーラのプロジェクトでは、北東部の諸州に注意が払われている。その理由は、同プロジェクトが国際交易として重要になっているからだ。
実はインド北東部は、日本にとっても重要なエリアである。2017年8月3日には「日印北東部開発調整フォーラム」が発足した。これはインド北東部における日印間の協力を一層拡大し、日本とインド北東部の関係、ひいては日印関係を強化する新たな枠組みとなる。在印日本大使も出席したフォーラム発足は、インドでも報じられた。
現地有力紙「Mint」の2017年8月3日号は、「India, Japan join hands for big infrastructure push in Northeast(インドと日本、インド北東部の巨大インフラ事業を推進)」との記事を掲載した。その中ではインド北東部における道路網開発などの日印のインフラ協力は、同地域でインドと国境紛争を繰り広げる中国に対する牽制であると指摘された。
さらに、同記事は「世界銀行のような多国籍金融機関は、中印紛争地域における開発プロジェクトへの資金援助に前向きでない。そのため、インドは日本に対し、北東部でのプロジェクトの投資・協力パートナーとしての役割を期待しているのではないか」と報じている。
【次ページ】利息7%の国債も! 資金調達に奔走するインド政府
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