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現実(リアル)と仮想(バーチャル)がシームレスに連携したとき、ビジネスはどのように変革するのか。数年前までは「アミューズメント施設のアトラクション」と見られてた拡張現実(AR)/仮想現実(VR)デバイスだが、現在は製造業や小売業、さらには教育分野でも活用されている。さらに今後は、物理空間と仮想空間がリアルタイムで共存する「複合現実」がビジネスを変革する技術として期待されている。フロスト&サリバン ジャパン 成長戦略コンサルティングマネージャの伊藤祐氏が「複合現実」の可能性を解説するとともに、複合現実市場でキープレーヤーとなるであろう6社の取り組みを紹介する。
複合現実(MR)とは何か? VRやARと何が違うのか
フロスト&サリバンでは、複合現実(Mixed Reality、以下MR)を「物理空間と仮想空間が共存しており、かつリアルタイムで仮想空間のコンテンツを操作できる状況」と定義している。
言い換えると、「私たちが暮らしている現実と、仮想空間がミックスされている状態」がMRなのだ。マイクロソフトが製作した動画「The animated guide to mixed reality」を見てみると、MRについて明確に理解できるだろう。
日本では、仮想現実(Virtual Reality、以下VR)を活用したアトラクションが人気だ。渋谷では「VR PARK TOKYO」というVRアトラクションに特化したアミューズメントパークがあるし、屋内型遊園地である「東京ジョイポリス」でも定期的にVRを活用したアトラクションが提供されている。
マイクロソフトが製作した動画「The animated guide to mixed reality」では現実と仮想の世界がミックスされた世界観をアニメで紹介している
また、拡張現実(Augmented Reality、以下AR)を使った「ポケモンGo」も、社会現象ともいえるレベルで流行している。年齢層を問わず、多くの人々が公園や海辺、ビルの中にスマートフォンを片手に大挙して押し寄せるさまは記憶に新しい。
一方でVRやARに比べて、MRはまだ市民権を得ているとはいい難い。
MR市場が急成長する3つの理由
フロスト&サリバンでは、下記3つの理由により、MRの市場は今後加速度的に拡大していくと見ている。
1. コスト削減:これまでのMRのコストは非常に高額であり、いかに有用であっても採用が難しかった。しかし、昨今の技術革新により開発コストが徐々に下がり、また実際にビジネスプロセスに組み込む事業体も増えてきているため、スケールメリットによるコスト削減も可能となっている。
2. MR用の膨大なコンテンツ:MRという“入れ物”があっても、そこで活用されるコンテンツがなければ意味はない。しかし、人工知能(AI)やビッグデータ活用などのテクノロジーの実ビジネスへの応用が加速し、これらを活用してMRコンテンツ作成も容易になっている。結果として、MR用の膨大なコンテンツが作成されるようになってきている。
3.より高速な通信方法:5Gなど、より大容量のデータをスピーディにやり取りできる通信規格ができあがりつつある。大量のデータのやり取りが必要となるMRは、これを追い風としてさらに活用範囲を広げることができる。
2017年5月時点において、世界で1000以上のスタートアップ企業がMRに関連する事業に取り組んでおり、もはや無視できない一大産業となっている。フロスト&サリバンの調査では、2016年には約1500万台のヘッドマウントディスプレイ(HMD)が出荷されており、2018年には約3900万台に増加すると予測している。2016年のMR関連市場規模は55億ドルであるが、今後年平均96.3%で成長し、2021年には1602億ドルに達すると予測している。
産業の北米、コンテンツの欧州、ハードのAPAC
地域別に見ると、北米・ヨーロッパ・アジア太平洋(APAC)がメインの成長地域となっている。
北米はもっともMRのビジネスへの適用率が高い地域である。建築やヘルスケアなど、さまざまな産業内でMRの活用意識が高まっていることがその要因となっている。大学や企業の大部分は、MRに関する研究開発センターを北米地域に有している。スタートアップの急増が見られているのもこの地域である。
また、ヨーロッパも、MR技術を早期に適用している。特にコンシューマエレクトロニクスに関して、スペイン、ドイツ、イタリア、フランス、オランダなどの地域で主要な収益源となることが予想されている。ヨーロッパには多くのMR関連のコンテンツ制作会社があり、コンテンツ供給者としてもプレゼンスを増していくと考えられている。
なおAPACは、MRのハードウェアを提供する主要なベンダーが多く存在する地域である。 中国、韓国、日本には多くのハードウェア会社があり、MR市場を拡大するための大きな後押しとなると考えられている。ビジネス活用の面では、北米やヨーロッパには遅れを取ると見られている。
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