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- 2017/10/19 掲載
エンターテイメントの世界で、AR/VRへの「投資合戦」が起きているワケ
VR企業ドリームスケープに大型投資
このドリームスケープ社に今年9月、新たな出資者が現れた。全米2位、世界では第一位の映画館チェーンを持つAMCネットワークスだ。人気ドラマ「ウォーキング・デッド」なども手がける同社はドリームスケープに2000万ドル(約22.4億円)を出資、ドリームスケープの「製品」を全米、そして英国に広げたい、としている。
気になるその「製品」とは何か。ドリームスケープはロサンゼルスの西側にあるカルバーシティを本拠地とし、VR技術を用いて「VR体験ができるマルチプレックス」の構築を目指している。複数の映画が見られる映画館は米国で「シネプレックス」と呼ばれるが、こちらは複数のVRを楽しめるVR専門のエンターテイメントセンターだ。
しかし映画へのVR導入はこれまでも行われて来たし、映画館でヘッドセットを使ってVR映画を楽しむこともできるようになった。ロサンゼルスとニューヨークのIMAXシアターではすでにVR映画を上映しており、これまでに5万人以上を動員した。「ボイド」というVR製作会社はウォルト・ディズニー社と提携してディズニーモールでディズニー映画のVR体験を提供している。
なのに、なぜドリームスケープのVRがこれほど注目を集めるのか。スイスのアルタニム(Artanim)社が開発したVR技術を活用しているという、このVRは、単なる映像のVR化ではなく、最大6人までが1つのVR体験を共有し、参加者のアバターによってコミュニケーションをとりながら同じVR世界を体験できる」という点に特徴がある。
つまり個人的な体験としてのVR映像ではなく、友人らとともにそこに入り込んでの冒険が可能になるのだ。
既存エンターテイメントを超えたまったく新しい体験
AMC社のCEOアダム・アーロン氏は今回の出資について「単なるビデオゲームや映画の延長を抜け出した、まったく新しい体験としてのVRこそ消費者が待ち望んでいたものだ」と語る。この体験を広げるため、AMCはドリームスケープのマルチプレックスを今後18ヶ月以内に米国内に最低6か所設置する、という。
うち数カ所はAMCの既存の映画館に含まれる形で、また数カ所は独立したVR専用のマルチプレックスとする。第一号となるのはやはりロサンゼルスのセンチュリーシティ・ショッピングモール内になるという。
VRを使ったゲームセンターなどは過去にも例があるが、成功した、とは言い難い。その理由についてドリームスケープ社のパークス・ウォール氏は「ゲームにしろ映画にしろ、360度のビューがあるだけで視聴者は単なる見物客にすぎない。映画にしてもVRを導入したことでストーリーが変わるわけではない。VR体験を左右するのは自分が体験できその中に入り込める、という要素だ」と説明する。
同社のVR体験はまだプロトタイプの段階で、9分間ほどの短いものだ。しかし、その中では利用者が「主役」であり、一緒に体験する人々の間でアバターを通してオブジェのやり取りをしたり、という実際の体験に近いものを楽しめる。9分間の作品の制作費は150~200万ドル程度だという。
【次ページ】直接的な売上増に結び付く
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