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  • 2018/09/19 掲載

スマートメーターとは?電力需給のデマンドレスポンスと節電量取引のネガワットも解説

フロスト&サリバン連載~産業別に見るICTのインパクト~

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これまでICTと連携していなかった産業が続々とICTを活用し、産業構造が変革されている。「スマートメーター」もそんなICTの1つだ。本稿では、スマートメーターの基礎や市場規模、今後発展しうるビジネスを解説。さらに、電力需給調整で注目されているデマンドレスポンスと、節電で利益を得るネガワットがスマートメーターとどう関わっているのかも解き明かす。
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双方向通信機能を持つ「スマートメーター」によって、社会はどう変わる?
(©sh22 - Fotolia)

スマートメーターの定義

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 スマートメーターとは、エネルギーの使用量をデジタル方式で計測し、遠隔計測などの目的のために通信機能を搭載した次世代メーターを指している。電力メーター、水道メーター、ガスメーターのうちスマートメーターと呼ばれるのは、主に電力メーターである。

 厳密に言えば、電気の使用量を円盤が回転する機械(アナログ)によってではなく電子的(デジタル)に計測するメーターはこれまでも存在していた。

 従来の機械式メーターや電子式メーターとスマートメーターの最大の違いは、スマートメーターが双方向の通信機能を搭載していることにある。これは現代のインターネット社会では当たり前の機能のように思われるかもしれないが、その示唆するところはきわめて大きい。

 日本全国のあらゆるビルや住宅に設置された約7800万台の電力メーターが双方向のネットワークに接続されたIoT機器となることによって、数多くのメリットとビジネスチャンスが生まれてくる。

スマートメーターがもたらすメリット

 ここでは「遠隔地計測」と「リアルタイム」というキーワードに着目してスマートメーターがもたらすメリットを検討してみよう。

 エネルギーの遠隔地計測は、電力供給側と需要側、それぞれについてメリットがある。

 電力供給側にとっての最も分かりやすいメリットは、検針業務の効率化である。電力会社はこれまで、電気料金を確定するために、毎月すべての利用者を訪問して一戸一戸の電力メーターをチェックする必要があった。しかし通信機能を備えたスマートメーターを設置すれば、この膨大な時間と人件費を要する作業を省き、遠隔地から自動で電気使用量を計測できるようになる。

 電力需要側にとってのメリットも大きい。2011年3月の東日本大震災による電力危機を受けて、2016年4月に日本でもようやく電気の小売業への参入が全面的に自由化された。これまでは東京電力、関西電力などの各地域の電力会社が一般家庭向けの電気を独占的に販売してきたが、自由化によって消費者はそれぞれのライフスタイルや価値観に合わせて電力会社、サービス、電気料金メニューを自由に選べるようになった。

 ただし、新電力会社は各地域に検針員を配置しているわけではないので、遠隔地から料金を確認する必要がある。そのためにはスマートメーターが必須である。多くの消費者にとって、新電力に乗り換える際の最初のステップはスマートメーターの設置だろう。

 また、電気の使用量をほぼリアルタイムで計測することからも、多くのメリットが生じる。

 電気の安定した利用を実現するためには、電力の需要量と供給量を常に一致させる必要がある。これは「同時同量の原則」と呼ばれ、電力会社の基本方針の1つである。

 この原則を保つうえで「供給量を需要量に合わせる」「需要量を供給量に合わせる」という2つの考え方がある。

 前者はこれまで電力会社が行ってきたことであり、ピーク需要に備えた過剰な発電設備の建設にもつながってきた。後者は「デマンドレスポンス」と呼ばれる動きで、電力会社が消費者に電気の節約を促すことで余剰電力を生み出し、その一方で消費者はその分の対価を受け取ることができる。

 ほぼリアルタイムで電力利用状況を把握できることがこのシステムの大前提であり、そのための基本インフラがスマートメーターである。

 なお、2017年4月に、日本でもデマンドレスポンスを実現するための市場として「ネガワット市場」が創設された。これにより、家庭や企業が節約した電力を売買できるようになり、デマンドレスポンスも拡大していくことが予想される。

スマートグリッド、HEMSとスマートメーター

 スマートグリッドやHEMS(Home Energy Management System)にも、スマートメーターは大きく関わっている。

 スマートグリッドは、スマートメーターを基盤として供給と需要の双方向から電力を制御、最適化した末に構築される次世代送電網である。また、HEMSは一般家庭で電気やガスの使用量をリアルタイムに見える化して節約するシステムだが、その基になるデータはスマートメーターから得られる。

 こうして見ると、エネルギー業界のあらゆる最新トレンドの根底にスマートメーターがあることがわかる。

スマートメーターの市場規模

 日本政府は2014年の「エネルギー基本計画」で、2020年代早期までにスマートメーターを全世帯/全事業所に導入する目標を打ち出した。この政府のイニシアチブに基づいて、スマートメーターの導入は着実に進んでいる。

 フロスト&サリバンの調査によれば、2015年の日本のスマートメーター設置台数は900万台であったが、2016年~2020年にかけて毎年約1000万台のペースで設置が進み、2021年までに90%の世帯/事業所への導入が完了する見込みである(1)。

 世界のトレンドも基本的に同じ方向を示している。図1に示すとおり、北米と中国を除いてスマートメーター市場はいまだ成長期にあり、各国政府の主導の下で今後も導入が続いていく。グローバル市場では、2015年~2025年にかけて売上と出荷台数が、年平均でそれぞれ2.1%、3.2%成長するとフロスト&サリバンは予想している(2)。

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図1:スマート電力メーターの地域別市場トレンド(2015年時点)

【次ページ】スマートメーターとデマンドレスポンス
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