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  • 2018/03/15 掲載

世界の4割が「スマート手術室」移行へ、IoTフル活用の医療ですべきこと

フロスト&サリバン連載 ~ICTとの融合で特定の産業がどう変化するか~

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スマート手術室(スマートOR: Operating Room)は、イメージングテクノロジーやデータ分析ツールで構築される手術室のことで、生産性向上を目的としている。スマート手術室と従来の手術室はどう違うのか。どういったきっかけで開発され、どのような発展が見込まれているのだろうか。今回はこのスマート手術室について、注目すべき技術、市場の主要プレーヤーおよび市場動向を、フロスト&サリバンジャパン コンサルティングアソシエイトの ン・ディオン氏が解説する。

執筆アシスタント:フロスト&サリバン ジャパン フーチェ・アントワン

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手術室もこれからはスマートになる
(写真提供:フロスト&サリバン)


医療現場の利益とコストを大きく左右する「手術室」

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 医療業界では、「手術室は病院の収入の約6割に貢献し、病院の経費の4割を占める」と言われることがある。要するに、手術室が病院の大きな収益源の一つであるということだ。

 一方で、患者にとっての手術費用は、医療保険に加入していても高いと思われることが多い。また、医療サービスである手術のコストの抑制要求は高まるばかりである。

 すなわち、病院の経営層にとって、手術室に関する費用対効果の改善や、投資の決断に高い注目が置かれているのは間違いないだろう。

患者の負担を最小限に抑える家庭で誕生した「ハイブリッド手術室」

 ハイブリット手術室は、医療技術の発展により、患者の身体への負担低減を目指した「最小侵襲手術 (Minimally Invasive Surgery)」の進化の過程で誕生した。

 最小侵襲手術が登場するまで、手術といえば患者の体に大きな負担を与えるような切開手術が一般的だった。切開手術の場合、切開の幅と数により、患者の術後疼痛、入院期間、合併症状、感染リスクおよび回復期間が影響される。

 そのため、切開を最小限に抑える腹腔鏡検査(laparoscopy)やロボット支援手術(robot assisted surgery)などといった最小侵襲手術法が開発された。

 最小侵襲手術は、最小侵襲脊椎手術や各種腫瘍の切除をはじめ、さまざまな外科において導入されつつある。国内の最小侵襲手術の例としては、整形外科において人口股関節置換手術や人口膝関節手術がよく知られている。

 最小侵襲手術の一般化を促進しているのは、医療向けの画像・イメージング技術である。人体の内部に潜んでいる罹患部位を可視化するために内視鏡およびその他医療用途に特化したイメージング機器が発明された。

 こういった手術用のイメージング機器の導入に応じて、高度画像装置および手術のワークフローの計画と実施の効率化を促すシステムを組み合わせた手術室が誕生した。これがハイブリッド手術室だ。

 ハイブリッド手術室を使用する場合、手術開始前に外科医や技師などの医療関係者が手術の手順を計画した上、シミュレーションやモデリングなどのツールを用いてテストを行い、必要に応じて計画を修正することができる。

 手術中には基本的にこの計画に従って手術を進行する。同時に、ハイブリッド手術室のために整備されている外科用イメージング技術および最小侵襲性装置の活用により、外科医は患者の罹患部位を高解像度の画像で確認でき、最良の手術方針を途中から考え直すこともできるようになった。

IoTをフル活用する「スマート手術室」

 では、スマート手術室は、どういったきっかけで開発されたのだろうか。

 先ほど述べた通り、最小侵襲手術のコアにあるイメージングテクノロジーは、ハイブリッド手術室に包含されている。しかし、それはどちらかというとハードウェア(X線・CT装置や内視鏡、その他の医療機器)を中心にした取り組みである。一方、スマート手術室は、ハイブリッド手術室を基盤として、IoT、クラウドプラットフォームや人工知能など、最先端技術を活用した情報システムを備えているのが特徴である。

 一方で、スマート手術室のハードウェア面では、ハイブリッド手術室が導入しているイメージングデバイスのみならず、主に手術室内のスタッフの動きや患者のバイタルサイン(血圧・心拍数など)を読み取るセンサーがある。こういったセンサーは、ソフトウェアを組み合わせた情報システムに相互に繋がれている。

 さらに、センサーが読み取った位置データ、医療機器からの血圧や血中酸素濃度などの基本データ、イメージングデバイスからの術中画像、患者固有のデータがすべてこの情報システム上に送信され、管理されている。このプラットフォームでは、統合された複数の画像データを、外科医や看護師のために手術室内の高解像度のスクリーンに、同時に映すことが可能である。

 また、手術中に他の医師に助言を求めたり、医学生や研修医の教育を実施したりする目的で、遠隔で画像の配信を通したコミュニケーションを取ることもできる。さらに、人工知能やビッグデータアナリティクスの活用により、手術から収集したデータをベースに予測情報を生成し、医療ミスを減らす役割を持たせることもできる。

 スマート手術室は、専用ハードウェアにかかわらず、すべての医療機器が一つのネットワークにつながっていれば、リアルタイムでの投影・情報共有ができ、手術の正確性と効率の向上に結びつく。従来の手術室の仕組みとは大きく異なるといえるだろう。

【次ページ】世界の約4割の手術室がスマート手術室へ
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