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  • 2018/02/08 掲載

医療AIベンチャーの「NAM」は医療に革命を起こすか?

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電子カルテの普及率が低い日本では医療情報の共有や作業の効率化に課題がある。今回紹介するAIベンチャーの「NAM」は、近年実用化が進んでいるAIやブロックチェーン技術を使って、この課題の解決を目指している。同社のロードマップによれば、LINEを使った問診ボットによって治療の経過を観察しつつ、医療情報を一か所で管理する電子カルテシステムを構築し、収集した情報を活用して疾患を予測するAIを開発するという。
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医療の課題をAIとブロックチェーンで解決しようとするNAMプロジェクトを考える
(© wladimir1804 – Fotolia)



NAMプロジェクト誕生の背景

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 医療業界は最新技術による進歩が期待される分野だ。しかし、病院内の情報を蓄積する電子カルテの普及率は2016年末で約34.2%と、4割にも満たないなど、情報共有や作業の効率化に課題がある。 医療情報は患者・かかりつけ医師・病院・保険会社・製薬会社といったさまざまな立場の人たちに取り扱われるが、それを効率的に統合する仕組みは今のところない。

 医療情報が統合されていないため、治療を受けた患者が実際に治癒したのかどうかを医師が知る術はない。本来、医師の診断は処置の結果によって評価されるべきであるものの、処置の結果を管理できないという問題が指摘されている。

 こうした状況にある医療システムを刷新するため、最新のAI技術やブロックチェーン技術を活用しようという試みが「NAMプロジェクト」だ。自動的に問診を行うAIを皮切りに、患者と医師が診断経過を共有する電子カルテ、さらに、検査結果から疾患を予測するサービスを開発することを目標に掲げている。

 NAMプロジェクトを実行するAIスタートアップのNAMは、2017年に慶応義塾大学医学部を卒業したばかりの中野哲平氏によって立ち上げられた。2016年、2017年にIPAの未踏事業に採択された人物でもある(2017年の事業は独立のため辞退。当時の社名はAUGRIMだった)。

 NAMプロジェクトでは、診断・検査結果の管理や医療機関との決済・送金をブロックチェーンで実現するため、コストを抑えながら、セキュリティの高い仕組みを構築できるという。

 同プロジェクトが注目される理由の1つに、ICOという資金調達を採用した点が挙げられる。株式市場に株式を発行して資金を調達するIPOのように、仮想通貨から資金を得る手段だ。

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 NAMプロジェクトに賛同する投資家は、イーサリアムと呼ばれる仮想通貨を送金し、NAMコインという独自通貨の発行を受ける。NAMコインはNAMプロジェクトの決済に利用される。また、同プロジェクトの発展とともに値上がりが期待できるというのがうたい文句だ。NAMプロジェクトは、調達した仮想通貨を事業開発に活用。その資金調達の目標額は100億円で、この資金をもとに高度なAI技術の開発を行う狙いだ。



問診ボット、疾患予測、電子カルテのすべてを統合するAIシステム

 NAMプロジェクトが手始めに手掛けるのは、LINE上で利用される問診ボット「ドクターQ」である。

 体調不良を感じたユーザーは、その状態を入力し、病院に行くべきか、薬を飲めば良いかといったアドバイスを受けられる。ボットが積極的に質問を投げかけ、症状が重篤化する前に適切な治療を受けられるようにする。

 次に、収集した医療データを活用し、生活習慣病になる確率を予測するAIを開発する。人間ドックのような検査サービスによって、売り上げを上げる。また、病気を予防したいユーザーには健康食品の推薦を行い、健康維持を手助けするサービスを提供する。

 そして、医療情報を統合する電子カルテシステムにより、医療にまつわる作業の圧倒的な効率化を実現する。カルテの記載・過去の情報の整理・保険点数の確認・国による診療報酬の審査といった作業をAI技術やブロックチェーン技術により効率化する。

 上記のサービスは相互補完的であり、ボットと収集されたデータが検査サービスや電子カルテへの入力情報として活用される。NAMプロジェクトは2019年4月、NAM AIクリニックの開業を予定している。ここでは、一般的な病院では提供されない最先端の医療サービスを提供するという。

 NAM AIクリニックにおけるサービスはNAMコインでの決済・送金が可能だ。取り引き情報を安全に記録するブロックチェーン技術があるため、医療情報と取り引き履歴が1カ所で管理可能になる。

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NAMプロジェクトの仕組み

 電子カルテ市場は、2020年に2,780億円に達すると予測され、2016年に比べて442億円増(19%増)となっている。 特に普及率の低い中規模病院での導入が期待されている。標準化されたプラットフォームの導入は容易であるため、情報システム部門を持たない中小規模の病院では、NAMプロジェクトのような電子カルテシステムの開発に期待が高まる。

【次ページ】海外の医療ブロックチェーン事情
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