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さまざまな業界・業種で活用されつつある「人工知能(AI)」技術。高度な認知や判断など人の知的能力を必要とする業務も任せられるようになった。しかし、業界によってAIに期待する役割や成果は異なる。この記事では造現場にフォーカスし、「プロダクト」「プロセス」「マネジメント」の観点からAI活用のメリットを紹介する。また、製造業におけるAI活用による自動化・自律化のロードマップを示し、その秘めたる可能性を探る。
人工知能の特徴は「自律」
人工知能(AI)技術は「人間の持つ認知や判断といった知的機能の一部を実現する技術」と定義される。
この技術により、これまでは人間の知性を介在させないと処理できなかった業務を機械が自律的に処理できるようになる。
ここで、「自動」と「自律」の違いを改めて考えてみよう。
異なる作業工程に従事する機械Aと機械Bがある。自動化された状態では、機械Aと機械Bは事前に決められた作業手順に基づいて、個々の仕事を独立してこなす。機械AとBの間でのコミュニケーションはない。
では、自律化された状態ではどうだろうか。自律していると、機械がより高度な状況判断に基づいて、作業手順や内容を人の手を介さずに変更することができる。さらに、機械同士がネットワークで連携されることで、機械Aと機械Bが互いの作業の進捗データを受け取り、自律的に協働していくことも可能である。これを実現するには、AIの学習アルゴリズムが欠かせない。
AIの学習アルゴリズム
AIに搭載されるアルゴリズム全体に共通する性質として「一貫性」がある。ここでいう一貫性とは、手順「A→B→C」があった際、手順に矛盾がない限り、定められた通りに作業が行われることである。
たとえば、手順が「A→B→C……Y→Z」と増え、それを何千万回と繰り返すとしよう。この作業をミスなくこなすことは、人間には至難のワザである。しかし、アルゴリズムに狂いが生じることは概念上あり得ない。このアルゴリズムの一貫性とコンピュータの演算能力を掛け合せ、正確さとスピードを兼ね備えることができる。
ただし、この一貫性だけでは高度な認知・判断を実現できない。それを実現する際にポイントとなるのが「学習アルゴリズム」である。今までの機械は人間が事前に入力したアルゴリズムに基づき、決められた手順を忠実に実行していた。一方で、学習アルゴリズムが組み込まれたAIは、データや経験に基づいて最適な手順やルールを自己構築し、状況に応じてそれらの手順を実行する。
これによりAIは、人間の手を介さずに「認知→判断→行動」の一連のプロセスを自律的に完結できるようになる。すると、人間の高度な認知・判断能力を介在させる必要があった場面、たとえばプラント運営の中枢部や銀行の与信審査などにおいて、人間が不要となるのだ。
AI導入を支えた第四次産業革命
ここで、製造現場の進化とAIの関係を振り返りたい。
1980代から、工場では施設全体を管理するDCS(分散制御システム)、機械やプロセスを管理するPLC(プログラマブルロジックコントローラ)、工場の生産と品質を管理するMES(製造実行システム)などの自動化システムが活用されてきた。
2000年代までの製造システムでは、事前に入力されたアルゴリズムに基づいて各機械が比較的単純な作業を自動化していた。
その後2010年代初期にドイツにてIT産業と製造業を結びつけ、相互発展を促す「第四次産業革命(インダストリー4.0)」が提唱されたころから、「自動化」から「自律化」への流れが本格化する。当初のインダストリー4.0は、IoT(モノのインターネット)機器を活用したデータ連携に主眼が置かれ、工場内でIoT機器や通信機器のアップグレードが行われた。これにより、AI技術を受容できるだけの設備基盤が整えられ、その後の製造業のAI導入本格化は比較的スピーディに進んだ。
2012年にはAI技術であるニューラルネットワークや深層学習の威力が広く認知されるきっかけとなったトロントの画像認識コンテストが開かれた。
このような技術的進化と現場の設備の進化があったうえで、人間が現場にいなくても、ロボットが原料調達から生産、出荷までを完全にこなす工場が目指され、製造業はAIに莫大な投資を行い、無数のアプリケーションやアルゴリズムを開発してきた。インダストリー4.0では、機械同士をネットワークで連携することでデータを循環・分析させ、自律化することが目指されている。
大きな流れで見ると、いまも続くインダストリー4.0の中で「事前に決められた行動のみを行い、制御するシステム」から、「より直感的な判断を行うシステム」への段階的なアップデートが進行しつつある。
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