- 会員限定
- 2018/05/22 掲載
「スマートシティ」日米で圧倒的な差がついたワケ、日本に欠けている2つの視点
連載:シリコンバレー発 米テックレポート
拡大する「スマートシティ」投資、カナダとアメリカで顕著
特にスマートシティへの取り組みに熱心なのはカナダとアメリカだ。
カナダ政府は2017年予算でImpact Canada Initiativeという成長戦略を打ち出し、その中の1つにSmart City Challengeを掲げ、11年間で3億ドルの投資開発を行うと宣言した。都市やコミュニティの規模を問わず、イノベーションがあり、データ分析と、コネクテッドテクノロジーを用いて、人々の生活を豊かにすることなどを基本要素に挙げている。このほかにも、政府系のスマートシティファンドが立ち上がっていて、民間からの資金も入り、15億ドルが投資可能とのこと。
また、米グーグルの親会社、米アルファベットは、サイドウォークラボ(Sidewalk Labs)という最新テクノロジーを用いてスマートシティの実現を目指す会社を創設。同社は2017年、カナダ政府、オンタリオ州政府、トロント市による、同市のウオーターフロント再開発計画事業「ウオーターフロント・トロント」のパートナーとなり、「サイドウォーク・トロント」という共同事業体を発足させた。このプロジェクト費としては、5000万ドルが投資された。
一方、アメリカでは、まずテキサス州のダラス市が2016年からダラス・イノベーション・アライアンス(DIA)と呼ばれるスマートシティプログラムを始めている。今年は、AT&Tとトヨタ自動車を中心に、都市監視や水のマネジメント、パーキングなど5つの新しい取り組みを行うと発表。
また米ウーバーも、オハイオ州のシンシナティ市とモビリティにおけるスマートシティ実現のため、パートナーシップを結び、現地にモビリティ研究所を設置した。
さらに、オハイオ州のコロンバス市では、スマートシティの頭脳になるOS、それを構築し学習し続けるためのデータ共有・分析プラットフォームの構築に250万ドルの投資を決めた。
象徴的といえるのは、今年の1月にアメリカのラスベガスで行われた世界最大の家電見本市「CES2018」では、初めて「スマートシティ」のカテゴリが新設されたことだ。加えて、2018年だけでもアメリカではすでに10ものスマートシティに関するカンファレンス・イベントが予定されている。
米がスマートシティに本気で取り組む理由とは
かつての日本で注目を浴びた「スマートシティ」は、パナソニックなどの家電メーカーによる「家まるごと」「施設まるごと」とうたわれるような、太陽光などの自然エネルギーや省エネ装備を一式そろえた建物などのソリューションだったり、低炭素社会実現をうたったBEMS(ビル内エネルギー管理システム)やHEMS(家庭内エネルギー管理システム)などのエネルギーマネジメントなど、消費電力の節約に関するものが主だった。これはスマートシティの日本における一形態であって、世界共通のスマートシティの在り方というわけではない。スマートシティの定義は諸説あり、都市ごとにあるといってもいい。そもそも、都市機能自体が非常に複雑だ。それぞれの都市が解決したい問題や、地場の企業が何が得意かによって、多様な定義がされていくだろう。
スマートシティへの投資が盛んなアメリカにおける話をすると、多くの大都市において共通の課題がある。
運輸省が2016年に5000万ドルを投資した大規模なスマートシティ実験「Smart City Challenge」で発行されたペーパーには各都市のスマートシティの提案に際して、次のような課題が共通していたと書かれている。
・職場通勤の交通渋滞を防ぐためのファーストマイル、ラスト1マイルの交通サービス
・公開されている公共交通機関のデータの集約・分析プラットフォーム化
・電気自動車などによるCO2の削減
・物流配送トラックのストップ&ゴーによる燃料の無駄
・交通流の最適マネジメント
・都市部のスムーズなパーキング探し
また、スマートシティの大きな潮流を見ると、その在り方や提案はいまだに1つの定義には落ち着かないものの、大企業によるソリューション主導からスタートアップとエコシステム主導へ、ハードウェア中心のアプローチからサービス・ソフトウェア中心のアプローチへ、エネルギーのスマート化から交通モビリティのスマート化へ、大きな変化を見せている。
【次ページ】日本の「スマートシティ」戦略に足りない2つの視点
関連コンテンツ
関連コンテンツ
PR
PR
PR