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- 2021/08/03 掲載
サウジアラビアで進む巨大スマートシティ「NEOM」とは?現地CEOらが語る規格外の計画
サウジアラビアの巨大スマートシティ計画「NEOM」
スマートシティは、世界的に注目されている未来プロジェクトである。日本政府も「統合イノベーション戦略2021」において、第6期基本計画の重点施策の1つとして位置付けている。国内でもスマートシティへの取り組みが各地で進められているが、中東の石油大国サウジアラビアでは今、日本のそれらがかすんでしまうような巨大なプロジェクト「NEOM」(ネオム)が進んでいる。これは、スマートシティを中核とする非常に大規模な都市開発事業だ。
そもそもの始まりは、2017年3月、安倍前総理とサルマン国王により、両国の発展の礎となる新たな戦略的パートナーシップの羅針盤「日・サウジ・ビジョン2030」が発表されたことだった。このイニシアチブの下で制定されたのが「サウジビジョン2030」で、活気に満ちた社会、繁栄する経済、そして行動する国家を、石油収入に依存しない形で実現しようと明確な目標が定められている。その中の目玉プロジェクトの1つが、NEOMというわけだ。
国家の枠組超える「準独立」の仕組み
NEOMは、紅海の北、サウジアラビア北西部で計画されている新たな産業都市を指す。総面積は26,500平方キロメートル、ベルギーの国土ほどの広さがあり、紅海の海岸に沿って海岸線は450キロメートルに及ぶ。「NEOはラテン語で『新しい』を意味し、Mはアラビア語の『未来』を意味します。私たちはここに未来、それも持続可能な未来を構築します。広大な敷地で、その40%は飛行機で行くことができます。その一方で、計画の当初から開発に関しては土地の5%に限ると決めています。95%は環境を保存し、自然をそのままに残します」
そう語るのは、NEOM 最高経営責任者(CEO)ナドミ・アル・ナセル氏だ。持続可能性はNEOMの一貫したテーマだという。「プロジェクトが完成する2030年に振り返ったとき、95%の手つかずの自然に対しても、5%の開発した土地に対しても、誇りを持つと確信しています」とナセル氏は言い切る。
そしてこの広大な敷地は、既存の政府の枠組みからはずれた「準独立」のフリーゾーンになるとされ、そのかじ取りはプロジェクトのために創設されたNEOMという組織に託されている。
「NEOMは、『準独立』のフリーゾーンとして、独自の法律、規制、当局を持つことになります。非常に競争力のある自由特区です。決して簡単なことではありませんが、実現に向けて取り組んでいます。ここを生きた研究所にしたいとも考えています。最先端の考えやイニシアチブを持っている世界中の人々に、それらを実践する場として提供します。そういった取り組みに投資を行うことで、イノベーションハブを実現していきます」(ナセル氏)
【次ページ】電力は100%再生エネルギー、グリーン水素の生産も開始
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