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いま、移動の概念が再構築されている。コロナ禍を契機に、物流は飲食店のテイクアウトやインターネットショッピングなどの需要が増え、人の移動は大幅に減少した。一方で、このご時世に対応した新しい移動サービスが成長を始めている。そのうちの1つ「通勤シャトル」を運営する企業、NearMe(二アミー)の代表取締役 髙原 幸一郎氏の見解とともに、新たなモビリティサービスの実態に迫る。
一変した東京、一極集中の流れすら動きあり
日本で新型コロナウイルスの影響をもっとも大きく受けているのは、たぶん東京だろう。人口比でみても感染者数がずばぬけて多いこともあるが、これまでさまざまな理由を挙げて拒む会社が多かった「テレワーク」が一気に進んだことも大きい。それだけ正体不明のウイルスに対して多くの人が身の危険を感じたのだろう。
その結果、公共交通は利用者が大幅に減り、タクシー業者は事業休止に追い込まれる会社もあった。いわゆる夜の街も、勤め帰りに飲食店などに向かう人が減ったうえに、複数のクラスターが発生したこともあり、9月14日までは22時までの時短営業要請が出されていた。
さらに7月は、東京都からの転出者数が転入者数を大きく上回り、全都道府県でもっとも多い2522人の転出超過となったことが明らかになった。コロナ禍は一極集中の流れすら変えてしまったのである。逆に、近隣の千葉県や山梨県、長野県は転入増となっており、テレワークを機に住まいを地方に移す人が多いことが分かった。
コロナ禍で生まれた移動サービス「通勤シャトル」
とはいえ、多くの人にとってのテレワークとは、1日も会社に行かなくていい状況ではない。筆者の妻もそうであるが、出社しなければ進まない仕事のために週に1日ぐらいは出掛けている。さらに、会社の方針や仕事の内容などの理由で、テレワークを導入できない仕事もある。
となると、心配になるのが通勤路での感染だ。現時点で鉄道の列車や駅、バスの車内などでクラスターが発生したという情報は出ていないものの、中には心配だと考える勤労者や会社はあるだろう。そのようなニーズをかなえる新しい移動サービスが、2017年に設立したニアミー(NearMe)が運行する「通勤シャトル」だ。
ニアミーはまず2018年、大都市の深夜移動などにフォーカスしたタクシーの相乗りマッチングアプリ「nearMe.」をリリース。翌年には東京都内と千葉県のゴルフ場間の相乗りや新潟県長岡市で地方都市における相乗りの実証実験を行った。
その後、成田空港間と都内15区(千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、台東区、墨田区、江東区、品川区、目黒区、大田区、世田谷区、渋谷区、豊島区、江戸川区内の指定場所)を結ぶサービスとして空港便を本格リリースした。これが「スマートシャトル™」だ。しかし2020年を迎えてまもなく、新型コロナウイルス感染拡大という予想外の事態が訪れ、空港利用者が激減してしまった。
ニアミーはこの苦境をどう捉えていたのか。代表取締役の髙原 幸一郎氏に話を聞いた。
「タクシーの『もったいない』の解消、つまり稼働率を上げるべく、利用者と車両をマッチングするプラットフォーム提供が私たちのスタートでした。コロナ禍で空港需要が止まり、タクシー事業者が影響を受ける状況を見て、空港向けの仕組みを使って公共交通の密を回避し、タクシーにも有益になる仕組みがないかを考えました」(髙原氏)
その結果生まれたのが通勤シャトルで、東京都内で同じルートで通勤する人を、スマートシャトル™で使っていたトヨタ自動車「アルファード」「ハイエースワゴン」などで輸送する。4月16日から10社を相手にトライアル募集を始め、6月1日にトライアルを開始、7月1日から本格導入した。
【次ページ】「タクシー事業者の乗り合い禁止」の現状をどう打開した?
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