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トヨタ自動車が目覚ましい勢いで進化をしている。3月24日にNTTとの資本業務提携の合意を発表。ソフトバンクとのタッグ、MaaSアプリの開発、定額制やシェアリングの導入に加え、まちづくりにも乗り出そうとしている。「クルマを作る会社」だったトヨタは、なぜ「モビリティカンパニー」に変貌しようとしているのか? 現時点での具体的な動きを紹介しながら考えていきたい。
「100年に一度の大変革」の意味
「自動車業界は『100年に一度の大変革の時代』に入っている」。2018年、トヨタ自動車の豊田章男社長はそう語り、トヨタを「クルマを作る会社」から「モビリティカンパニー」にモデルチェンジすると表明した。同年初め、米国ラスベガスで開催されたCES(家電見本市)では、「e-Palette Concept」と呼ばれる箱型の移動・物流兼用無人運転シャトルを発表した。
10月にはソフトバンクとの提携を発表し、共同出資で
MONET Technologies(以下MONET)という新会社を設立すると発表。翌月には福岡市でスマートフォン向けモビリティサービス「
my route(マイルート)」の実証実験を始めた。
さらに同月にはサブスクリプション(定額利用サービス)の「
KINTO(キント)」を発表し、翌年2月に導入すると、2019年10月には販売店とレンタカー営業所でカーシェアリングサービス「
TOYOTA SHARE」を開始。翌月にはキャッシュレス決済アプリ「
TOYOTA Wallet」の提供を開始した。
そして2020年1月のCESでは、自動運転や
MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)、ロボット、AI(人工知能)技術などを導入・検証できる実証都市を「Woven City(ウーブンシティ)」と名づけ、2021年に着工すると発表した。
さらに、3月24日、NTTとの業務資本提携の合意を発表した。実は、両社のタッグは初めてではなく、2017年からコネクテッドカー分野で協業していた。今回の提携は、上述の「Woven City」が主な目的のようだ。合意発表の共同会見で豊田社長は、モビリティカンパニーにフルモデルチェンジするために、社会システムの根幹を担うNTTとの提携は「必要不可欠であり、ある種、必然であった」と語った。
年表:始まりは2009年
いずれも、10年前のトヨタでは想像すらできなかった動きだ。最近の自動車業界は「100年に一度」というほど激動の連続であり、トヨタがここまでの改革に乗り出したのは、クルマ作りだけでは生き残れないという危機感があるからだろう。
発端は2009年にあったと考えている。この年、Googleが自動運転車の研究開発をはじめ、ライドシェアというサービスを発明したUber Technologiesが生まれた。
Googleはその後、自動運転部門をWaymoとして独立させ、FCA(フィアット・クライスラー・オートモビルズ)やジャガー・ランドローバー、そしてルノー・日産グループと提携を結んだ。
Googleの自動運転車両の実験走行距離は、トヨタを含めた他の会社を大きく引き離しており、米国ではすでに自動運転タクシーの商用サービスも始めている。
Uberが手がけたライドシェアは、スマートフォンのアプリを用いてマイカーのドライバーと移動者(Uberではライダーと呼ぶ)をマッチングさせるという斬新なサービスを提供。その後、中国DiDi、シンガポールGrab、インドOlaなどが続々登場した。ちなみに、上記4社の筆頭株主になっているのはソフトバンクだ。
【次ページ】ライドシェアとMaaSの共通点、自前主義のトヨタが変わったきっかけ
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