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トヨタ自動車が12月14日、EV(電気自動車)戦略についての説明会を行った。16台もの車両をずらっと並べ、その前で豊田章男社長がプレゼンテーションをするシーンは多くの人が圧倒されたことだろう。では、トヨタはこれらをどう走らせるのだろうか。同社が進めるスマートシティ「Woven City」プロジェクトと合わせて考えてみると、近年トヨタが立て続けに発表してきたモビリティとのつながりも見えてきた。
16台のEVを勢ぞろいさせた理由
トヨタ自動車の12月14日の説明会は、2021年いっぱいで閉鎖される東京お台場にある同社の大型ショールーム「メガウェブ」で開催された。YouTubeで生中継もされたので、ご覧になった方も多いのではないかと思う。
説明会という案内だったので、スライドなどを使った事務的な内容だと予想した人もいるはず。それだけに、2022年に市販予定のbZ4Xと15台のコンセプトEVを並べ、その前で豊田 章男社長がプレゼンテーションをする姿には筆者も驚いた。
説明会の様子はトヨタの公式YouTubeチャンネルにアップロードされており、豊田社長によるプレゼンも動画で見ることができる
しかし、これがトヨタのEV戦略のすべてではない。説明会では2030年までに30車種のEVを展開し、グローバルの販売台数で年間350万台を目指すと表明したからだ。これまでの発表では2030年にEVとFCV(燃料電池自動車)を合わせて200万台を目標としていたので、2倍近い数字だ。
中でもプレミアムブランドのレクサスは、2030年までにすべてのカテゴリーでEVのフルラインナップを実現し、欧州、北米、中国では100%EV化。2035年にはグローバルで100%EVを目指すという。
なお、この発表でトヨタは電気自動車のことをバッテリーEV(BEV)と呼んでいるが、ここではEVと書く。海外では欧州委員会の2021年7月の
発表にあるように、EVは電動化車両全般を指す言葉で、プラグインハイブリッド車(PHV)やFCV、BEVも含めるという意味への置き換えを進めている。しかし私たちは長年、電気自動車=EVと認識してきたわけで、政治的な戦略に屈する必要はないというのが筆者の考えだ。
それはともかく、トヨタはなぜこのような展開をしたのか。同社はこれまでカーボンニュートラルについては全方位戦略、つまりEVだけではなくFCVや水素エンジンなど多様な手法で対応していくとしてきた。それがEVに対して消極的と見られたことから、16台を一挙に披露し、350万台という数字でアピールしたのだろう。
ただし冷静になって考えてみると、「トヨタが作ればEVが350万台売れる」ということにはならないはずだ。2020年のグローバルでのEV販売台数は、欧州を中心に各地域でEV振興策が取られたにもかかわらず約200万台と、全体の2.5%ぐらいにすぎなかったのだから。
右奥に並んだ2台に注目
筆者が多くの自動車に試乗してきた経験から言えるのは、EVとエンジン車では得意分野が違うことだ。EVは走行中に排気ガスを出さず音が静かというのは、多くの人が知っていると思うが、それ以外にも、モーターは低回転で最も効率が良いので、発進停止が多くスピードを出さない都市内での走行に向いている。ハイブリッドカーの燃費が街中で伸びることでも、これは証明される。
それに都市内の移動は短距離なので、満充電での航続距離が短く、充電時間が長いという欠点は目立たない。ランニングコストは、日産自動車のウェブサイトによると、月800km乗った場合にEVは3,613円、ガソリン車は5,760円と、2/3以下であることが紹介されている。
環境性能では、たしかに日本では発電の段階でも多くのCO2を排出するが、どこで排気ガスや音を出すかということまで含めて考えれば、都市内の移動をEVにシフトするのは理にかなったことだ。
すでに物流業界は、その特性をいち早く理解して動き始めている。日本郵便は三菱自動車の軽ワンボックスEVやホンダの電動バイクを導入し、佐川急便は外国製の電動トラックを宅配用として入れることにした。
バスにも同様の動きはある。筆者がアドバイザーを務める企業が、長野県の自治体で進める交通改革事業もその1つで、電動バスが電動カートとともに市内輸送を担当している。
ではトヨタはどうか。14日に発表されたコンセプトカーは、コンパクトカーからスポーツカーまでありとあらゆるジャンルがあり、多くはマイカーとしての利用を想定した車種だったが、筆者は右奥に並んでいた2台、「Micro Box(マイクロボックス)」と「Mid Box(ミッドボックス)」にも注目した。
この2台に関しては、「買う」のではなく「使う」、つまりモビリティサービスとしての使用を前提としたデザインになっていたからだ。といっても、トヨタがモビリティサービスを前提としたEVを世に問うのは、これが初めてではない。
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