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  • 2019/12/24 掲載

電力の常識が変わる。NTT「“独自”電力網に6,000億円投資」は何を意味する?

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NTTが全国に保有する自社ビルを活用し、蓄電池や太陽光パネルを使った電力供給サービスに乗り出すことが明らかとなった。近年、台風による停電など、自然災害によるインフラ被害が大きな問題となっているが、バッテリー技術の飛躍的な向上によって、分散型電力システムに対するフィジビリティ(実現可能性)が高まっている。電力は地域電力会社が独占的に供給するものという常識を根本的に変える必要がありそうだ。
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NTTが独自電力サービスに本格参入。電力のパラダイムシフトが始まる
(Photo/Getty Images)

全国7300カ所、旧電話局もフル活用

 NTTは2019年3月、太陽光パネルなどを使った発電システムの構築や地域電力供給、EV(電気自動車)を活用した給電サービスなど、各種スマートエネルギー事業を推進すると発表した。11月には、災害時に地域の工場や病院などに電力を供給する新事業に6,000億円を投じる方針も明らかにしている。

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NTTだからできる新電力ビジネスとは?
(Photo/Getty Images)

 NTTはもともと官営の電話事業者であり、民営化前は電電公社という名称だった。全国に多くの施設を自社保有しており、設備面では一般的な民間企業を圧倒している。

 傘下の地域電話会社であるNTT東日本が保有する建物の資産額(減価償却後)は3,900億円となっており、累計投資額は1兆5,000億円近くに達する。NTT西日本もほぼ似たような状況となっており、累計で1兆4,000億円の資金を建物に投じてきた。

 特に各地域拠点にある旧電話局は、クロスバー交換機など、重量物を収容する必要があったことから堅牢な構造となっている。

 現在では、固定電話回線網はIP化されているため、同じ建物にはルーターやスイッチ類が収容されているが、かつての交換機と比較すると、必要なスペースは圧倒的に小さい。このため、NTTが保有している施設には多くの空きスペースが存在している。

 電話局などの局舎以外にも、NTTグループは数多くの不動産を所有している。子会社のNTT都市開発は、アーバンネットというブランド名で全国にオフィスビルを展開しており、同社が保有する投資用不動産は8,000億円に達する。

 建物の総数はグループ全体で7300カ所にのぼるとされており、新しい電力ビジネスは、これらの不動産のスペースを活用して実施される。

めざましい進歩を遂げたリチウムイオン電池

 これまで重要なインフラを担う施設には、非常用のディーゼル発電機などが設置されていた。しかし、ディーゼル発電機はメンテナンスにかなりのコストと手間がかかることに加え、燃料の保管など制約条件が多く、一般的なオフィスビルに普及させるのは難しかった。また、蓄電池を使って電力を保存するというやり方についても、コストや安全性の面から、実用には耐えないとの認識が一般的だった。

 だが、近年急速に進んだリチウムイオン電池の技術革新が電力に関する環境を一変しつつある。


 スマホに装着されているリチウムイオン電池は、数千ミリアンペア時程度の容量があり、かなりのエネルギー量である。一昔前までリチウムイオン電池には発火や爆発の可能性があるとされており、実際、有力メーカーの電池工場が爆発して大火災になるという事故もあった。

 だが、リチウムイオン電池の安全性は飛躍的に向上しており、現在では、スマホを常時、身につけていることに関して危険視する人はほとんどいない。

 さらに、EVシフトが本格化してきたことで、大容量のリチウムイオン電池が大量生産されるようになり、事故のリスクがある自動車への搭載も当然視されるようになってきた。ここまで技術革新とコストダウンが進めば、商業用や家庭用の蓄電についても、実現可能になったとみて良い。

 NTTでは、施設の空きスペースに蓄電池を装備し、非常時には近隣の病院などに電力を供給できるようにするという。さらに、蓄電だけでなく、施設に太陽光パネルなどを設置して発電も行うと同時に、同社が保有する1万台の社用車をEV化する計画も進めている。EVに搭載されているバッテリーは、商用電源としても利用できるので、大規模停電時にはNTTの車両が近隣地区に出向き、電力を届けることになるだろう。

【次ページ】NTTが電力サービスに乗り出した背景とは? 電力は集中型から分散型へ
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