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  • 2019/07/02 掲載

IoTの本格導入が進まない理由は“2つの課題”があるからだ

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製造業や流通業、建設業などさまざまな業種・業界の企業がIoTシステムを構築し、新しいビジネスを展開し始めている。IoTシステムを実装するためには、さまざまな技術が必要になる。特に「ネットワークの品質」と「ネットワークセキュリティ」はシステム導入効果を左右する重要な要素であり、かつ大規模なIoTシステム導入を阻む課題にもなっている。そうした課題をどう解決していけばいいのか、本稿ではそのヒントを提示する。
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IoTが進まないのには理由があった
(Photo/Getty Images)

大規模IoT導入を阻む2つの課題

 クラウドコンピューティングやネットワーク通信技術の発達、精密なセンサー機器を活用して大規模なIoTシステムを構築し、活用する機運が高まっている。これにより、デジタルツインやプラントデータアナリティクスが可能となり、企業利益を大幅に改善することが期待されている。しかし、実際に導入する際には2つの課題がある。「ネットワークキャパシティ」「ネットワークセキュリティ」だ。

・ネットワークキャパシティ

 ネットワーク通信技術が発達したとはいえ、既存の中央集権型のシステム管理だけではネットワーク負荷の増大、応答遅延のリスクがある。これらのリスクは作業進捗に影響を与えるだけでなく、システムの脆弱性を生み出し、サイバー攻撃のリスクを増大させることにも繋がりかねない。

 その対応策として「分散型ネットワーク」の重要性が増している。ネットワーク負荷を分散させ、自律的に制御することで、トラフィックの混雑解消や通信経路の最適化を実現できる。

・ネットワークセキュリティ

 IoTネットワークにおいてセキュリティの問題は避けては通れない。IoTデバイスはその数の多さゆえに企業の監視運用システムに完全な形で組み込まれてないこともあり、セキュリティガードが薄いケースがある。

 ネットワークが大規模であるゆえに、セキュリティイシューが発生すると、重大な損失を生む危険性がある。とりわけ、デジタルツインやプラントデータアナリティクスの活用によって、受送信されるデータの量や重要度が向上していくにつれ、転送中のデータの内容を保護する重要性も上昇する。その保護に使われるのが「暗号化技術」である。

 どうすればこの2つの課題を解決できるのか。答えは「自律的分散制御」と「暗号化技術」だ。

ネットワークキャパシティの課題はエッジで解決

 ネットワークキャパシティの課題を解決するには、ネットワークとIoTセンサーを通じて各産業機械を適切にマネジメントすることが重要となる。こうしたマネジメントをするための手法はいくつかあるが、クラウドコンピューティング(クラウド)はその1つだ。

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 クラウドには工場に配置されたセンサー端末から送信されたデータが集積し、工場の生産工程を細部まで可視化できるようになった。これは初期のデジタルツインでもあり、集積データを基に可視化されたバーチャル工場を基に、管理層が最終判断(フィードバック)を行うことが多かった。

 しかし、最近では収集可能データが莫大になり、人間では判断が追いつかないケースが出てきた。そこで、人間を介さずに、コンピューターが直接データ送信元である機械にフィードバックを行い、制御しようという機運が高まった。ただし、これをクラウドコンピューティングの枠組みの中だけで実現しようとした場合、データ受信・情報処理・フィードバックの一連のプロセスの中で時間遅延が発生する懸念がある。

 そこで登場したのが、エッジコンピューティングである。エッジコンピューティングでは、情報処理システムの一部をあらかじめ末端(エッジ)に位置する端末機器に組み込むことで、クラウドやネットワークにかかる負荷を分散させる。

 この技術においては、あらかじめエッジにあるセンサー機器に「ミニサーバ機能」を持たせる。ミニサーバ上で情報処理プログラム(エージェント)を作動させ、必要な情報だけクラウドに送信する。つまり、自律的分散制御を行うのだ。

 この仕組みにより、すべてのデータをクラウドに送信する必要がなくなり、遅延が大幅に改善される。工場管理システムの末端では、エッジに位置するコンピューター端末の中にいるエージェントがリアルタイムフィードバックを実施し、ローカル環境に適した最適化を各所で行うようになった。

エッジコンピューティングでマイクロチップ開発競争激化

 こうした自律型分散制御の持つメリットには、多くの企業が期待の眼を向けており、エッジコンピューティング向けマイクロチップの開発を加速させている。その代表例としては、インテルやサムソン、AMDなどがある。

 端末機器に高性能チップを導入しようとした場合、何よりもサイズの問題を克服する必要がある。インテルやサムソン、AMDなどは10ナノメートル以下という極小単位(プロセス)で構成される集積回路の開発でしのぎを削っている。

 加えて、グーグルもエッジ上で機械学習を行うための専用チップとして「Edge TPU」を開発し、エッジコンピューティング開発に近年参入してきている。今後もより多くの先端企業の研究開発がエッジコンピューティングのトレンドを牽引し、自律型分散制御に基づいたIoTネットワークの導入が徐々に本格化するだろう。

【次ページ】ネットワークセキュリティの課題は乱数生成器で解決
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