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マクドナルドの業績が急回復したことが話題になっている。期限切れ鶏肉や異物混入問題の発生から約3年が経過し、同社はかつての勢いを取り戻しつつある。だが、同社が今後も継続的に業容を拡大できるかというと、それは何とも言えない。これまでの業績推移を見ると、同社の売上高には大きな壁が存在しているからである。
状況を判断するには全店売上高をチェックする必要がある
日本マクドナルドホールディングスの2016年12月期の決算は、売上高が前年比20%増の2,266億円、純利益は53億円の黒字だった。直近の決算である2017年1~6月期についても、売上高は15%増で、約107億円の純利益を確保した。通期の純利益予想は200億円となっており、最高益を更新する可能性が高まっている。大幅な赤字決算だった昨年とは比較にならない状況だ。
同社は2014年に消費期限切れ鶏肉や異物混入などのトラブルが相次ぎ、企業イメージはガタ落ちになってしまった。業績も急下降し、2014年12月期は218億円の最終赤字に転落。翌年の2015年12月には赤字幅が349億円に達した。今期は、売上高こそ全盛期を超えないものの、利益体質への転換を果たしており、数字上は完全復活したように見える。
ただ注意しなければならないのは、マクドナルドはフランチャイズ(FC)制度を採用しており、直営店を除くと、日本マクドナルドの業績とマクドナルド各店舗の業績は一致しない。もちろん各店舗が儲からなければ、最終的にはマクドナルド本体も儲からないが、ある程度までならフラチャイズ契約を操作することで、本体の利益をかさ上げすることも不可能ではない。
マクドナルドが本当に回復を果たしたのかについては、業績に加えて、各店舗の業績がどうなっているのかについても知る必要がある。
マクドナルド全体の動向を示す最良の指標は全店売上高である。多くの客が入店し、たくさんの商品を買ってもらわないことには飲食店のビジネスは成り立たない。その意味で全店売上高という指標は単純ではあるものの、経営状況を的確に反映する。
下の図は、マクドナルド全店の売上高の推移を示したグラフである。期限切れ鶏肉問題などが発生した2014年度の売上高は4,463億円だったが、翌年の2015年度には客足が大幅に減って3,765億円にまで落ち込んだ。だが2016年度は4,384億円と2014年の水準まで戻っている。
客数の増加に加えて単価も上昇している
もっとも、同社の業績がピークに達していた2010年度には全店売上高は5,400億円を突破していた。当時は原田泳幸前CEO(最高経営責任者)による拡大戦略の最中であり、当時と比較すれば売上高そのものは増えていない。だが注目すべきなのは1店舗あたりの売上高である。
全店売上高がピークに達する前年(2009年度)は、直営店舗が1705店舗、フランチャイズ店舗が2010店舗と同社はかなりの大所帯となっていた。だが1店舗あたりの売上高は約1億4,300万円とそれほど大きな値ではない。翌年に限っては店舗数を大幅に減らしたことで、1店舗あたりの売上高が増加したが、その後は、一貫して店舗あたりの売上高が下がり続けてきた。店舗の基礎的な収益力が低下したことが最大の原因である。
原田氏の退任後、後任のサラ・カサノバCEOは収益力の低い店舗を整理し、経営のスリム化を進めた。その結果、店舗数は直営店が939、フランチャイズ店が1972、全体では2911店舗にまで減少した。店舗数が少なくなれば不採算店舗の比率も低下するので、1店舗あたりの売上高は増加する。
この改革によって、2015年12月に1億2,740万円まで下がっていた店舗あたりの売上高は1億5,000万円まで急回復した。2017年に入ってからは、全店売上高がほぼ毎月、前年同月比で10%以上という高い伸びを示しており、この勢いはまだまだ続きそうだ。
客数の伸びに加えて単価の上昇も進んでいる。同社は東西愛称対決キャンペーンなど各種の販促活動を実施した際、比較的高めの単価設定を行って、客単価の向上を試みている。
もしマクドナルドに対する人気が引き続き低迷していれば、高い価格帯の商品が多いと客足が鈍ってしまう。高めの価格設定でも客数が減らなかったということは、同社に対するマイナス・イメージはかなり薄れたとみてよい。一連の状況を考えると、今回の復活は見せかけではなく、ホンモノだと思ってよいだろう。
【次ページ】マクドナルドは今後も業績を拡大できるのか
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