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  • 2017/10/03 掲載

地方自治体で非正規職員が急増、「絶望的な格差」は法改正で解消できない

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全国の地方自治体で非正規職員が急増している。総務省が2016年4月現在で実態調査したところ、都道府県、市区町村を合わせて64万人に達し、2005年に比べて4割も増えていた。退職者補充を非正規で対応してきた結果で、自治体が官製ワーキングプアを大量生産している格好。地方自治総合研究所の上林陽治研究員は「このままでは雇用の劣化が行政サービスの低下を招きかねない」と警鐘を鳴らす。5月に待遇改善を求めて地方自治法、地方公務員法が改正されたが、問題解決には悲観的な見方が出ている。
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執務中の鳴門市人事課の職員。鳴門市に限らず、非正規職員が占める割合はどの自治体も増える一方だ
(写真:筆者撮影)


財政難で正規を非正規に置き換え、自治体も苦しい対応

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 鳴門海峡の渦潮で知られる徳島県鳴門市。3階建ての市役所本庁舎には市民課や税務課、財政課、総務課など市の各課が机を並べているが、市役所で働く職員の3割が非正規だ。中でも窓口対応が多い部署ほど非正規が多くなっている。

 市は公営ギャンブル収入で豊かな財政を誇った時代もあったが、行政組織の肥大が財政を圧迫するなどし、財政健全化を推進してきた。その結果、退職した正規を非正規に置き換え、人件費を抑えるうちに非正規比率が高まった。2005年の14%が2016年で31%に上昇している。

 31%という数字は全国の政令市を除く市部で平均的だが、非正規の増加に世間の目は厳しさを増している。市人事課は「今までと同じやり方は難しくなった。国の方針に従い、見直さざるを得ない」と対応に苦慮している。

 徳島県市町村課は県内24市町村で働く非正規数を明らかにした。それによると、2016年は3,449人で、正規は8,947人。非正規が全体の28%を占めている。2005年の調査に比べ、正規が2,000人ほど減る一方、非正規は900人余り増えた。非正規比率も9ポイント上昇している。

 市町村別で最も非正規比率が高いのは、徳島市のベッドタウンとして人口増加が続く北島町の45%。ほぼ2人に1人が非正規で、北島町総務課は「人員をぎりぎりまで削減している。保育所や給食センターなどを直営で維持し、行政サービスを低下させないためには、非正規を増やさざるを得なかった」と苦しい胸の内を打ち明けた。

 沖縄県は県議会の一般質問に答える形で県と市町村の非正規数を公表した。答弁によると、2016年で県関係の非正規は6,587人で、全体の21%を占めた。2011年度から20~21%台で推移しているという。これに対し、市町村の非正規は8,712人に達し、全体の42%に及んだ。2012年の39%から毎年、少しずつ増加を重ねている。

 沖縄は県、市町村とも非正規率の高い地域で、特に目立つ職種は公立幼稚園教諭の62%。ほかに、市町村に配属される子ども貧困対策支援員は全員が非正規だ。

 県内自治体の人事担当者からは「交付税を減らし、人件費を抑えるよう指導したのは国。それなのに、いまさら非正規を見直せといわれても財源がない。国に振り回されっぱなしだ」と恨み節も聞こえてきた。

正規と非正規の給与に「絶望的な格差」

 総務省によると、2016年の全国自治体の非正規は2012年の前回調査から4万4,000人余り、7.4%増えた。過去3回の調査では、2005年が46万人、2008年が50万人、2012年が60万人だっただけに、右肩上がりの急増ぶり。これに対し、正規は274万人だから、いまや地方公務員の5人に1人を非正規が占める計算になる。

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地方自治体の臨時・非常勤職員数の推移

 非正規は女性が75%と圧倒的に多い。職種は事務補助から保育士、図書館員、教員・講師まで広範囲にわたる。職種別で最も人数が多いのは事務補助の10万人、教員・講師の9万人、保育士6万人。特に教員・講師は2005年からの11年間でほぼ倍増している。

全国非正規地方公務員の内訳(単位・人)
職種2005年2008年2012年2016年
一般事務職員112,315119,810149,562159,559
技術職員 7,147 7,388 8,855 9,316
医師 9,955 9,335 8,743 8,138
医療技術員 7,216 8,637 10,969 11,851
看護師など 21,312 23,477 25,947 28,043
保育士など 78,261 89,563103,428 99,958
給食調理員 35,313 37,305 39,294 37,985
技能労務職員 57,926 54,018 59,254 56,853
教員・講師 46,530 57,327 78,937 92,494
その他 79,865 92,442113,988138,934
出典:各年の総務省「地方公務員の臨時・非常勤職員に関する実態調査」から筆者作成

 自治体全体の非正規比率19%は国の17%をわずかに上回る程度だが、政令市を除く市区は32%、町村は35%と高い。小規模自治体には50%を超すところもあり、全国トップの長崎県佐々町は66%に達している。

 2005年からの11年間で正規は30万人も減った。逆に非正規は19万人近く増えている。正規の減少を非正規が補っているのが実態だ。正規と同様にフルタイムで働き、正規と同等の責任を負う職員も少なくない。

 それなのに、非正規の待遇は極端に低いまま。臨時の労働の対価として報酬が支払われ、ほとんどの自治体は手当などを支給していない。上林研究員は総務省のデータから非正規一般事務職の平均年収を162~207万円と推定している。

 正規の平均年収は660万円程度。非正規の事務職は休みなくフルに働いても正規の3分の1以下の年収しか得られない。まさに絶望的な格差が存在する。

 その代わり、自治体の出費する人件費は大幅に抑えられる。自治体は2000年代前半、小泉内閣の三位一体改革で地方交付税や補助金が削減され、財政が火の車に陥った。その一方で行政サービスは拡大している。退職者の補充を非正規で対応することで人件費を抑えながら、行政サービスをどうにか維持しているわけだ。

 上林研究員は「非正規の賃金を外注より安く上がるように抑えているのが実情。このため、自治体は非正規の増加を止められなくなっている」とみている。

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