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量的緩和策による超低金利と人口減少のダブルパンチで、地方銀行が苦しんでいる。金融庁は地方銀行に対し、経営改革を強く迫るなど異例の措置を行っているが、効果はいまひとつだ。ひとくちに地方銀行といっても状況はさまざまであり、地域の状況によって処方箋は異なる。各行の経営状況から生き残りの方策について探った。
高齢化と人口減少でヒエラルキーは崩壊
日本の銀行は、全国展開を行うメガバンクと地域限定でサービスを提供する地方銀行に大別されている。さらに地域密着型の金融機関として、より狭いエリアで小規模に事業を展開する信用金庫や信用組合という組織がある。
大企業の多くが首都圏など大都市圏に集中していることから、実質的にはメガバンクは大企業を中心に取引を行い、地方銀行は各地域にある中堅中小企業と取引を行うという形にならざるを得ない。日本におけるメガバンクと地方銀行の違いは、エリアだけではなく融資先の違いという棲み分けでもあった。
ところが近年、高齢化とそれに続く人口減少の影響から、メガバンクを頂点にした従来型ヒエラルキーの維持が難しくなっている。人口減少は、単純に人の数が減るだけではなく、生活拠点の移動を伴う。都市部への人口集約が進むことで、エリアによって棲み分けが出来ていた金融機関のバランスが崩れてしまうのだ。
このところ地方銀行が相次いで経営統合を発表しているのは、こうした事態への対応策ということになる。だが、地方銀行はむやみに規模を追求すればよいというものではない。異なる商圏で活動していた地方銀行を単純に合併させてもコスト削減効果はたかが知れているからである。おのずと再編の選択肢は絞られてくる。
結局のところ地方銀行は地域の特性にフォーカスした経営を模索するしか方法はなく、金融庁もこうした経営改革を強く促しているが状況は厳しい。低金利と人口減少のダブルパンチで地方銀行が打つ手は限られているというのが現実だ。
そのような中にあっても、他行と比較して高い収益を確保している地方銀行も存在する。下図は業務純益という指標から地方銀行の業績を比較し、高い収益を上げている10行を選び出したものである。業務純益は銀行独特の経営指標で、銀行が融資などの本業で得た利益のこと指す。一般企業でいうところの営業利益に近いものと思えばよいだろう。
銀行は預金という大きな資産を運用するビジネスなので、総資産がどれだけの利益を生み出しているのかがポイントとなる。ここでは総資産に対する業務純益の割合(総資産業務純益率)について評価を行った。
単純に規模が大きくなればよいというわけではない
2017年3月期における地方銀行(地方銀行協会加盟行)の業務純益率の平均値(単純平均)は0.3%だったので、この数字がひとつの目安となる。評価を行った64行のうち、0.3%以上だったのは全体の4割だが、上位10社については、ほとんどが0.4%以上となっており高収益であることが分かる。同じ地銀といっても収益力にはかなりの差があるのだ。
まず目に付くのは、福岡銀行、横浜銀行、千葉銀行など資産規模の大きい銀行である。地方銀行の中で資産規模がもっとも大きい横浜銀行は約850億円の業務純益を出しており他行を圧倒している。同行の総資産(単体)は16兆円を突破しており、平均的な地方銀行の3倍の規模を持っている。
しかも同行は2016年4月に第二地方銀行の東日本銀行と経営統合し、持ち株会社であるコンコルディア・フィナンシャルグループを設立した。東日本銀行の資産規模は2兆円強なので、連結ではさらに資産規模が大きくなる。千葉銀行と福岡銀行も資産規模が14兆円ほどあり、地方銀行としてはかなり巨大な部類に入る。
規模の大きい銀行は、システム開発や店舗運営などでボリューム・メリットを生かすことができるので、経営効率が高くなる。このところ地方銀行の再編が相次いでいる理由は、規模の追求が主な目的だが、横浜銀行や千葉銀行のレベルまで経営規模が大きくなればそれでよいのかというと、必ずしもそうではない。その理由は、収益力というものは営業活動を展開するエリアに大きく依存するからである。
横浜銀行と千葉銀行は首都圏が営業基盤であり、当然のことながらこのエリアには優良企業がたくさんある。横浜に本社を置く上場企業も多く、横浜銀行は大企業とも取引することができるので、経営環境はメガバンクに近くなる。福岡も地方都市としては別格の存在であり、商圏の規模がそもそも大きい。
つまり、これらの優良地方銀行は規模の大きさを追求したというよりは、商圏が大きいので、結果的に資産規模が大きくなっただけであり、今後の地銀経営のモデルにはなりにくい。一般的な地方都市では、仮に経営統合を進めたとしても、首都圏のような商圏は存在しないので、収益力はそれほど高まらないだろう。
【次ページ】阿波銀行は融資を絞り首都圏へも積極的に展開
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