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  • 2017/02/08 掲載

イーロン・マスクの「新たなイノベーション」、EVや宇宙開発の次は何か

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テスラCEO、イーロン・マスク氏が1月に入り、次々と話題を振りまいている。トランプ新大統領のビジネス戦略アドバイザーにも就任、向かうところ敵なしといった構えのマスク氏だが、現在真剣に取り組んでいるのは大都市の渋滞解消のための秘策だという。マスク氏の持論は「ビルが高層化して三次元(3D)化しているのであれば、道路もまた3Dであるべき」というものだ。
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テスラ CEO イーロン・マスク氏


渋滞緩和で注目を集める「トンネル構想」

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 電気自動車(EV)を開発・販売するテスラ(テスラモーターズから改名)のCEOで、宇宙開発を行うスペースXのCEOも兼ねるイーロン・マスク氏の身辺が慌しい。次々に斬新なビジネスアイデアを提唱し、実現して来たアイデアマン、現代のトーマス・エジソンとも言われる同氏だが、昨年末からトランプ新政権のビジネス戦略アドバイザーの地位についたばかりではなく、ビジネス上の話題も振りまいている。

 まず、ロサンゼルス市で注目を浴びているのが「トンネル構想」だ。これは自身が昨年12月17日にツイッターで「交通渋滞にはイライラさせられる。トンネル削岩機を作り、掘り始めるつもりだ」と呟き、さまざまな憶測を呼んでいたが、2月4日にはトンネルや削岩機の画像も公開した。



 マスク氏の発案でチューブ内の高速移動が可能な乗り物「ハイパーループ」が現在、2つの会社によって実現を目指されているが、そのような地下のチューブを使った移動方法なのか。あるいはやはりマスク氏が以前に呟いた「自動運転の乗合バス網を作る」という方法なのか、それとも地下に高速道路網を新たに建設しようというのか。

画像
ハイパーループ


テスラが進めるHyperloopのPOC(概念実証)


ビルが3Dなら道路も3Dであるべき

 ロサンゼルス市には地下鉄がほぼ存在しない。これまでも地下鉄網を作ろう、という試みはあったが、建設、運営コストに見合わない、として実現に至っていない。地上には5車線の高速道路網があるが、常に渋滞しているのが現状だ。

 しかしマスク氏は本気で地下の交通網を模索しているようで、1月最後の週末に自らが率いる宇宙航空事業、スペースX社(ロサンゼルス郊外)の敷地内に実験的にトンネルを掘り始めた。

 今回の掘削は「試験的なもの」とされ、規模も深さ約4.5メートル、幅約9メートル、全長約15メートルだ。まだ交通網としての構想段階ではなく、あくまで「従来のトンネル掘削をどれだけスピードアップできるか」という実験にとどまっている、と本人は強調している。

 マスク氏が展開するのは「人々は高層ビルで働いている。ビルは三次元(3D)だ。しかしその人々が通勤に用いる道路は平面(2D)で、キャパシティオーバーのため機能しない。道路もまた3Dであるべき」という持論だ。

 マスク氏は少なくともスペースX本社のある場所から、ロサンゼルス空港までを結ぶ地下交通網を作りたい意向だが、実現には市の認可などさまざまな手続きが必要になる。

 そもそもロサンゼルス郡交通局が運営するメトロシステムでさえ、地下鉄は地域住民の反対やコストによって諦めざるを得なかった。一企業、いや一個人がこうした現状にどう向き合うのか。

ギガファクトリーの手腕に期待の声

 一方でマスク氏の手腕には期待の声もある。たとえば1月31日、テスラ社はカリフォルニア州オンタリオで新しい蓄電プラントをオープンさせた。

 それぞれが198個のパワーパック、24のインバーターを用いて10MWを蓄電するユニットを2つ連結させ、合計で20MWの蓄電能力を備えたプラントは全米でも最大級だ。電力会社、エジソンと提携し、電力のオーバーフローやアンダーフローに対応するグリッドとして機能する。

 この施設だけでも十分にニュースだが、驚くべきはテスラがこの施設を実質5ヶ月という短期間で完成させた、という点だ。プロジェクトを担当したテスラ社のCTO、J.B.ストローベル氏は「パワーパックはすべてネバダ州にあるテスラのバッテリー工場、ギガファクトリーで生産したもので、産業用パワーパックは基本的にはテスラがすでに販売している家庭用蓄電システム、パワーウォールの大規模バージョンだ」とオープニングセレモニーで語った。

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テスラ CTO J.B.ストローベル氏


 今回のプラント建設が急がれたのには理由がある。ロサンゼルス郊外のアリソ・キャニオンで昨年5月、サザン・カリフォルニア・ガスが運営する天然ガス井戸から大規模なガス漏れ事故が起きた。この事故を受け天然ガス貯蔵施設が一時的に閉鎖され、天然ガスを燃料とする電力不足が懸念されたのだ。

【次ページ】イーロン・マスク氏は何を目指すのか
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