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- 2017/03/31 掲載
テスラ、BMWら海外自動車メーカーの「次世代EV開発戦略とリチウムイオン電池の未来」
航続距離の伸長が次世代EVシフトの原動力に
欧州の自動車メーカーが近年EVやPHVに注力し始めた背景のひとつには、環境規制の強化という要因がある。欧州では2021年にCO2排出量を走行距離1kmあたり95グラム以下に規制される。2015年の同規制値は120グラムで、わずか6年間で20%を超える削減が求められるのだ。自動車メーカーにとって、もはやEVやPHVに向かう以外に打つ手はないといっても過言ではない。実際、同社の「i3」はリチウムイオン電池技術の改良により2016年に航続距離390kmを達成。さらに2019年に販売開始を予定している「i5」では航続距離400km超への伸長を目指しており、「今後あらゆるセグメントでxEVのラインナップを強化していく」と、萩原氏は今後の市場を見据えた意気込みを示す。
エネルギー密度向上への戦略として全方位の研究開発を推進
まず購買判断において、先述の航続距離もさることながらコストが大きな比重を占めるのは言うまでもない。またユーザーに高品質の体験を提供するためには、低温域も含めた幅広いレンジでの高出力、急速充電、快適な運転環境などを実現する必要がある。そして必須要件となるのが安全性である。
さらに、そこから見えてくるのがリチウムイオン電池の性能向上に向けた課題である。萩原氏は、「リチウムイオン電池のエネルギー密度向上への戦略として、活物質からバッテリーパック設計まで全方位で研究開発を進めている」と言う。
たとえばリチウムイオン電池の正極用材料の改良を進めることで、段階的にエネルギー密度を現状から85%向上させることを目指している。そのほか低温域における30%以上の出力性能向上、「10分間で0-80%チャージ」というユーザーのリクエストに応えられる急速充電の実現、電子・機械・化学・機能のあらゆる側面からのバッテリーシステムとしての安全性の確保、エネルギーあたりの価格の低減なども大きなテーマだ。
将来的なステップとしては全固体電池も選択肢に入ってくることが予想されるが、量産化にいたるまでの道程はまだまだ険しいのが現実だ。それだけに「少なくとも今後10年は、リチウムイオン電池がxEVの中心技術であり続ける」と萩原氏は見ており、「材料開発が成功の鍵を握っている」と語った。
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