• 会員限定
  • 2016/10/26 掲載

一般企業のリーダーは「お気持ちを表明」するだけでは無能である

  • icon-mail
  • icon-print
  • icon-hatena
  • icon-line
  • icon-close-snsbtns
会員になると、いいね!でマイページに保存できます。
何か実現したいことがあったとき、「実現に向けたアクションを取ること」によって「本当にそれが実現する」かどうかというと、そうとは限らない。売上をあげようと指示を出したら、自動的にモチベーションがあがって成果が出るのであれば、これほど楽な話はない。先般の「天皇陛下のお気持ちの表明」に関する報道は、日本の企業にとって重要な問題を投げかけている。
photo
「お気持ちを表明」するしかない状況で、リーダーは何をすべきか

「お気持ちを表明」するしかない状況の歯がゆさ

 天皇陛下による「生前退位の意向がにじむお気持ち」についてのニュースがつい先日報じられ、世間の関心を集めている。

 この報道を受けて、多くの国民に去来したのは「『意向がにじむお気持ち』の表明とは一体何なのか?」という素朴な疑問ではなかっただろうか。なぜ、これが「意向の表明」ではなく、「意向がにじむお気持ちの表明」という回りくどい言い回しが必要とされたのか。

 少し詳しい報道に目を通せば、これは、退位についての規定なるものが憲法にも皇室典範にも明示されていない、という事情によるものだということはすぐわかる。

 周知の通り、天皇は、憲法のもと、国政に関する機能を持っていない。持っていなければ、規定そのものに対して直接の影響を与える政治的発言は、許されていない。だがしかし、強い思いでこれを実現したい。だからこそ「お気持ちの表明」という形式が選択されたのであった。

 単純素朴に考えれば、生前退位そのものについては、そうすべき必然性があって、筋も通っている話に思える。ならば当事者の意向通りにすればいいのに、という話であって、「政治って、回りくどくて歯がゆいものだな」と感じた人も多いのではないだろうか。

 しかし、そうは問屋がおろさない。なぜならば制度というものは、ひとつの事例を認めるということが、重大な意味を持つことがあるからだ、というのがその論である。Aという事例を認めたということが、いつしかBという事例を認める根拠となる可能性がある。これがいつの日か、意図して逆用され、本来の趣旨とまったく反する制度運用が実現されてしまうかもしれない。

 そこまで考えると、なるほど、だからこその「意向がにじむお気持ちの表明」だったのか、と不思議な感動を覚えるものである。

企業のリーダーは「お気持ちを表明」しただけで成果は出せない

関連記事
 天皇陛下の生前退位は、憲法という絶対的なルールを変えるという大きなハードルがあり、しかもそれを実現するために自ら行動できない歯がゆさがにじみ出ている。

 この「実現したいことが実現できない状況」というのは、一般企業においても存在する問題である。しかし明らかに違う点は、その実現のために、ほとんどの場合が自らのリーダーシップを活かして行動できるという点だ。裏を返せば、企業のリーダーは「お気持ちを表明」しただけで成果を出せるわけではないのだ。

 例えば、企業活動における問題の最も本質的な形式とは、売上をいかに最大化し、コストをいかに最小化するか、というものである。企業のトップの仕事とは、これを実現するための諸活動であるといっても差し支えない。

 企業は資本の回転によって存続する。まず投資があって、生産がされ、販売によって利益が生まれ、それが再投資される。この循環によって経済が成立する。こう単純に言ってしまえば、極めてシンプルな話のように見えるが、企業活動というものは、実に様々な矛盾やトレードオフを抱えて運用されている。

 もし、誰かが「売上を増やしたまえ」と指示を出せば、勝手に営業チームの技術なりモチベーションが向上し、売上増加する。このような話であれば簡単なことだが、もちろんそんなことは夢物語の世界だ。売上を増やしたまえ要求があった場合に、「いかにして実現するか」という手段を考えるのが企業のトップあるいはリーダーの仕事なのである。

 手段を考えるのは、具体的な作業であるが、具体的なだけに、選択肢が非常に幅広い。有能なマネージャーを外部から招へいするのか、広告宣伝費を増やすのか、メンバーに対するトレーニングをテコ入れするのか。現在の課題を整理するために調査は必要ないのか。調査をするとしたら、社内プロジェクトで実現するか、または外部からコンサルティングを受けるか。必要な措置は、それら選択肢の一部で十分なのか、全部が必要なのか。

 もしうまくやってプランを確定させたとしても、そこからそれを実行するのもまた至難の業である。

 有能なマネージャーは、採用しようにもなかなか見つからない。広告宣伝費を増やしてみたものの、特に効果は目に見えない。トレーニングの結果、何かが変化したようには思えない。ああじゃないこうじゃないと試行錯誤をしているうちに、時間だけが無情に過ぎていく。

【次ページ】「実現したいことを本当に実現する」ためのリーダー論
関連タグ タグをフォローすると最新情報が表示されます
あなたの投稿

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

必要な会員情報が不足しています。

必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。

  • 記事閲覧数の制限なし

  • [お気に入り]ボタンでの記事取り置き

  • タグフォロー

  • おすすめコンテンツの表示

詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!

詳細はこちら 詳細情報の入力へ進む
報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます