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  • 2016/07/21 掲載

たばこメーカーの世界ランキング:海外攻めるJT、主戦場は「新興国」「電子」「大麻」

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今年6月、マイクロソフトが大麻(マリファナ)ビジネスを支援すると報じられ、大きな話題になった。日本では信じがたいが、欧州ではもともと一部の国で取引が制限されておらず、米国でも2014年から合法化を進める州が増えている(マイクロソフトの本拠地のワシントン州では大麻は合法)。この動きの影響をもろに受けるのが「たばこ産業」だろう。世界のたばこ産業をリードしてきたのは、インペリアル、フィリップ・モリス、日本たばこ産業(JT)といった日米欧の巨大たばこメーカーだ。しかし、健康志向の高まりや少子化などによって、先進国のたばこ市場は縮小傾向にある。そのため、日米欧メーカーはこぞって、M&Aなどをテコに経営規模を拡大している。
執筆:野澤 正毅

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たばこ産業の把握は特有の難しさがある

たばこビジネスはどのように生まれたのか

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 たばこ産業をほかの産業と同列に論じるのは、難しい問題である。たばこに対する批判も強いため、そもそもたばこ産業を振興すべきかどうか、にわかには断じることができないからだ。とはいえ、たとえば、日本たばこ協会によれば、2015年度の紙巻きたばこ販売代金だけでも約4兆円に達しており、たばこが一大産業を形成していることも、まぎれもない事実である(本稿では、葉タバコの加工品を「たばこ」と称する)。

 たばこの原料である葉タバコはナス科の植物で現在、最も広く栽培されている「ニコチアナ・タバカム」という品種は、南米原産だと考えられている。アメリカ大陸の原住民の間では古来、たばこは宗教の祭礼用、嗜好品として珍重されていた。

 15世紀末、アメリカ大陸を発見したコロンブスは、ほかの珍しい産物とともにたばこをスペインに持ち帰った。これが、たばこが全世界に普及するきっかけとなった。日本には16世紀末、南蛮貿易によって欧州から伝来し、全国に喫煙の風習が広まったのである。ちなみに、「たばこ」はもともと外来語で、英語でも「Tabacco(タバコ)」である。

 たばこには、嗅ぎたばこ、噛みたばこなどもあるが、一般的に使用されているのは喫煙用たばこだ。喫煙用たばこには、パイプ用の刻みたばこ、葉巻たばこなどもあるが、ポピュラーなのは紙巻きたばこ(シガレット)。手軽に使える紙巻きたばこは、19世紀後半にたばこの自動紙巻き装置が考案されてから大量生産・低コスト化が実現でき、爆発的に普及した。さらに、フィルターによってタールやニコチンの吸引を軽減でき、体にやさしいことも、紙巻きが好まれる理由の一つである。

 たばこは一種の麻薬と言える。使用すると、覚醒作用やリラックス作用を得られるが、使用を継続すると、「ニコチン中毒」と表現されるように依存性をきたす。ただし、日本ではほかの麻薬のように、薬物依存による重大な精神障害を伴わないとされ、たばこを日常生活で使用できる一つの拠りどころとなっている。

 依存性があるということは、たばこが値上げされても愛煙家は吸い続けてくれるわけで、たばこ産業は利益を安定的に確保できる“おいしいビジネス”という側面もある。そのため、たばこは、世界のさまざまな国で専売制が採られており(日本も1985年まで専売制)、財源としても国庫に寄与している。

 たばこには、発がん物質など多種類の有害物質が含まれていて、がんやCOPD(慢性閉塞性肺疾患)、心臓病、脳卒中などのリスクを高めると考えられている。禁煙派は、たばこによるそうした健康被害に基づいて、たばこ産業は医療費の増大などにより、結果的に国民経済に多大な損失を引き起こすと主張している。

 近年、禁煙派の勢いが増しているのは、「受動喫煙」による健康被害が問題視されたのが大きい。喫煙の特徴は、喫煙者本人だけでなく、周りの人もたばこの煙を吸わされてしまうこと。非喫煙者にとっては迷惑この上ないということで「嫌煙権運動」が盛り上がり、公共の場での禁煙、分煙が一般化したのである。

たばこメーカーの世界ランキング

 たばこを依然、専売制としている国もかなりあり、たばこ産業における民間企業のウエートは、ほかの産業に比べると低い。たとえば、中国は世界最大のたばこ消費国で、世界のたばこ市場の3分の1以上のシェアを占めると言われるが、中国のたばこ産業は国営の中国煙草がほぼ独占している。同社のくわしい実態はわからないが、圧倒的な世界第1位のたばこメーカーであることは間違いない。

 その意味では公開情報に基づくものにすぎないが、売上高に基づく民間たばこメーカーの世界ランキングは、次のとおりである。

画像
たばこ業界の世界ランキング

 上位は日米欧のメーカーによって占められているのがわかるだろう。消費者にある程度経済力がないと喫煙習慣は定着しないので、これまで世界のたばこ市場を牽引してきたのは先進国だったのだ。しかし、日米欧のたばこメーカーを取り巻く経営環境は厳しさを増している。健康志向が高まっている先進国では、「たばこ離れ」も加速しているからだ。

 それに少子化が追い討ちをかけ、先進国のたばこ市場は大幅にシュリンクすると見られている。そのため、日米欧のたばこメーカーは、合従連衡で経営規模を追求したり、海外市場に打って出たりすることで、生き残りを模索しているのだ。

 世界第1位の民間たばこメーカーは、インペリアル・タバコ・グループである。1901年に設立された英国を代表する名門たばこメーカーだ。キューバ産高級葉巻たばこは、同社が独占販売権を保有している。欧米のたばこメーカーを次々と手中に収め、巨大化した。2013年には日本法人を立ち上げ、「ウエスト」「ダビドフ」「ジタン」などのブランドを展開している。

【次ページ】今後の主戦場は「新興国」「電子」「大麻」
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