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  • 2020/07/09 掲載

テレビメーカーの世界ランキング:韓国サムスン猛追の中国TCL、ソニーはどうなる?

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世界のテレビ市場では現在、世界競争を制したサムスン電子やLGといった韓国勢がトップに君臨しているが、中国TCLなどがコストパフォーマンスの高い製品を投入し、猛烈に追い上げている。一方、コロナによる外出制限の影響で在宅時間が増えた結果、テレビの売り上げそのものは堅調に推移する見込み。日本でも定着したAmazon PrimeやNetflixなどのVODサービスが世界的な広がりを見せており、「テレビのスマート化」によるシェア争いは今後も過熱していくことになりそうだ。
執筆:野澤 正毅
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オンライン動画が全盛の時代になろうとも、テレビが家電の王様であることは変わらない
(Photo/Getty Images)

ネットともつながるスマートTVが登場

 テレビが、高度経済成長期には、憧れの電化製品として洗濯機、冷蔵庫と並んで「三種の神器」と呼ばれていたことを、中高年の人ならご存じだろう。

 最近では、「テレビを見ない」という若い人も増えているようだが、テレビは、今でも日本人にとってポピュラーな家電の一つで、オーディオ&ビジュアルの主役と言ってもいいだろう。もちろん、世界中の人にとっても、テレビは家電の代表選手だ。

 ちなみに、テレビと言えば、液晶のあの画面を思い浮かべるが、放送局から受信した電波を画像情報や音声情報に変換する「チューナー」と、画面やスピーカーが一体化された装置を“テレビ”と呼ぶ。たとえば、PCなどと接続して画像を映し出す「ディスプレイ」とは、そこが違う。しかし、後述するように、デジタル化で登場した「スマートテレビ」によって、そうした製品間の壁は、崩れつつあるのが現状だ。


 また、テレビは進化を続けている。テレビのディスプレイは、ブラウン管から薄型テレビへとシフト、さらに、薄型テレビは液晶ディスプレイ、有機ELといった具合に技術革新が進み、小型・軽量化、省電力化が進んでいる。また、テレビのデジタル化とも連動して、画像もハイビジョン、4K8Kといった具合に、高精細化している。

 一方で、ITの急速な発達、とりわけ、デジタルモバイルやインターネットの普及は、テレビにも大きな影響をもたらした。もともとテレビは、家庭用ゲーム機、ホームビデオなどのディスプレイの役割も兼ねていたのだが、スマートフォンの「ワンセグ」のように、もはやテレビと、デジタルモバイルやPCといった情報端末の境目がなくなりつつある。

 そうして登場したのが、両者を融合し、連動させる「スマートテレビ」だ。つまり、テレビ放送を視聴するだけでなく、ネットにもつながることができ、VOD(ビデオオンデマンド)やYouTubeの視聴など、さまざまな機能を兼ね備えたテレビへと進化しているわけだ。

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スマホなどのデバイスは増えているが、大画面のテレビは依然として重要なタッチポイントだ
(Photo/Getty Images)

テレビ市場シェアは韓国メーカーがトップ、中国勢が猛追

 テレビの産業構造も大きく変化した。ハイテクの結晶であったテレビ産業を戦後長らく主導してきたのは、欧米と、それに続く日本だった。ところがその後、冷蔵庫や洗濯機のような「白物家電」とともに、テレビも汎用家電として価格競争の荒波に飲まれた。

 その結果、日米欧の先進国のテレビメーカーは、韓国や中国といった(当時の)新興国のテレビメーカーに、市場を浸食されていった。一時期はテレビ市場で世界に覇を唱えた日本のメーカーも凋落し、テレビ事業から撤退するメーカーも続出した。

 ここで、米テックナビオがまとめた市場調査データ「Global Smart TV Market 2020-2024」に基づいて、現在の世界のテレビ市場について、主要メーカーの勢力図を見ていこう。中国や韓国などの東アジア勢が台頭しているが、先進国の中では、かろうじて日本勢が気を吐いている。

・サムスン電子

 市場で売り上げシェア第1位は、20%超を占める韓国のサムスン電子だ。1969年に設立された。サムスングループの中核で、韓国では数少ないグローバル企業の一つ。「韓国経済はサムスン電子でもつ」とさえ言われる総合電機メーカーで、スマホや半導体にも強い。1970年代に、日本の大手電機・通信機器メーカーとの合弁事業で、発展の基盤を築いた。

 さらに、背中を追っていた日本の、言わば“敵失”によって、飛躍するチャンスをつかんだ。バブル経済崩壊以降、長期不況に陥った日本の大手電機メーカーは、テレビを含めた家電事業のリストラを相次いで行い、それに伴って、優秀な技術者が大量に流出した。サムスンは、そうした人材の主要な受け皿となって、日本の高度な技術をローコストで獲得できたのだ。

 2006年から世界最大のテレビメーカーとなり、75インチサイズのテレビでは現在、世界の売り上げの約半分を占めると言う。とりわけ、北米市場は、同社のテレビが普及している。

 最近では、マイクロLEDテレビや有機ELテレビに力を入れている。一方で、テレビ用の液晶パネルの生産については、中国メーカーなどとの競合が激化し、停止に追い込まれている。日本市場でも、消費者に支持されず、家電事業から撤退した。

 さらに7日に発表した決算によれば、スマートフォンの販売台数は前年同期比27%減となる一方で、外出制限の影響でテレビなどの売り上げは堅調に推移した。

・LGエレクトロニクス

 第2位も韓国のLGエレクトロニクス。約12%の市場シェアを握り、とりわけ、北米市場が得意だ。1958年創業で、サムスンとともに韓国を代表する総合電機メーカーであり、LGグループ(旧ラッキー金星財閥)の中核企業でもある。

 とりわけ、主力としているのがテレビで、LEDテレビやスーパーハイビジョン(UHD)テレビ、スマートテレビなど最新タイプのラインアップが幅広い。2014年には、有機EL・UHDのスマートテレビを発表した。

 AIを活用した自然言語の音声起動制御システム、フルアレイ調光機能があるバックライトシステムを開発するなど、技術力も高めつつある。サムスンとは対照的に、日本市場でも家電事業を展開しており、家電量販店などでLGブランドの製品を見かける。日本法人のLGエレクトロニクス・ジャパンは1981年設立で、2018年の売上高は590億円だ。

 7日に発表した決算(速報値)によれば、主力の生活家電やテレビの売り上げが低迷した。特に欧米での販売は振るわなかったものの、韓国内でプレミアム家電が期待以上の売れ行きで、投資家の予想よりも善戦したという。

・ソニー(SONY)

 第3位はお馴染みのソニーで、メイド・イン・ジャパンの存在感を示している。シェアは約7%。創業は戦後間もない1946年。とりわけ、オーディオ&ビジュアルが得意であり、世界中で通用する日本ブランドの一つと言っていいだろう。

 従来からテレビも得意で、1960年には世界初のトランジスタテレビを開発。画面から音声を直接響かせ、臨場感を盛り上げるといった技術力にも定評がある(現行の家庭用テレビブランドは「ブラビア」)。テレビ事業は、不振が続いていたが、リストラ策が奏効して、最近では持ち直している。また、多角化で金融事業(直販型保険など)にも進出、利益を生む孝行息子に育っている。

【次ページ】テレビ市場の今後、コロナ以外の波乱要素も
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