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これまで米国勢が牛耳ってきた半導体産業。ところが、汎用メモリを足がかりに韓国勢が台頭、ついにサムソン電子がインテルから首位の座を奪った。さらに、「量で勝負」の汎用メモリの市場は、新興国メーカーも虎視眈々と狙っている。先進国メーカーも「質で勝負」できる技術力を身につけなければ、総崩れとなるリスクがある。日本勢は東芝が経営危機に陥るなど、旗色がさえない状況だ。だが、経営再建を終えた「あの企業」が静かに反撃ののろしを上げている。
“質”の先進国、“量”の新興国
2017年は、半導体業界にとってエポックメーキングな年となった。半導体売上高で首位を独走してきた米国のインテルを抜いて、韓国のサムスン電子がトップに踊り出たからだ。とはいえ、かつて「半導体王国」を築いた日本が凋落したのに続いて、米国の半導体産業も斜陽化したのかといえば、そうではない。
世界の半導体産業は分業化が進んでいる。半導体の研究・開発には多額のコストがかかるため、半導体メーカーは投資対効果を高めようと、経営資源を特定領域に集中させるようになったのだ。
その結果、さまざまなデバイス(部品)を手がける総合型メーカーは鳴りを潜め、特定領域に強い専門型メーカーが業績を伸ばしている。つまり、有力メーカーが群雄割拠する産業構造に変わっているのだ。
大まかに色分けすれば、米国勢を中心とした先進国の半導体メーカーは依然、先端技術で世界をリードしているが、韓国勢を筆頭とした新興国の半導体メーカーは、低価格を武器に汎用品でシェアを握るようになった。“質”の先進国、“量”の新興国に勢力が二分しているともいえよう。市場規模の大きいメモリ(記憶装置)が得意なサムスン電子は、新興国の成長の象徴でもあるわけだ。
水平・垂直に進む半導体の分業化
今日のITの発達は、半導体の進化に支えられてきた。半導体の原型は1947年に米国のベル研究所で開発された「トランジスタ」だ。トランジスタは急速に小型・軽量化され、「IC」(集積回路)、さらには「LSI」(大規模集積回路)が開発された。
それに伴って、巨大だったコンピューターもどんどん小さくなり、80年代にはPCが一般に広まり、今ではスマートフォンやタブレット端末が普及している。
また、超小型の「マイクロコントローラ」(マイコン)をさまざまな機械に組み込み、自動制御など機械を高性能化することも可能になった。
ロボットや航空機をはじめ、家電、自動車、医療機器など、今やあらゆる機械に半導体が活用されている。半導体は、まさに現代社会に欠かせない「産業の米」となったのである。
半導体にはさまざまな種類があり、目的・用途に応じて組み合わせて使う。
たとえば、メモリとしてポピュラーな「DRAM」、データの書き換えが可能で電源を切ってもデータを残せる「フラッシュメモリ」、デジタル信号の処理に特化した「DSP」、コンピューターの頭脳に当たる「CPU」(中央演算処理装置)などがある。照明などに使われる「LED」(発光ダイオード)も半導体の一種だ。
半導体業界では、各メーカーが得意領域のデバイスを生産する「水平分業」と同時に、生産工程を分担する「垂直分業」も広まっている。それも、経営の選択と集中の一環なのだ。
もともとPCメーカーなどは、ほかの半導体メーカーからもデバイスを購入して、製品を組み立てるケースが多かったのだが(PCに貼ってあった「インテルインサイド」のシールを思い出してもらいたい)、最近では半導体の生産設備そのものを持たない「ファブレス」、他社から半導体の生産を受託する「ファウンドリ」も事業を拡大している。研究・開発のみを行うIPプロバイダもある。
新旧企業がしのぎを削るランキングトップ10
半導体売上高によるグローバルランキングを見ると、日米欧、それに韓国のメーカーに占められていることがわかるだろう。中でも米国勢が圧倒的な強さだが、韓国勢の台頭も目につくようになってきた。
初の世界第1位となったサムスン電子は、1969年に設立されたサムスングループの中核。世界に通用する数少ない韓国企業の1つで、「韓国経済はサムスン電子でもつ」とさえいわれているそうだ。
同社は大手半導体メーカーでは珍しくなった総合電機・電子機器メーカーでもある。半導体事業の柱はメモリで、DRAMでは世界第1位。しかし、DRAMは成熟市場であり、価格競争も激化している。そのため、新しい事業の柱の育成を急いでおり、NAND型フラッシュメモリ、LEDを使った液晶ディスプレイ、さまざまな半導体のセット「システムLSI」などに力を入れている。
第2位に転落した米国のインテルは、日本でも「インテル、入ってる」のCMでおなじみ。1968年にシリコンバレーのベンチャーとして誕生した。1971年に世界初のマイクロプロセッサを開発したことでも知られる。80年代以降、総合型半導体メーカーからの脱皮を図り、PCの普及に合わせて小型CPU(MPU)に注力。現在、PC向けのCPUでは80%以上の世界シェアを占めるといわれる。だが、CPUへの過度の依存から脱却するため、2015年には、FPGA(回路の書き換えが可能な半導体)に強い米国アルテラをM&Aで手に入れた。
第3位は韓国のSKハイニックス。1983年に創業したが、2001年に経営破綻。韓国政府主導による経営再建の結果、韓国の大手通信会社であるSKテレコムの傘下に入った。メモリを主力とし、DRAMではサムスン電子に次いで世界第2位。しかし、日本企業に対する“産業スパイ事件”といった問題も引き起こしている。東芝からフラッシュメモリの機密情報を不正入手したことが発覚、2014年に東芝に2億7,800万米ドル(約300億円)を支払うことで和解し“盗用”を事実上、認めた。
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