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  • 2017/02/28 掲載

メディア業界の世界ランキング:1位はグーグル 2位はディズニー 巨大化・総合化が進展

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世界のメディア業界を長らく支配してきたのは、先進国の新聞・テレビであった。ところが最近、グーグルを傘下に持つアルファベットやフェイスブックといったネットサービス企業が上位で幅を利かせるようになってきた。アマゾンのジェフ・ベゾスCEOが、米老舗日刊紙「ワシントン・ポスト」を買収したことはあまりにも有名な話だろう。一方、優良コンテンツの確保などを狙い、大手メディア企業もM&A(企業合併・買収)をテコに、新聞、テレビ、ネットメディアといった複数の媒体を抱え、総合化・巨大化する傾向もグローバルレベルで顕著になっている。

執筆:野澤 正毅 企画・構成:編集部 松尾慎司

執筆:野澤 正毅 企画・構成:編集部 松尾慎司

野澤 正毅:1967年12月生まれ。東京都出身。専門紙記者、雑誌編集者を経て、現在、ビジネスや医療・健康分野を中心に執筆活動を行っている。

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メディアもM&Aによる巨大化が進行している
(© Piotr Adamowicz – Fotolia)


なぜメディアビジネスは参入が難しかったのか

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 新聞・雑誌・テレビといったマス・メディア(メディア)が、「社会の公器」として、権力を監視し、国民に重要な情報を伝え、世論を形成するというミッションを帯びていることは、今さら言うまでもないだろう。そのため、メディアは、“ビジネス”としては特殊なポジションにあるが、本稿では一つの産業という側面からメディアを分析してみる。

 メディアの中でも、とりわけ、新聞社や放送局は巨大な装置産業だ(新聞社や出版社は“製造業”として産業分類されることもある)。

 全国紙などの大手新聞社は自社印刷工場を保有(出版社の大半は雑誌や書籍の印刷を印刷会社に委託)、自前で系列販売店を組織し、製販一貫の直販体制を構築しているケースが多い(とりわけ、日本では販売店が読者に宅配サービスも行っている)。

 新聞(日刊紙)は時事ニュースを中心に取扱い、出版物の中で最も速報性が求められるため、効率的な直販流通システムを整えたわけである(流通に第三者を介入させず、言論機関としての独立性を保つ目的もあった)。

 したがって、全国紙は経営規模も大きく、発行には莫大な資金を要する。たとえば、読売新聞の発行部数は1000万部弱と言われ、「世界最大の新聞」として知られている。

 テレビなどの放送局も、人工衛星を使って中継放送したりするため、大規模な通信システムが必要なことに加えて、電波の使用には国の許可が必要で、番組制作用のスタジオなども備えている。巨額の資本がなければ、開設・運営は難しいのだ。

メディアの歴史、ネットメディア台頭の脅威

 世界最古の新聞は約1300年前、唐(現在の中国)で発行された「開元雑報」だと言われているが、メディアが産業化されたのは15世紀、ドイツのグーテンベルクが発明したという活版印刷技術が確立されてからだろう。この技術によって、印刷物の大量生産が可能となったからである。

 日本では、戦国時代末期から「瓦版」が登場したと言われ、江戸時代になると書物の発行も盛んになった(ちなみに、現存する日本最古の出版社は慶長年間創業、仏教書で有名な京都の法蔵館と言われている)。明治維新後に西洋文明が流入すると、近代的な出版産業が勃興し、読売新聞社(1874年)、朝日新聞社(1879年)、講談社(1909年)などが相次いで創業した。

 世界のメディアの王座に長らく君臨していたのは、「活字メディア」の代表たる新聞だったが、20世紀初頭にラジオが発明されると(日本では1925年、現在の日本放送協会がラジオ放送をスタート)、「電波メディア」が一挙に台頭する。

 さらに、テレビ放送が本格化すると(1926年に日本の高柳健次郎氏が、世界で初めてブラウン管での電送・受像に成功)、新聞とテレビがメディア勢力を二分するようになった。

 テレビは新聞に速報性で勝るうえ、動画と音声によって臨場感のある情報を伝えられるという従来のメディアにない強みを持っていたからだ。日本では1953年に日本放送協会、日本テレビがテレビ放送を開始した。

 そして、新聞、テレビに次ぐ、「第三のメディア」と目されているのが、1980年代に民生利用が始まったインターネットだ。初期は文字情報がメーンだったので、速報性で電波メディアに負けない一種の“活字メディア”だったが、ITの発達につれて動画配信もできるようになり、現在では新聞とテレビの機能を併せ持つ強力なメディアとなっている。

 また、小資本であってもWeb媒体を配信したり、ネットテレビ局を開いたりできるのも長所だ。その半面、参入が容易であるため、過当競争になっており、粗製濫造も大きな課題とされている。

メディアの世界ランキング、上位に並ぶ欧米の総合メディア企業

 メディア産業のグローバルランキングは以下のとおりである。ここでいうメディア収入には、広告費だけではなく、新聞や雑誌の販売収入も含まれる。

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メディア業界の世界ランキング

 トップテンのほとんどは先進国である欧米の企業に占められている。というのも、メディア産業が発達するには、国民の教育水準が高く(活字メディアの普及は識字率の高さがポイント)、言論の自由、表現の自由が保障されているといった社会的条件が不可欠だからだ。メディアの種類では、ネット系を主力とする企業の躍進が目につく。

 また、ランキング上位には、新聞や雑誌、テレビといった複数の媒体を保有し、映画や音楽の制作会社まで擁する総合メディア企業が並ぶ。

 小説をドラマ化するといったメディアミックス、広告の多チャネル展開などの経営戦略上、総合メディア企業のほうが有利だからだ。

 欧米の場合、M&Aによる総合化が主流だが、日本の場合、大手新聞社がテレビ局を支配しているのが特徴だろう。

 これは、すでに資本を蓄積していた大手新聞社が、新規事業としてテレビに投資したからである(テレビを広告で運営するビジネスモデルを電通が考案、新聞社に勧めたとも言われる)。

 また、新聞社の人材をテレビに投入できたのも大きい。制作技術的には新聞とテレビは違うが、例えば、ニュースの取材・編集の仕事はどんなメディアでも基本は同じだからである。

 世界第1位のメディア企業は米国のアルファベット。あのグーグルの持ち株会社と言えば、納得できるだろう。グーグルグループの事業再編に伴い、2015年に設立された。ネットメディア事業だけでなく、金融サービス事業なども手がけるコングロマリットである。

 第2位の米国のウォルト・ディズニーも説明不要だろう。同社の「ディズニーランド」は日本でも大人気だ。アニメーション映画のパイオニアであるウォルト・ディズニーらが1923年に創業。キャラクタービジネスの代表格としても知られ、強力なロビー活動で著作権の保護期間を100年以上にも延長可能な政治力も見逃せない。日本ではあまり知られていないが、米国3大ネットワークの一つ、ABC(American Broadcasting Company)も同グループに属する。

 第3位のコムキャストも米国企業だ。1963年に設立され、全米有数のケーブルテレビとなった。2009年には、NBC(米国3大ネットワークの一つ)、ユニバーサル・ピクチャーズもM&Aで取得した(ユニバーサル・スタジオなども同グループ)。

 第4位の21世紀フォックスは、米国名門映画会社である「20世紀フォックス」の持ち株会社として新たに設立された。動画配信サービスの「Hulu(フールー)」にも出資している。

【次ページ】なぜ新興勢力が既存メディアを買収するのか

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