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- 2015/06/15 掲載
なぜテレビのリモコンは使いにくいのか? 機能が正しく機能するための「反復修正力」
多機能化する製品、複雑化する状況
極めて精密にディテールが作りこまれているのだけれど、大元の方向性がおかしなものであるがゆえに、その製品がまったく日常の用をなさないものになる、ということがある。例えば「デジタルテレビのリモコン」は、こうした例で槍玉に上がる代表選手である。最近のデジタルテレビは凄い。ハードディスク録画は当然自由自在だし、データ放送だインターネット通信だ、天気予報はいつでも見放題、過去の番組だって配信中と、機能満載である。
だが、肝心のリモコンにはボタンが多すぎて、何を押したらどうなるのかがわからない。何かを押して設定が変なことになってしまっては困るので、うかつに押せない。
結局、ほとんどの人は電源ボタンとチャンネルしか使っておらず、これではガチャガチャとアナログテレビのチャンネルを回していた頃とそこまで大差ないのではないか、という話である。
これを設計者が責められるのは、かなり酷な話である。それどころか、一生懸命作りこんだ機能が使われないという状況は、可哀想でもある。
そもそも、デバイスに実装されている機能があまりにも多過ぎて、これを「片手に持てるスティック様の形状のもので制御しよう」というコンセプト自体、無理がある話なのである。このコンセプトによって、いまここに「テレビの設計者、リモコンの設計者、ユーザーの誰もが得をしていない」という状況が生まれている。
しかし、ユーザーとは逞しく生きる存在である。なんだかんだといいながらも、それを使いこなそうという努力をする。読書の途中でお茶が飲みたくなったら、リモコンを「ちょっと手を離す間、本に跡が付かない程度にページを押さえておく」という用途に使い、絶大な効果をあげることを発見するのだ。
ただ本を押さえるためであればなんでもいいようにも思えるが、意外とそうでもない。サイズ、形状、重量、ボタンの素材のゴムの摩擦係数が最適なため、これ以外の他の物ではうまく固定ができない、これこそ最高の「本留め」だ、いやむしろこれは「本留め」として売りだしたほうが儲かるのではないか、というくらいに絶妙なフィット感を醸し出すのである。
これは一体どういうことなのか、よくわからないことになっている。あらゆる製品が高度化、複雑化、高機能化しているなか、本当に複雑化しているのは「状況」そのものなのかもしれない。
【次ページ】iPhoneとテレビのリモコンに存在する明確な差とは?
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