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- 2014/12/24 掲載
町の書店が希少なものになっては困る──かもめブックスが目指す「雑誌のような書店」
かもめブックス店主 柳下恭平氏インタビュー
危機意識が生んだ、校閲会社と書店
──かもめブックスは、校閲会社が母体であることがユニークですよね。そもそも、どういった経緯で会社を起こされたんでしょうか?柳下 恭平氏(以下、柳下氏)■校閲という仕事を知ったのは、本当に偶然だったんです。ましてや、仕事にするなんて思ってもみませんでした。高校を卒業してから、言葉とコミュニケーションに関心を持っていたので、海外のいくつかの国で働いたり、ぶらぶら国から国へと渡り歩いていました。結局、コミュニケーションの点では得るものがたくさんありましたが、語学という意味ではあまり役立たず……(苦笑)。
柳下氏■帰国して東京で暮らし始めたのですが、ある時、家のポストに「飼っていた猫が逃げてしまいました。もしここに帰ってきたら捕まえてください」という前の住人からの手紙が入っていたんです。それからお付き合いが始まり、そのご縁で出版業界に入りました。
──本当に偶然ですね(笑)。
柳下氏■同じ「読む」という行為でも、校閲と読書とはまったく違うものなんですよね。情報処理の在り方として「なんて面白いんだ!」とびっくりしました。その後独立して、鴎来堂を立ち上げました。
──わざわざご自分の会社を立ち上げたのはなぜですか?
柳下氏■校閲って、一般的にはまったく知られていない仕事ですよね。価値を認めてくれる人がいなければ、私たちの仕事はなくなってしまう。だから、校閲という仕事をブランディングして、もっと多くの人に、この仕事の大事さを知ってもらうことが必要だと考えました。さらに、フリーランスのベテラン校正者は50代、60代が多く、しかも、それがそのまま上にシフトしていく業界なんです。また、出版に限らず、若い人を育てるのが難しくなっている現状もある。このままだと若い校正者が空洞化してしまうという予感があり、そこに危機感を感じていました。それが鴎来堂立ち上げの理由です。
──では、書店経営に乗り出した理由は何だったんでしょうか?
柳下氏■直接的なきっかけは、同地にあった書店が今年(2014年)4月に突然閉店したことです。「町の書店が少なくなりつつある」という感覚はありましたが、自分の町の書店がなくなるのは、想像以上にショッキングな出来事でした。校閲の仕事があるのも本があるからであり、その本には売る場所が必要です。そのためにも「町の書店」という機能を守っていかなければならないと思ったんです。
──鴎来堂を立ち上げたのと同様、危機意識がモチベーションになっているんですね。
柳下氏■はい。僕たち本好きは放っておいても本を読みます。一方、読まない人の家には本棚すらないかもしれません。限られたパイを取り合っていては、自ずと限界が見えてしまいます。ならばどうすればいいかと言えば、本を読む人自体を増やさなければならない。書店を作ったのは、その一助になれば、という想いからです。
【次ページ】 雑誌のような書店
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