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  • 2016/03/17 掲載

今さら聞けない!シャープを買収するホンハイ(鴻海精密工業)がスゴい理由

ビジネスモデル解説:EMS(電子機器受託製造サービス)

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電子機器受託製造サービス(EMS)大手の鴻海精密工業(ホンハイ)がシャープ支援に7000億円を投下し、約66%の株式を取得するというニュースが大々的に報じられました。豊富な資金力でシャープ支援に乗り出したホンハイですが、電子機器の受託製造というB2Bのビジネスモデルをとっているため、これまで電機・電子業界以外で報じられることはあまりありませんでした。創業者テリー・ゴウに率いられたEMS業界をリードするホンハイはなぜスゴいのか。そして、シャープ買収によってどのように事業転換を図っていくのでしょうか。
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シャープ買収を進めるホンハイとは

ホンハイが提供する電子機器受託製造サービス(EMS)とは

 ホンハイが提供する電子機器受託製造サービス(EMS)とは、そもそもどのようなサービスなのでしょうか。EMSは「Electronics Manufacturing Service」の略で、自社で生産設備を持たない「ファブレス企業」などから製造工程を請け負うサービスを指します。

 ホンハイは、EMSを提供する企業として世界最大の規模を誇ります。ホンハイの顧客として最も有名なのがアップルで、iPhoneが全世界で高い品質を維持しているのは、ホンハイの部品供給のおかげとも言われるほどです。

 アップルがiPhoneやiPadの新商品を投入する際には、短期間で大量の電子部品が求められます。特に、製品組み立ての工程は自動化が難しいため、人手による作業が必要です。この大きな需給変動に柔軟に対応し、品質の高い製品製造をやってのける対応力がホンハイの価値だと言えるでしょう。アップルの高いデザイン力と、ホンハイが持つ高い受託製造技術の組み合わせによって、全世界の顧客が高価なスマートフォンに進んでお金を払うようになったのです。

 アップルの他にも、ソニーのプレイステーション、任天堂のWii U、マイクロソフトのXbox、アマゾンのKindleなど、有名な電子製品のほとんどにホンハイの部品が使われています。

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ホンハイが提供する電子機器受託製造サービス(EMS)
(作成:高橋 博伸)


ホンハイより売上高の多い日本企業はトヨタだけ

 台湾に本社を置くホンハイは、1974年に設立されました。世界最大の電子製品受託生産企業であるフォックスコン・テクノロジー・グループの中核企業に位置付けられています。アジア・ヨーロッパ・南米など世界14カ国に生産拠点を持ち、電子機器における世界シェアのうち、実に40%を獲得した大企業です。主要生産拠点である中国を中心に、従業員は130万人を数えます。

 2015年には連結売上高が約15兆円となり、世界中の企業を売上高で比較した「Fortune Global 500」において、ホンハイは31位にあり、米フォードなどと同規模に数えられます。ホンハイより上位につける日本企業はトヨタ自動車しかありません。

 ホンハイの強みは圧倒的な価格競争力にあります。生産効率を極限まで高めたライン生産によってコスト削減を実現しました。数万人を抱える大規模な生産拠点を構築し、スケールメリットを享受します。顧客のニーズに応えるためには手段を選ばず、従業員に残業を強いながらも、生産ラインの柔軟な変更などを実現します。その他にも、生産拠点での徹底した情報管理や、政府関連機関との強い結びつきなど、安く良いものを製造するために、あらゆる手を尽くしています。

ホンハイ創業者の「テリー・ゴウ」のスゴさ

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 設立当初、ホンハイは「白黒テレビの選局つまみ」などのプラスチック製品の製造・加工事業を行っていました。その後、PC市場の成長と共に発展を遂げました。1985年のアメリカ支社設立を契機に、アップル、インテル、ヒューレット・パッカード、デルなどとの提携を実現していきます。これらの大手ブランド企業がPCの商品企画に注力すると共に、製造を委託するケースが増えてきたため、ホンハイは大規模な生産設備で顧客のニーズに応える体制を整え、業績を伸ばしてきています。

 ホンハイの歴史を語る上で創業者テリー・ゴウ(郭台銘)の存在を抜きには語れません。1950年に台湾で生まれたテリー・ゴウは、24歳にしてホンハイを創業しています。一代でホンハイを世界有数の企業に育て上げた同氏は、世界長者番付の常連でもあります。「1日に最低16時間働く」と称されるほどの情熱家で、周囲の従業員がついていけず、体を壊すケースも多いと言われます。

 テリー・ゴウは、そのカリスマ性から数々の名言を残しています。

「今日の世界は“大”が“小”を勝つことなく、ただ“速い”が“遅い”に打ち勝つのだ」

「実験室から出たら、ハイテクではなく、執行の規律のみだ」

「勝者の経営戦略とは、直ちに開発(time to market)、直ちに量産(time to volume)、直ちに出荷(time to money)だ」

 これらの言葉は、ホンハイの戦略そのものを的確に表現しているのではないでしょうか。

【次ページ】シャープ買収でホンハイが実現させたいこと
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