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新型コロナウイルスの「第3波」が日本の各地を襲っている。東京都など8つの都道府県では、飲食店などに営業時間の短縮を要請されているが、要請に応じる店舗と「過去の時短要請には応じたが今回は応じられない」と話す店舗に分かれている。特に、同じ都内とはいえ爆発的な感染者増加とは言えない多摩地区の飲食店からは、疑問の声が聞かれる。
「第3波」が飲食店を追いつめる
新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。11月18日に国内の新規感染者数が初めて2,000人を超えて以来、高止まり傾向が続いている。11月29日の時点で、累計の国内感染者数は14万7,568人を数え、死亡者数も2,000人を超えた(11月29日時点で国内の新型コロナウイルスによる死者は2,126人)。いままさに、「第3波」が日本国中を襲っている。
このような状況にあって、飲食店主たちが最も恐れていたことが起こった。営業時間の短縮要請、いわゆる「時短要請」だ。急速な感染拡大により、11月7日にいち早く時短要請が出された札幌市・すすきのの飲食店オーナーの男性は「時短要請が出されてから客足は春先に戻ってしまった」とため息をつく。
「GoToトラベルやGoToイートの影響もあって、9月、10月はかなり持ち直しました。春先にはお客さんがほぼゼロになり、店をたたむことも考えていましたが、やっとこれで一息つける、と。忘年会シーズンに向けて頑張ろうと従業員とも話していた矢先に時短要請が出されてしまいました。客足は春先に逆戻りですね」
札幌市では11月28日、新たに「接待を伴う飲食店」への営業自粛要請が出された。一応の期限は12月11日までとされている。
「うちは、営業自粛要請ではなく時短要請が出されている業態ですが、スナックやナイトクラブに行くお客さんの行き帰りに利用されることも多いし、そういった場所で働いている人たちにもよく利用してもらっている。影響は非常に大きいですよ。営業自粛要請が年末まで延びれば、すすきのの街が死んでしまうでしょうね」(前出・飲食店オーナー男性)
時短要請に「応じる気はない」オーナーも
東京都では、11月28日から12月17日まで、酒類を提供する飲食店やカラオケ店に対して時短要請が出された。しかし、この要請に「今回は応じる気はない」という飲食店は、決して少なくない。東京・新橋のホルモン焼き店をはじめ、複数の居酒屋を経営するオーナーの男性もその一人だ。
「過去2回の時短要請は、受け入れてきましたが、今回は難しいですね。午後10時以降はアルコールの提供をしてはいけないとのことですが、うちは午後10時以降が売り上げの6割を占めています。協力金は一律で40万円ですか?1日の売り上げにも満たない。とてもではないですが、やっていけないです」
東京・月島で鉄板焼き店を営むオーナーも「協力金だけでは大赤字になる」とこぼす。このオーナーは「自己資金もかなり投入してきたけれどもう限界かもしれない。年末まで時短要請が続くようなら店をやめるしかないですね」というところまで追いつめられている。
「仕方なく受け入れる」というオーナーもいる。東京・品川で居酒屋を営む店主は次のように話す。
「時短要請なんか受け入れたくないけれど、受け入れざるを得ない。受け入れなかったら、『自粛警察』と呼ばれる人の被害に遭うかもしれない。世間の目は怖いですからね」
感染者の少ない多摩地区でなぜ?疑問の声を上げる店主たち
一方、今回の東京都の時短要請は東京23区以外の多摩地区にも及ぶ。この措置に「納得できない」と憤るのは、国立市の居酒屋店長だ。
「国立は、23区内と比べると感染者はとても少ない。それなのに、東京都とひとくくりにされて時短要請が出されるのはまったく納得できないですね。菅さんなんかは、感染拡大を抑えながら経済を回していくみたいなこと言っているけれど、それならば感染拡大が深刻なエリアに絞って対策を打っていくべきだと思います」
立川市でレストランを営む店主は「理不尽だ」と語る。
「時短要請を行っているほかの都市は、区の中でもさらにエリアを限定しているとニュースで見たよ。ほかの都市でできることがなぜ東京でできないのか。そもそも、立川で感染者が急に増えているわけじゃないよ。こんな理不尽なことないよ」
立川市は10月のひと月で34人の新規感染者が出た。11月は、29日の時点で51人。国立市も11月の新規感染者数は19人で、10月の9人と比べると増えてはいるが微増で9月の16人と大差はない。確かに両市ともに10月より11月の方が、新規感染者数が増えてはいる。しかし、果たして、都心と同じ基準で時短営業の要請を行うべきなのかは疑問だ。
東大和市ですし店を営む店主も同様の意見だった。
「東大和は、感染者があまり出ていないし、ここのところ増えているということもないですよね?すぐそこの所沢は埼玉県なので、今のところ時短要請は出されていません。なぜ23区内に限定とか、さらに街を限定しての時短要請といったことができないのでしょうか。理解に苦しみます」
店主たちの言う通り、東京都以外に時短要請が行われた都道府県では、エリアを限定している。大阪府で時短要請が出されたのは、「キタ」と「ミナミ」という二大繁華街がある北区と中央区だけだ。愛知県でも名古屋市の中区錦3、栄3の一部と栄4に限られる。北海道で時短要請が出されているのは、南3条~南8条、西2丁目~西6丁目のいわゆる、すすきのエリアだけだ。
忘年会の9割がキャンセルに。肩を落とす飲食店
帝国データバンクによると、10月の時点で、2020年に倒産した居酒屋経営業者は164件を数えた。
帝国データバンクは、「昨年、居酒屋経営業者の倒産件数は過去最多となったが、今年はすでに10月時点で前年を上回っている状況だ。例年であれば忘年会や新年会といった居酒屋にとってはまさに書き入れ時を迎えるはずだが、第3波の発生で利用を控える動きもより強まるだろう。年末年始需要の消失で、倒産ペースが加速する可能性もある」と分析している。
実際に、忘年会や新年会の予約は急速にキャンセルされているという。今回東京都と同じタイミングで時短要請が出された大阪市・キタにある居酒屋オーナーは「忘年会の予約の9割がキャンセルになってしまいました。このような状況になるまでは例年ほどではないにせよ、忘年会の予約が入ってきていて、これで年が越せると安堵(あんど)していましたが……」と肩を落とした。
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