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紆余曲折を経て、7月22日に始まったGo To トラベル。国内旅行代金のうち50%を国が補助するという事業で、旅行会社はあらかじめ旅行代金から35%分を割り引いて販売し、残りの15%は地域で使えるクーポン券として配布するという仕組みだ。しかし、キャンペーン開始から3カ月がたった今、中小の旅行会社からは不満や憤りの声が聞こえてくる。旅行業界でいま何が起こっているのか。旅行会社と宿泊事業者にそれぞれ話を聞いた。
「7月の立て替え分がまだ振り込まれていない」
「当初、Go To トラベル事務局からは建て替え後およそ1カ月で振り込むと説明がありました。しかし、10月中旬の現在に至るまで1円も振り込まれていません」と話すのは、新潟県内の旅行会社だ。
「7月22日の事業開始から主に個人客向けの旅行商品を扱ってきましたが、立て替え分の未収金が日に日に膨らみ、現在は500万円ほどの未収金があります。それにも関わらず、事務局からは『宿泊施設に迅速に支払いを』と連絡が来る。こんなことであれば、こんな事業に参加しなければ良かったですよ」と、この会社の経営者は憤りを隠せない。
そもそも、旅行会社の収益率は高くない。国内旅館やホテルのパッケージツアーの場合、収益率が10%もあればいい方だという。
「たとえば、収益率10%の旅行を受注しても35%の割引率を建て替えると25%分の赤字が出てしまうわけです。1カ月程度で入金があれば問題なくやれると思います。ところが、入金が2カ月、3カ月と遅れると、手元の資金が枯渇して次の旅行の航空券などの仕入れができなくなってしまいます」(前出・新潟県内の旅行会社社長)
1,000万円単位が未収金で、経営危機も
なかには、資金ショートを懸念して新規の予約を断っている会社もある。福岡県内にある社員10数人の旅行会社では、立て替え分が振り込まれるまでの間、新規の予約を断っているという。
「うちは団体旅行がメインなのですが、すでに1,000万円単位の未収金があります。秋の観光シーズンで予約が増え続ければ、未収金が数千万円に上ってしまう可能性もあるでしょう。もともとコロナの影響で手元の資金に不安がある中、これ以上未収金が増えてしまうと破綻してしまいます」
この経営者によると、周囲の中小旅行会社の中にはホテルや旅館への立て替えのために、自己資金を投入したり、借金をしたりという会社も出てきているという。
「Go To トラベルは、宿泊業や旅行業への救済のための政策だったはず。Go To トラベルが原因で経営危機に陥ってしまえば本末転倒です」(前出・福岡県内の旅行会社経営者)
【次ページ】旅行者心理により、「Go To」でも客足が戻らない宿泊施設
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