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2021年4月から「定年70歳時代」が到来することとなった。70歳就業確保法案などが国会で可決され、定年が70歳へと段階的に引き上げられる。目まぐるしく変わるシニアの就労環境とキャリア設計だが、焦りや不安を感じているのは、現在のシニアというより、むしろ定年まで時間がある40~50代の世代だ。本稿ではまず、この定年70歳がどういうことなのかをひも解いていくとともに、どのような備えが必要なのか解説していこう。
2021年4月からは定年70歳時代に
2019年春に話題に上ったいわゆる「老後2,000万円問題」。公的年金だけでは夫婦の老後の生活におよそ2,000万円足りないという金融庁の審議会報告書は、金融相が受け取りを拒否した結果、最終的に撤回された。
こうした中、今年も老後をめぐる政治的な話題が出ている。それが「70歳就業確保法案」など、6本の法律の改正だ。70歳までの就業機会の確保を企業の努力義務とすることを核とした、高年齢者雇用安定法や雇用保険法などの改正がそれに該当する。
70歳就業確保法案は3月31日に国会で可決され、成立したため、来年4月に施行される。努力義務なので絶対的な効力はないが、来年には「定年70歳時代」が到来すると言っても過言ではない。
目前に迫った「定年70歳時代」。それによって老後の仕事や転職にはどのような影響が発生するのだろうか? また、これから老後を迎える方や若者は、70歳まで続く老後の仕事に向けてどのような準備が必要なのだろうか? 多くの方が感じる焦りや不安の原因と、その対策について論じる。
実は65歳定年もまだ引き上げ途中
もしかすると、70歳就業確保法案や「定年70歳時代」について、「急過ぎる」と感じる方も多いかもしれない。これは65歳への定年引き上げが動き出してから間が空いていないためだ。
実はまだ、65歳への定年引き上げは途中の段階だ。2013年から希望者の雇用継続義務が企業に出てきた。これは段階的に対象者の年齢を引き上げる経過措置となっている。
わかりやすく「定年」という言葉を使うならば、3年ごとに「定年」が1歳引き上げられるもので、2025年にはすべての希望者を65歳まで継続雇用する義務が企業に課せられるようになる。
こうした段階的な定年の引き上げは、それ以前から進められてきた公的年金の支給開始年齢引き上げとセットとなった動きだ。公的年金はまず、加給年金や定額部分と呼ばれる部分から段階的に支給開始年齢が上がっていき、60歳から65歳までに支給される金額が減らされた。
さらに残っていた老齢厚生年金の報酬比例部分も段階的に支給開始年齢を引き上げ、65歳までにもらえる年金がゼロとなっていくことにともなって、支給開始年齢まで定年を引き上げる施策だったのだ。
しかし、こうした段階的な引き上げがまだ完了しない中で、努力義務とは言え、70歳までの雇用継続が打ち出されたのであるから、「まだ完全に65歳定年も引き上げ中のうちに、もう70歳定年か」と多くの方が思うのも無理はない。
ちなみに70歳雇用確保法案では公的年金の給付開始年齢は変更しないため、雇用の年齢のみが上がることとなる(現在、別途審議中)。
つい最近まで、たとえば現在70歳前後の方までは、当たり前のように60歳で定年を迎えてきた。再就職する方も少なくなかったかもしれないが、定年が60歳であるのは当たり前のことだった。
それが65歳まで雇用が継続される時代となり、またすぐ70歳まで働く時代となりつつあることに、従来のキャリアプランや価値観が崩壊し、ついていけずにいる中高年は少なくない。
【次ページ】定年70歳時代に動揺するのは40、50代
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