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- 2025/02/18 掲載
【波紋】どうなる「年金改革」現役世代は負担増、企業も倒産の危機?
負担増で反対意見、調整の続く年金改正
2024年12月、厚労省の社会保障審議会・年金部会が「社会保障審議会年金部会における議論の整理」をまとめた。「議論の整理」では、過去の年金制度改正と違って変更が必要な内容・項目を幅広く挙げている。その後、年金制度改正を目指して厚労省や政府与党が検討している内容も幅広い。
まずは、厚生年金への加入対象の拡大だ。これは現時点で厚生年金の加入対象となっていないパートタイマーなどの短時間労働者の一部を加入させるもので、「106万円の壁」と言われる収入の要件と、雇用する企業規模の要件を将来的に撤廃しようという内容だ。
現在は、従業員数が51人以上の事業所で働くパート・アルバイトで、学生でなく、週20時間以上勤務しており、年収106万円以上(月収8.8万円以上)の場合に厚生年金の加入対象となっている。
しかし、この収入の要件を撤廃、企業規模も段階的に撤廃する案が出ている。具体的には、すべての企業で、収入に関係なく、週20時間以上働く学生以外の人は、厚生年金の加入対象になるという案である。
また、基礎年金(国民年金)の給付水準が将来的に下がることに対して、厚生年金の積立金や国費を投じて底上げするという案も出ていた。
その他には、年収798万円以上の会社員の厚生年金保険料の増額の案や、働く高齢者の収入と年金の合計額が高い場合は年金を減額する在職老齢年金制度を見直して、より高い収入を得ても年金が減額されないようにする案、遺族年金の男女間格差などの見直し、脱退一時金に関する見直しなどが見込まれている。
このようにさまざまな変更のポイントが出ている上に、多くの変更では一部の負担が増えることから、反発や異論も生じている。12月に年金部会が「議論の整理」を公表した後も、厚労省や与党の調整が続いて判断先送りなどが起きている。また、年金部会の委員だった人物の投稿がインターネット上で炎上し、さらに殺害予告まで受ける事態になっている。これも負担増があるかもしれないことへの不安と不満の一端であろう。
厚生年金へのパート加入拡大は必至?見えづらいメリット
年金制度の改正案は3月頃、国会に提出される見込みだ。今回は直前まで政府や与党内での調整が続き、内容が変化する可能性がある。当初の案から変更する報道がある項目としては、パート・アルバイトが厚生年金に加入する企業規模要件の撤廃が挙げられる。厚生年金の加入対象となる企業規模の段階を、当初の案からより細かくし、すべての企業が対象となる企業規模要件の撤廃時期を2029年から2035年に先延ばしする案が出ているという。
基礎年金について、厚生年金の積立金や国費によって底上げする案も、底上げを実施するかの判断を2029年以降に先送りする検討がなされているという。
最終的にどんな案になるかは分からないが、高所得会社員の負担増や、一部のパートが新たに加入対象となることによる負担増は濃厚のようだ。
では、メリットはどうか。
在職老齢年金が見直され、年金をもらいながら働く場合に、今までよりも多く稼いでも年金が減らされなくなるとすれば、働く高齢者にはプラスだ。パートが新たに厚生年金に加入することは、将来もらえる年金額が増える点ではプラスだが、手取りが少なくなることをマイナスに感じる人は多そうだ。
こうして見ても、負担に対するメリットが分かりにくい印象だ。年金改正への反発や異論は、負担に対するメリットの納得感が乏しいことも一因になっているのではないだろうか。
そして、年金制度改正で負担が生じるのは働き手だけではない。
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