• 2024/12/17 掲載

「役職定年制廃止」は“加速”と断言する理由、シニアが「失うもの」とは

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役職定年制度を廃止する企業が増えている。それは、2024年9月に厚生労働省が発表した「高齢者の活躍に取り組む企業の事例」からも明らかだ。少子高齢化や雇用流動化といった社会の大きな流れの中で、役職定年制はどのような未来を迎えるのか。シニア転職支援に取り組む著者が、支援の中で見聞きした事例を基に、役職定年の実情と今後を探る。
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役職定年制の未来とは?
(Photo/Shutterstock.com)

役職定年後の給料はいくらに?

 まず、役職定年制について簡単に説明しよう。

 役職定年制とは、役職に就いていた社員が一定の年齢に達すると、その役職から外れる制度である。

 法律で定められたものではないので、役職定年の年齢、対象となる役職、役職定年後の処遇などは会社が独自に定めている。とはいえ、役職定年の年齢は、55歳など50代に設定されることが多いイメージだ。

 役職定年を迎えると、当然役職手当はつかなくなるが、役職と等級が分かれている場合は等級が下がるなどして、基本給も下がることがある。また、マネジメント業務から外れ、スタッフの1人となることが多いほか、大きな配置転換を伴う場合もある。

 役職定年制は、80年代に定年制度が55歳から60歳へと延長された際、ポストを若手に譲って新陳代謝を促すために導入され始めた。ポストを若手に譲るだけでなく、年功序列で給料が上がり続けることを防ぐ目的もあるだろう。

 役職定年でどれくらい給料が減るのかというと、法律で決められているわけではないので企業次第だ。ただ、公務員の定年延長で60歳以降の給料が「役職に就いていた時の7割」まで下がる規定があるため、民間企業も同程度には下がりそうだ。もっとも、民間企業の給与体系はさまざまで、基本給が低く、役職手当が大きいような企業の場合、役職定年時の大幅な給与減も覚悟しなければならない。

 また、民間企業の場合、公務員とは違い、役職定年時と60歳定年時の2回、給与減が発生する可能性もある。仮に役職定年でそれ以前の7割の金額になり、60歳定年後再雇用時に定年前の7割の金額になった場合、役職定年前の半分以下の金額になることも考えられる。

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給与額の下げ幅も企業によってさまざまなだが、生活に支障が出るレベルの減額や、多くの社員の平均的な給与水準よりも低くなるような減額の場合は違法とされるかもしれない
(Photo/Shutterstock.com)

減りゆく役職定年制

 役職定年制の導入企業は減少している。人事院が公表した令和5年(2023年)の民間企業の勤務条件制度調査結果によると、「役職定年制がある」という企業は16.7%だった。これは平成19年(2007年)の23.8%から減少していることが分かる。

 役職定年制は大企業に多いイメージがあるが、実際には令和5年(2023年)の調査結果で、「役職定年制がある」企業の割合は、従業員「500人以上」で27.6%、「100人以上500人未満」で18.4%、「50人以上100人未満」で10.7%と、大企業での割合が高い。いずれの企業規模でも平成19年(2007年)と比較して減少している。

 役職定年制の廃止は国も後押ししている。厚生労働省が2024年9月に公開した「高齢者の活躍に取り組む企業の事例」では、役職定年制や定年制の見直しを行った14社の事例が示されている。そのうち9社は役職定年制廃止に言及しており、その他の会社でももともと役職定年制を導入していなかったり、役職を年齢で縛らない対応をしていたりする例が多い。

 65歳までの雇用確保を企業の義務とし、70歳までの就業機会確保を努力義務として長く働き続ける世の中にシフトしていく中で、50代で役職を外すことが現実的ではないと見ているのだろう。

 以前は若手にポストを譲る目的だったが、少子高齢化で若手の採用自体に苦戦する企業も多い。年功序列から成果主義へ、メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用へとシフトする企業が増える中で、年齢でポストを譲り渡すのではなく、全年齢から能力や成果で抜てきする制度の方が適しているだろう。

 実際、前述の厚労省「高齢者の活躍に取り組む企業の事例」でも、役職定年制廃止だけではなく、人事評価制度の改革も実施している例が多く見られる。 【次ページ】役職定年で“アレ”を奪われた…
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