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コロナ禍で広まったリモートワークだが、現在国内外の多くの企業で出社回帰が広がっている。東京都が調査した従業員30人以上の都内企業のテレワーク実施率は、緊急事態宣言期間は60%以上の月も多かったが、2023年4月以降は40%台が続いている。多くの国内企業が出社回帰しており、最近はメルカリが「フルリモート廃止」するとのうわさもあったほどだ。ただ、一方で政府はリモートワークを推進しようとしている。今後の働き方はどうなっていくのだろうか。
Xをザワつかせた「メルカリ、フルリモート廃止」のうわさ
7月下旬、「メルカリがフルリモート勤務を廃止する」といううわさが、SNS上で広まった。結論、そうした事実はなかったようだが、IT企業などのリモートワーク、テレワークが広く定着した企業でも、出社回帰することは少なくない。
出社回帰は日本企業に限らず、世界的な流れだ。以前イーロン・マスク氏やテスラは、Xなどで従業員に出社を求めたが、今やグーグル、アマゾンなどの代表的なIT企業ですら出社へと方針を転換している。リモート会議システムであるzoomを提供するズームですらフルリモートをやめた。
当然、日本企業でも出社に回帰する企業は増えており、日本のビジネスパーソンは、いつ自社がリモートワークの方針を撤回するか、戦々恐々としている。
総務省統計局の「令和3年社会生活基本調査の結果」によると、日本人の平均通勤時間は1時間19分と長い。リモートワークであればこの時間をほかのことに充てられる。また、同調査では「テレワークにより通勤時間が減少した分を趣味・娯楽や育児など年齢階級ごとに異なる行動への時間に充てられていることがうかがえる」、「テレワーク(在宅勤務)をしていた人はしていない人に比べ睡眠、趣味・娯楽などの時間が長く、通勤・通学、身の回りの用事などの時間が短い」という、リモートワーク、テレワークの“効能”が示されている。
現在、リモートワークを前提に生活設計をしている人は、もし勤める企業がリモートワークを廃止すれば、睡眠、趣味・娯楽、育児などの時間を削って通勤に充てなければならないわけであるから、反発があるのもうなずける。
出社回帰の一方で、テレワーク推進を打ち出し続ける政府
国内企業が出社回帰する中、国の政策ではしばしばリモートワーク、テレワークが登場している。
たとえば、厚生労働省は7月9日に、障害者のテレワーク雇用を推進する企業向けの相談窓口を開設したことを発表した。これは昨年も開設していたものであるが、障害者の雇用をテレワークによって行うことを検討する企業が、テレワークの導入から相談できるものだ。
厚労省の相談窓口は障害者の雇用に関するものだが、政策の中でリモートワーク、テレワークは、働くことに関して何らかのハンディキャップやハードル、課題などがある場合の解決策の1つとして登場することが多いようだ。
今年6月に改正された、両立支援法と呼ばれる、育児・介護休業法、次世代育成支援対策推進法もその1つだ。この法改正により、3歳~小学校就学前の子を養育する社員に対して企業は、短時間勤務や始業時間の変更、新たな休暇の付与などから2つ以上の制度を選んで対応することが求められるが、その選択肢の中にテレワークも含まれる。
また、3歳までの子を養育する社員にはこれまでも短時間勤務を可能とすることが企業に求められていたが、来年から短時間勤務の代わりにテレワークを選ぶことも可能になる。さらに、3歳までの子を養育する社員がそもそもテレワークを選べるようにすることが企業の努力義務となる。
いろいろと複雑だが、要は育児と仕事の両立施策の1つとして、政府はリモートワーク、テレワークの推進を目指していると受け取れる。
このほかにも、今年春からは経済産業省が健康経営の啓発サイトで、花粉の飛散が多い日のテレワークを呼びかけるなどしているし、国家公務員については希望があればテレワークを原則可能とする指針を本年度中に策定する方針だという。
出社回帰しようとする企業と、リモートワークを推進しようとする国の姿勢からは、ブレーキとアクセルを同時に踏んでいるような矛盾、行き違いを感じざるを得ない。
【次ページ】今後の働き方はどうなるのか
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