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  • 2023/09/07 掲載

「年収の壁」助成制度を10月に前倒し始動へ、パートの「働き損」はなくなる?

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10月の改定によって、最低賃金の全国平均がいよいよ1,000円台となる。これに伴い、扶養から外れる「106万円の壁」を越えないために、働き控えが加速することが予測される。そこで、10月より「106万円の壁」解消のための新たな助成制度が開始することとなった。具体的にどのような制度で、今後どういった展開が予想されるのだろうか。
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「106万の壁」はどう変わるのか
(Photo/Shutterstock.com)

「106万円の壁」解消のための新助成制度が始動

 8月10日、岸田総理の会見で「106万円の壁」の対策のための助成金を10月に前倒して適用するという発言があった。

 106万円の壁とは、要件に当てはまるパートが年収106万円以上となると、配偶者の扶養から外れ、社会保険に加入し、自ら保険料を負担することになるというもの。

 「年収の壁」が働き控えの動機になっているという指摘は以前からあった。実際、現場では、パートタイマーが労働時間を調整し、人材不足が加速していた。

 新たな助成制度は、もともと年内決定を目指していたが、最低賃金が改定される10月に間に合わせることにしたという。

 今年の改定により最低賃金は、全国平均で43円上昇する。しかし、最低賃金上昇に伴い、「年収の壁」を超えてしまうと、税金や社会保険料の負担により、かえって手取りが少なくなる場合がある。そこで、新たに社会保険に加入する従業員の社会保険料を肩代わりした会社を助成する制度が検討されている。

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すべての都道府県で過去最大の賃金上昇
(Photo/Shutterstock.com)

 新助成制度は当面の措置として、賃上げで「壁」を超え、新たに社会保険料の負担が発生する従業員の負担を会社が肩代わりした場合、一人あたり最大50万円を会社に助成する制度を検討している。

 また、8月10日の会見で岸田総理は、「継続的に収入増加の取り組みを行う場合には助成も継続することが必要だ」とも述べており、何らかの継続的な助成制度へとしていく可能性もある。

知っておきたい「キャリアアップ助成金」

 さて、9月の段階ではこの助成制度の詳細は分からないが、参考になる過去の事例がある。それは、2019年に「キャリアアップ助成金」に追加された「短時間労働者労働時間延長コース」だ。これも、パートの社会保険加入対象が拡大することに合わせた「年収の壁」対策である。


 キャリアアップ助成金は、パートなど非正規雇用労働者のキャリアアップ促進のための助成金だが、その中で、パートの労働時間を延長して新たに社会保険適用になった場合に、企業が受け取れる助成金として始まったのが「短時間労働者労働時間延長コース」だ。

 開始のきっかけは、2016年に大企業のパートが社会保険に加入する労働時間をそれまでよりも短くしたことだ。「年収の壁」を気にして、働き控えをし労働時間を減らすパートが出ないように、そして企業の賃上げを促す目的がある。

 これを踏まえると、今回の対策も将来的にはキャリアアップ助成金の何らかのコースとなり、継続することが考えられる。「短時間労働者労働時間延長コース」をはじめとした既存のコースとは内容が異なることから、既存のコースの要件が変更されるのではなく、新たなコースが追加されるだろう。

 実は昨年2022年9月末で、賃上げをセットに労使の話し合いで、非正規雇用者が社会保険に加入した場合に助成される「選択的適用拡大導入時処遇改善コース」が廃止された。今回の新たな制度とは似て非なるものだが、1年越しでこの「選択的適用拡大導入時処遇改善コース」と入れ替えのように、新しい助成金のコースができるかもしれない。 【次ページ】総務省の家計調査にみる、パート収入のいま
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